【掲載日】2016/07/27 【最終更新日】2023/02/22
糖尿病の治療方法とは?薬の種類や適切な食事方法を解説
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監修者
伊藤メディカルクリニック / 内科・皮膚科医
伊藤幹彦医師
糖尿病治療の目的とは?
糖尿病とは、慢性的に血糖値が高くなる病気です。糖尿病と診断されるとその後も血糖値が上がりやすくなり、体質そのものが変化してしまいます。
そのため、血糖を正常値までコントロールし、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間「健康寿命」を、糖尿病がない健常者と同様に保つことが糖尿病の治療目的です。
糖尿病の治療方法
糖尿病の血糖コントロールの基本は、食事療法と運動療法です。
1型糖尿病の方は、自分の体内でインスリンを作れなくなるため、インスリン注射による薬物療法が必須です。必要なインスリンを投与し続ければ、食事や運動などを厳しく制限することなく普段どおり生活することができますが、食後や運動後の血糖値の計測は都度行い、大きく増減していないか確認することが必要です。
2型糖尿病では、まずは食事と運動を行い、改善が見られない場合に必要に応じて薬剤を使い始めます。糖尿病治療薬の種類は豊富にあるため、患者の体格や血糖コントロールの程度など、一人ひとりの糖尿病の病態によって使用する薬剤を判断します。また、薬剤を使用しても効果が見られない場合などは、1型糖尿病と同様にインスリンを補う注射が必要となることもあります。
まずは自身の糖尿病がどのような状態なのかをかかりつけの主治医や医療スタッフに診断してもらい、適切な治療方法を確認してください。ご確認ください。
糖尿病は食事も大事です・・・!
糖尿病の治療においては主に「食事療法」「運動療法」をベースに「薬物療法」を症状にあわせて行っていきます。食生活の改善や運動を行いながら必要に応じてお薬を使い体内のインスリン分泌量・インスリン吸収効率を改善していくことが治療になります。
そのため、医師の適切な治療もさることながら自分自身の生活習慣の改善が重要になってきます。
食事療法
一人ひとりの食事・生活にあわせた量を過不足なくとれる事を目標として医師から指導があります。
◆糖尿病の食事のポイント
- 適正エネルギーを守る
- 栄養素のバランスのとれた食事を摂る
- 一日3食を規則正しい時間に食べる
- 1食あたりの脂質の適量を把握し、良質の油を摂取する
- 食物繊維は一日20gを目標に積極的に摂取する
- 間食は控える
- アルコールは控える
- 塩分を控える
- ゆっくり食べる
運動療法
運動を行う事で体内のインスリン吸収効率(インスリン感受性)が良くなり、体内のブドウ糖をスムーズに利用できるようになります。
薬物療法
薬物療法には、大きく分けて注射薬と飲み薬の2種類があります。
インスリンを外部から補う場合は注射薬を使用します。その種類としては、超速攻型、速攻型、中間型、混合型、持続型の5種類があり、病態により使い分けます。また、多くの1型糖尿病の治療薬として用いられます。
飲み薬としては、主に①すい臓からのインスリン分泌を促進させる薬、②インスリン抵抗性を改善する薬、③糖の吸収を穏やかにすることで食後の高血糖を改善する薬、④腎臓から尿へ糖を排出させる薬があります。
インスリンそのものが分泌されていなかったり、作用が衰えていたりする場合は①や②、インスリンの効き目を効果的にするために内蔵の作用を活性化させる場合は③や④を使用します。
糖尿病治療の目標とは?効果はどうすればわかる?
糖尿病の治療目的は、網膜症、腎症、神経障害といった合併症を予防し進行を抑え、動脈硬化による心筋梗塞、脳卒中などを防ぎ、健康な人と変わらない寿命を確保することにあります。そのために血糖コントロールを続け、高血圧や高脂血症など他の危険因子の管理が必要となることがあります。
血糖コントロールの指標として、HbA1cの数値を目標と設定することが好ましいです。
- HbA1c 6.0%未満・・・正常値としての目標
- HbA1c 6.0~7.0%未満・・・合併症予防としての目標
- HbA1c 7.0~8.0%未満・・・治療強化が困難な際の目標
※いずれも妊婦を除く成人に対しての目標値です
糖尿病の症状や、からだの状態は個人ごとに異なります。年齢、罹病期間、身体状況、サポート体制などを考慮し、医師と相談のもとに個別に目標を設定しましょう。
糖尿病の医療費はどれくらいかかるのか
糖尿病の治療は、糖尿病合併症の有無により、身体的な負担のみならず、経済的にも大きく異なります。
医療経済研究機構の「政府管掌健康保険における医療費等に関する調査研究報告書」によると、糖尿病患者一人当たりの平均的な医療費は年間24.7万円(※平成15年度:3割負担では7.4万円=月額約6,000円)と報告されています。
自己負担の具体例として、食事療法および運動療法のみの医療費は年間15万円程度(3割負担では4.5万円)、薬剤療法をする場合は、薬剤の併用数やインスリンの有無などにより変動し、年間30~50万円(3割負担では10~15万円)となります。
ここまでは糖尿病単体の治療にかかる費用になりますが、症状が進行してしまい合併症を発症してしまうと、さらに医療費は高くなります。例えば腎症が進行し、透析治療が必要になると年間およそ500万円前後の高額な治療費がかかるだけでなく、医療費以上に本人のみならず介抱する家族や身の回りの方のQOL(Quality Of Life:生活の質)を大きく損なうこととなります。
なお、医療費が高額な場合は、ひと月の上限額を超えた分が返金される高額療養費制度や、1年間に支払った医療費を確定申告時に提出することで、所得税や住民税から医療費を控除できる医療費控除制度といった助成制度が設けられています。
その他にも、薬の特許が切れたあとに、既存の薬と同等成分や効果があると認められたジェネリック医薬品(後発医薬品)を治療薬として選択することで、先発医薬品に比べて薬の値段が4割~5割程度安くなることがあります。
気をつけるべき糖尿病の合併症
糖尿病が進行すると、さまざまな合併症が生じます。
- 糖尿病網膜症
- 糖尿病腎症
- 糖尿病神経障害
- 脳梗塞
- 狭心症・心筋梗塞
- 閉塞性動脈硬化症
- 糖尿病性潰瘍・壊疽
- 歯周病
- 認知症
- 糖尿病性ケトアシドーシス
- 高浸透圧高血糖症候群
- 感染症
- ED など
これらの合併症の状態を確認するための検査も、糖尿病の治療と並行して受けることも大切です。
◆糖尿病の合併症を調べる検査例
神経障害:アキレス腱反射、振動覚、神経伝導検査、心拍変動検査(CVRR)
網膜症:眼底検査
腎症:血液検査(BUN、クレアチニン)、尿検査(尿中アルブミン、尿タンパク)
足病変:足の定期チェック(ひび割れ、白癬(水虫)、たこ、うおのめ、足の変形、など)フットケア
大血管症:頸動脈エコー、心電図、胸部X線、血圧脈波検査(ABI+PWV)
歯周病:歯科診察
糖尿病治療中の注意点
治療の継続
糖尿病は治る病気ではありません。したがって、自身の糖尿病と向き合いながら健康水準を保つために症状をコントロールすることが重要です。
自身の血糖値を常に把握し、病態にあった治療法を長期的に継続することが大切です。特に食事療法、運動療法については、生活習慣に取り入れた直後にもかかわらず、短期的かつ極端に効果を見出そうとするばかりに続かないことがあります、変化に少しずつ生活をなじませながら取り組みましょう。
セルフモニタリング
糖尿病は、合併症が発症していなければほぼ自覚症状は表れません。些細な体調の変化や一時的な具合の悪さなど、あまり気にも留めずに蔑ろにすることがあります。
ですが、糖尿病は水面下で進行していく病気であり、からだに異常が診られる頃にはかなり病態が悪化していることが多いため、糖尿病と診断されてからは定期的に自身の血糖値、体重や血圧などを測定して、記録しておきましょう。これらの数値は少しの生活や環境の変化で大きく変動することがあるため、治療により安定した数値でコントロールができているかを判断する最善の目安となります。
治療パートナーからのサポート
糖尿病の治療は、生活習慣に様々な制限を設けられるでしょう。そして長く続けるためには治療をするという意気込みを保つことが重要です。
食事をはじめとする自身の生活にかかわるご家族、友人、職場の方で、糖尿病という病気を理解し、治療する姿を支援するパートナーの支えがあると、1人ではなかなか続けられない治療や課題も楽に感じられるようになります。
また、治療方針を判断する主治医や看護師などの医療機関のスタッフも、生活に支障をきたさないように治療をサポートします。1人で糖尿病と向き合うのではなく、身の回りの方を含めて一丸となって治療に取り組むことが成功の秘訣です。
まとめ
糖尿病の原因や状態は人によって様々であり、現時点では完全に治すことができないと言われています。仮にお薬を飲まなくても血糖値をコントロールできる状態になれたからと言っても、それは完治したわけではなく、その後も末永く付き合っていく疾患です。
正しい治療法でからだを管理することができれば、糖尿病自体は決して怖い病気ではありません。しかし、糖尿病を軽んじて治療を断念したり放置してしまったりすると、またコントロールできる状態まで取り戻すことは困難です。
ライフスタイルを見直すことで、糖尿病はじめとする様々な生活習慣病を緩和、予防できますので、前向きに捉えて治療に取り組んでいきましょう。
監修者
専門
日本外科学会認定外科専門医/日本循環器学会認定循環器専門医
所属医療機関
伊藤メディカルクリニック
認定資格
日本医師会認定産業医
経歴
東京医科大学卒業
東京医科大学 第2外科(心臓血管外科)入局
東京医科大学霞ヶ浦病院 循環器外科助手(現 東京医科大学茨城医療センター)
東京医科大学八王子医療センター 心臓血管外科などを経歴
東京医科大学第2外科助手
新潟こばり病院(現 新潟医療センター 心臓血管外科)
東京警察病院外科 医長を経歴(血管外科責任者)
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