【掲載日】2023/02/03 【最終更新日】2024/06/28
関節痛の治療法と予防策について
関節痛とは
関節は膝や肘、手指や足指の関節、腰、手首などを動かすための組織で、骨と骨が連結している部分を指します。関節痛とは文字通り関節部分に痛みを伴う症状で、原因としては感染、けが、アレルギー、代謝異常などが考えられます。
加齢や肥満によって関節の動きを滑らかにする軟骨がすり減ったり、関節の歪みや靭帯を痛めてしまったりすることで引き起こされる慢性的な関節痛は、変形性関節症と呼びます。
また、インフルエンザや感染症による関節炎で引き起こされるものは「急性」の関節痛で、一時的に痛むものの時間の経過とともに自然と治る場合が大半です。
どんな原因で関節痛が起きているのかを知るには、以下のように区別すると判断が容易になります。
・1カ所だけ痛くて急性
痛風、けが(外傷)、感染
・複数カ所が痛くて急性
細菌やウイルスの感染が多く、関節リウマチなどの膠原病の初期も
・1カ所だけ痛くて慢性
変形性関節症が多い
・複数カ所が痛くて慢性
内分泌疾患や、関節リウマチなどの膠原病の可能性
どんな人がどんな時になりやすい?
「年を取ると身体の節々が痛む」と耳にするように、関節痛の悩みは主に高齢者からよく聞かれます。老化や加齢に伴い関節の動きが徐々に悪くなって痛むため誰にでも起こり得る症状ですが、体重の重い人、関節に負担がかかるような過度の運動を行う人、猫背やO脚の方も関節を痛めるリスクが高いと言えます。
特に膝、腰、股の変形性関節症による痛みの割合が非常に多く、日常生活への支障や、ひどい場合には要介護状態になってしまう原因としての危険性を孕む症状でもあります。
また、関節痛の原因は男女の観点からも違いが見られます。
中年男性では痛風による炎症により、手足の関節に熱感と激しい痛みが現れます。このときの痛みは、日常生活に支障をきたすほどの激しい痛みとなります。肥満気味な人や、魚卵、お酒が好きな人は尿酸が溜まりやすい体質である可能性が高いので注意しましょう。
中年女性では関節リウマチに伴う痛みが多く、起床後30分以上、手の関節が動かしにくくなっていたり、衣服のボタン外しやハサミ、箸などを動かす動作がしにくかったりと感じたときはリウマチの兆候である可能性が高いため、なるべく早く近くの医療機関で受診しましょう。
変形性膝関節症とは
中高年が抱える膝の痛みの大半を占めるのは、膝関節の軟骨がすり減って起こる「変形性膝関節症」です。関節が動く衝撃を和らげるクッションの役割を果たしている軟骨が、加齢や老化によりすり減ったり、半月板の機能が衰えたりすることで、関節に炎症が生じて痛むようになります。とくに人体の中でも膝関節は、立っているだけでも全体重のほとんどを支えており、座る、立ち上がる、歩くなどの動作だけでも関節に大きく負担がかかります。
変形性膝関節症の症状
変形性膝関節症は時間をかけて進行し、徐々に症状が重くなっていきます。一度すり減った軟骨は元には戻らないので、できるだけ早く治療を始め、病気の進行を食い止めることが大切です。
進行ごとの症状は以下の通りとなります。
・軽度
「立ち上がるときに痛む」「膝がこわばる」「動き始めに痛む」
・中等度
「正座できない」「階段の昇降で膝が痛む」「膝に水がたまる」
・重度
「安静時も痛む」「膝の曲げ伸ばしが困難」「歩行時に膝が横揺れする」「歩行が困難」
変形性膝関節症の痛みの解消方法
変形性股関節症を改善させるためには、運動療法が必須です。運動療法は痛みの緩和や筋力の維持を目的として行います。自宅で行える簡単な運動方法をご紹介しますので、ぜひ試してみましょう。
①歩行しやすくする運動
太ももの前側にある大腿四頭筋を鍛えて、股関節を曲げやすくすることで、歩行しやすくする運動です。
- 床にあおむけになった状態で、ひざを直角に曲げます。
- 片側のひざを伸ばしながらゆっくり上げ、10秒止めてからゆっくり元に戻します。
- 反対側の脚も同じように行います。
- 左右各10回程度、1日3セット行います。
②脚の曲げ伸ばしがしやすくなる運動
お尻の後ろ側にある大殿筋と太ももの裏側にあるハムストリングスを鍛えて脚を伸ばしやすくする運動です。なお、腰が痛む場合はこの運動を避けてください。
- 床にあおむけになった状態で、膝を立て、肩幅程度に広げます。
- 腰をゆっくり上げ、10秒止めたら、ゆっくり元に戻します。
- 一連の動きを10回程度、1日3セット行います。
③脚の開閉をしやすくする運動
股関節の横にある中殿筋を鍛えて、股関節を安定させる運動です。運動用のゴムバンドを使いますが、ゴムバンドが無い場合は、ベルトで代用可能です。また、股関節に強い痛みがあるときは運動を避けてください。
- ひざにゴムバンドを軽めに巻き、ひざを立てた状態で床にあおむけになります。
- 左右のひざを、それぞれ外側にゆっくり開けるところまで開きます。
- 10秒止めたらゆっくり元に戻します。
- 一連の動きを10回程度、1日3セット行います。
関節リウマチとは
関節リウマチとは、免疫の異常が原因の関節炎によって、軟骨や骨が破壊されて関節の機能が損なわれ、関節が痛んだり腫れてしまったりする病気です。関節には「滑膜」と呼ばれる薄い膜上の組織に包まれており、この膜に炎症が起こると滑膜が以上に増え続け、骨が破壊されて関節の異常変形をもたらします。
変形性関節症との大きな違いは、関節リウマチが免疫疾患であることです。
免疫は、体内への細菌などの侵入を防ぐ大切な機能ですが、何らかの原因により過剰に働いてしまうと、自身の体を攻撃してしまうことがあります。免疫異常は、全身にさまざまな影響を及ぼしますが、その影響が関節に起こる症状を関節リウマチと呼んでいます。
関節リウマチの症状
関節リウマチの主な初期症状は、関節の炎症に伴うこわばり、腫れと痛み、発熱などが挙げられ、症状が悪化すると関節の脱臼や変形などが生じるようになります。
関節リウマチを進行させないために、次に挙げる症状に心当たりがないか自己診断してみましょう。
- 朝起きると、関節がこわばっている
- 起きてから30分~1時間でふだんどおりに動くようになる
- 左右両方の関節が動かしにくい
- 痛む関節が腫れている
- 痛む関節を触ると熱っぽい
- 痛む関節がやわらかくブヨブヨしている
関節リウマチの痛みの解消方法
関節リウマチは、悪化してしまうと日常生活に支障をきたすほどの状態となってしまうため、緩和させるには日常生活の中で注意や工夫することも大切になります。
・日常生活に取り入れるリハビリ
関節に不要な負担をかけることをなるべく避けるように意識してみましょう。
物を持つ際に片手ではなく両手で交互に持つ、スマートフォンやパソコンのキーボードを操作する際に両指を使うなど、負担を両手で分散させるような意識を持つことがポイントです。
また、特別な運動を取り入れなくても、家の中で掃除などの家事で歩いたりすることも全身運動になります。
関節は使わないと固まって動かしにくくなってしまうため、患部の関節が腫れて熱を持っている状態でなければ、多少痛みが残っていても1日1回は全身の関節を動かすようにしましょう。
・感染症と合併症の予防
関節リウマチの治療のために抗リウマチ薬や生物学的製剤などで治療をしている場合は、免疫の働きが抑えられているため、病気の進行が抑えられる一方、他の感染症にかかりやすくなっています。手洗いうがいといった基本的な感染症予防を疎かにしないようにしましょう。
・体調管理と生活習慣の改善
関節リウマチの症状は長期的に進行していく疾患のため、体調管理の基本となる食事、睡眠、運といった習慣が適切なものか一度見直してみましょう。また、喫煙や飲酒習慣、食事内容など、体を良好な状態に維持できるように生活習慣の改善に取り組みましょう。
関節痛の予防策
変形性関節症の予防のポイントは、「関節に負担をかけない」、「関節周りの筋力を落とさない」の2つです。
変形性関節症は関節の摩耗により引き起こされる症状ですので、なるべく関節に負担がかからないように以下の項目について気をつけてみましょう。
- 肥満気味の人は体重を減らす
- 肩、腰、ひじ、ひざを冷やさない
- 同じ姿勢を続けない
- 足のサイズに合った、クッション性のよい靴をはく
- ひざを伸ばし、かかとから地面についてつま先で後ろへ蹴るように歩く
- O脚の人は、靴のインソールなどで補正する
- 足元に不安がある場合は、杖を使う
関節周りの筋力を落とさないためには、以下のような簡単なトレーニングをしましょう。
- 首を前後左右にゆっくり曲げ、首筋を伸ばす
- 両手を前に伸ばして組み、腕全体を上方向や左右に交互に引っ張る
- 足を前後に開き、前にやや傾きながら膝裏やアキレス腱を伸ばす
手根管症候群
手首から手のひらの真中にかけて正中神経という神経が走っていますが、手の使い過ぎなどが影響してこの部分で神経が傷むことで、指にしびれが起こります。手の甲はしびれず症状の出る場所が限定的なので診断もある程度しやすい病気です。末梢神経障害の中で最も多くみられる病気で、手や指を動かすと一時的に楽になりますが症状が進むと親指の筋力が落ち、物を落としやすくなる傾向があります。
関節の痛みが出るその他の病気
痛風
過食や運動不足、ストレスなどの影響で体内の尿酸が増えた状態が続くと、血液に溶け切れなかった尿酸が結晶化し、関節や組織に蓄積して炎症を起こします。その結果、足や指などの関節が炎症により赤く腫れ、激しい痛みが生じます。
腱鞘炎(ばね指)
指の腱鞘炎の一つで、指の付け根付近に負担がかかる動作をし続けると、腱や腱鞘が炎症を起こし(腱鞘炎)、更に悪化すると指を伸ばそうとした際に指がばねのように反る形となってしまいます。
母指CM関節症
手の酷使や、加齢による関節部分の軟骨がすり減ったことにより、隣接する骨同士が衝突して引き起こされる炎症です。主に親指の付け根の関節に炎症が起きやすく、物をつまんだり握ったりするときに痛んだり、うまく指が動かなかったりします。
風疹
風疹ウイルスによる急性の発疹性感染症で、大人が風疹を発症すると発疹や発熱のほか、関節痛が現れることが多く、まれに重症化し、脳炎や血小板減少性紫斑病などの合併症が発症することもあります。
男性の更年期障害
男性ホルモンの低下やバランスの乱れにより、病気でなくても体が不調に感じたり、ほてりや発汗が続いたりすることがあります。特に40歳代以降に更年期障害が起こることが多く、疲労感や倦怠感のほか、関節痛、肩こり、抑うつなどの症状が生じます。
全身性エリテマトーデス
20~40歳代の女性に発症しやすい膠原病で、自身の細胞を攻撃する抗体が生じ、さまざまな臓器に炎症などが現れる病気です。特有の初期症状として、発熱、関節炎、蝶々の形をした皮疹(蝶形紅斑)が挙げられます。
まとめ
関節痛は、関節への負荷や加齢に伴う筋力低下が主な原因とされています。
過度な負荷を一部の関節に集中させないよう、なるべく負荷を分散し、適度に関節部分を動かすようなトレーニングを取り入れて関節痛を予防しましょう。
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