【掲載日】2018/06/27   【最終更新日】2023/06/21

糖尿病の予防は食生活と運動での体質改善から~すぐに始められる予防法ご紹介~

木村 眞樹子医師

監修者

循環器内科・内科・睡眠科医

木村眞樹子医師

~すぐに始められる予防法ご紹介~

糖尿病の予防は食生活と運動での体質改善から

厚生労働省が発表した平成28年「国民健康・栄養調査」の結果によると、糖尿病の疑いがある人は、1000万人以上。可能性が疑われる糖尿病予備軍も同様に、約1000万人いるとされています。すでに糖尿病と診断された人も、予備軍としてのリスクに不安を感じている人も、生活習慣を見直し、悪化予防の意識を持つことが大切です。血糖値安定を目指すために、今すぐ始めたい食事の改善や運動への取り組みなどについて、詳しくお伝えしましょう。

糖尿病が発症する仕組み

糖尿病が発症する仕組み

糖尿病とは、血液中に含まれるブドウ糖の量(血糖)が多い状態が続き、さまざまな症状を引き起こしてしまう疾病です。本来、ブドウ糖は生命を維持するために必要なエネルギー源であり、体内では一定の濃度を保つような仕組みが整っています。しかし、さまざまな原因によって血糖のコントロールができなくなることで、糖尿病を発症します。

インスリンと糖尿病の関係

糖尿病といえば、「インスリン」という単語を思い出す人も多いのではないでしょうか? インスリンはホルモンの一種であり、体内で分泌されるもののなかで、唯一血糖値を下げる役割を持っています。健康な人であれば、ブドウ糖の多い食事をしたとしても、インスリンの働きによって、正常な値を維持することができます。しかし、このインスリンの働きが悪くなったり、インスリンの分泌が少なかったりすることで、血糖値を下げることができず、糖尿病を引き起こします。糖尿病を予防するためには、インスリンの働きを良くすることが大きなカギとなります。

原因によって異なる糖尿病のタイプ

糖尿病を発症する原因は、大きく分けて4つ。

インスリンを分泌する膵臓の機能が壊れてしまい、血糖コントロールができなくなる「1型糖尿病」、生活習慣によってインスリンの働きが悪くなる「2型糖尿病」、妊娠時に発症する「妊娠糖尿病」、他の病気や投薬による影響など、特定の原因でおこるものの4つです。
なかでも、特に予防の効果があるのが「2型」のタイプ。全糖尿病患者さんのなかでも2型のタイプは多いものの、生活習慣を見直すことで、インスリンの働きを良くし、血糖コントロールの改善が期待できます。

日本人は糖尿病にかかりやすい

糖尿病は中高年の肥満男性の病気という印象がありますが、20~30代の若年層や、やせ型の女性にも増えています。
日本人は世界的に見ても、遺伝的に糖尿病にかかりやすい体質を持っていると言われています。その体質に加え、欧米化した食生活や運動不足などの生活習慣の乱れが原因で、糖尿病にかかる人や予備軍が加速度的に増えています。

食事療法を取り入れて血糖値が高くなるのを防ごう

食事療法を取り入れて血糖値が高くなるのを防ごう

糖尿病を予防するために、まず意識したいのが食事の見直しです。血糖値が上がってしまうのは、血中の糖分が多いから。つまり、体内に入る糖分の量を調整できれば、おのずと血糖値の安定につながります。
まずは、普段の飲料は糖分の含まれないものにすることです。一気に血糖値をあげてしまうだけでなくエネルギーの過剰摂取になりやすく肥満につながります。
その他、食事の際にはゆっくり、よくかんで食べること、夜遅くや寝る前には食べないなど食事の摂り方に注意すると効果的です。
近年、血糖値が高くなりにくい食事法として「糖質制限」が知られるようになってきました。

糖質制限とは

糖質制限とは、その名のとおり、食事中の糖質量を制限するというもの。近年、糖尿病の改善や予防を目的として、医療機関でも指導されるようになった食事療法です。

三大栄養素のひとつである炭水化物に含まれる糖質は、体内でブドウ糖に変換され、血糖値を上げてしまいます。普段の食生活のなかから、糖質量の多い食材をできるだけ減らすことで、インスリン分泌の頻度を下げ、膵臓を休ませながら回復を促すという目的もあります。

糖質量の少ない食材を選ぼう

糖質制限においては、糖質量の少ない食材を選ぶのが大切なポイント。特に糖質量が多いのは、主食となるお米やパン、麺類です。同様に、糖質の塊である砂糖もできるだけ避ける必要があります。一方で、糖質量が少ないのが、お肉や魚、卵、豆腐といった食材。タンパク質を多く含み、ほとんど糖質はありません。こうした食材についても食べ過ぎは禁物ですが、主食中心の食生活から、肉や魚といったメイン料理の分量を増やしてみましょう。

食べるときの注意・ポイント

糖質制限を行う際に注意したいのが、野菜や果物の取り方です。果物はもちろんのこと、イモ類などの野菜には糖質が多く含まれるため、できれば避けたい食材。食物繊維を摂取するうえでも、糖質量の少ない葉野菜を中心にしっかり摂取しましょう。また、極端な糖質制限は避け、適度な糖質の摂取を心がけることも大切です。また、食事を行う際には、汁物、葉野菜、肉類、炭水化物(糖質)の順番で食べるのもおすすめです。血糖値が上がりにくい食べ方を意識してみましょう。

健康食品を活用する

糖質を減らした食事を続けることで、血糖値は上がりにくくなりますが、人によっては、甘いものがやめられなかったり、主食類を減らすのに抵抗があったりして、きちんと継続できないケースがあります。そんなときに活用したいのが、健康食品です。近年では、糖質量を減らしたスイーツやパンなどが健康食品として販売されており、糖質制限向けのスイーツショップも増えているため、上手に活用しましょう。
また、糖質制限で野菜の摂取量が減ると、血糖値を上げにくくする作用を持つ食物繊維が不足しがちです。普段から葉野菜をしっかり食べるのが基本ですが、食物繊維を摂取できる健康食品を利用するのもよいでしょう。

糖尿病の食事療法について

運動を習慣にして、血糖値が高くなりにくい体質を作る

運動を習慣にして、血糖値が高くなりにくい体質を作る

糖尿病を予防するためには、運動も欠かせません。糖尿病において、一番のリスクは合併症を招いてしまうこと。神経障害や壊疽、場合によっては失明の可能性もあります。そうしたリスクを軽減させるには、食事の見直しに加えて、運動を行うことが有効です。

運動を行う目的と、目安となる運動量

食事からとった糖分はエネルギー源として使用されるため、運動によってエネルギー消費量が上がれば、その分、糖分の代謝が早くなり、血糖値の安定につながります。加えて、運動によって筋肉が増えると、ブドウ糖は優先的に筋肉の方に流れ込むため、血中の糖分濃度が下がりやすくなるのも見逃せません。とはいえ、極端にハードな運動を行うのではなく、ややきつい、と感じる程度の内容を毎日続けるのがポイントです。
運動量の目安として、少なくとも週3回、1回につき20~60分間継続することが良いとされています。有酸素運動を主体として、ウォーキングやジョギング、水泳などを取り入れ、さらに筋力アップにつながる簡単な筋トレを加えると理想的です。

運動をするときのポイント、習慣化するための工夫

糖尿病の予防や改善のために運動を行うのであれば、できるだけ定期的に行う必要があります。しかし、これまで運動の習慣がなかった人にとっては、毎日続けること自体に苦痛を感じるかもしれません。そんなときにおすすめなのが、「ながら体操」です。必ず毎日行っている歯みがきや入浴といった生活習慣のなかで、運動をプラスするようにしてみましょう。たとえば、歯みがきをしながら、かかとの上げ下げを行うようにしたり、入浴中に腕の上下運動を行ったりして、生活のなかに取り込みます。ゼロから新たな習慣を作ろうとすると、定着するまでに強い意識が必要です。逆に、すでに行っている生活のなかに取り入れることができれば、無理なく取り組むことができるでしょう。運動の目安である20分以上を継続するのは難しいかもしれませんが、運動を習慣化するひとつの方法として取り入れてみてはいかがでしょうか。

運動療法時の注意点

糖尿病のリスクを抱えている人にとっては、強度の高い運動は控える方がよいでしょう。負担を感じるような激しい運動は、血圧を上げてしまい、かえって合併症のリクスを高めてしまうからです。軽いウォーキングやヨガなどの有酸素運動を、無理のない範囲で行いましょう。

健康習慣を意識して、ストレスのない生活を

健康習慣を意識して、ストレスのない生活を

2型糖尿病は生活習慣病のひとつともされており、普段の生活習慣を見直すことが欠かせません。食事や運動といった肉体面でのケアとともに、気を付けたいのがストレスによる影響です。

ストレスによっても血糖値が上がる

糖尿病は、インスリンが分泌しなかったり、働きが悪かったりするのが主な原因です。血糖値を下げる役割を持つホルモンは、インスリン以外になく、ひとつの働きに頼っています。
一方で、私たちの身体には、血糖値を上げるホルモンは複数あります。例えば、ストレス時に分泌されるアドレナリンもそのひとつ。精神的、肉体的なストレスが長期間続いてしまうと、その分、血糖値が上がるような刺激が加わります。リラックスする時間を増やすことも、糖尿病予防にはとても大切です。

タバコやアルコールもストレス反応を引き起こす

糖尿病のリスクがあるのであれば、タバコやアルコールを控えるといった指導が行われます。それぞれの健康被害については良く知られるところですが、加えて、タバコやアルコールによる刺激で、血管の収縮や拡張が起こると同時に、アドレナリンの分泌を引き起こし、血糖値を上げてしまうというリスクがあるからです。
ストレス解消のつもりでタバコやアルコールを続けているのであれば、よりリラックス効果を感じさせるような別の方法を検討した方がよいでしょう。

睡眠の質を高めてリラックス効果を高めよう

血糖値の乱高下があると、睡眠の質も悪くなりがちです。まずは予防の意味でも、睡眠の時間を増やすように取り組んでみましょう。朝日を浴びて一日のリズムを作り、夜にはお風呂に浸かって身体を温めるのもおすすめです。また、寝る2時間前からは、できるだけテレビやスマートフォンなどを見ないようにして、刺激を減らしてあげること。リラックスできる音楽を聞いたり、アロマを使ったりして入眠しやすい状態を作りましょう。

糖尿病は認知症との関係もあるの?

糖尿病患者は、高血糖の状態が長く続くことで認知機能が低下しやすくなり、主にアルツハイマー型認知症になりやすいと言われています。また、糖尿病から脳血管障害を起こして、血管性認知症になったり、既に認知症の状態がある場合は食事をしたことを忘れて再度食事をしたり、運動することもままならず、糖尿病が悪化することにも繋がります。
日頃からの食事療法と運動療法を続けることにより、糖尿病と認知症の双方の予防にもなります。

隠れ糖尿病について

隠れ糖尿病について

特徴、気づくためのチェックポイント

糖尿病の診断は、一般的に空腹時の血糖値やHbA1cの値などで判断されます。定期的に健康診断を受けていれば、気付かれるはずなのですが、悪化するまで見つからない「隠れ糖尿病」の人がいます。
これは、食直後、もしくは食後約2~3時間が経ってから血糖値が上昇する場合、空腹時の検査では見つかりづらく、タイミングよく検査しなければ、血糖値に異常があることがわかりません。そのため「隠れ糖尿病」と呼ばれています。
一日に何度も高血糖の状態に陥っているにもかかわらず、糖尿病であることが自覚しづらいため、放置していると空腹時の血糖値が上昇するまで悪化し、気が付いたときには重度の糖尿病が発覚してしまうのです。

<気づくためのチェックポイント>
通常の健康診断でも発見しづらい「隠れ糖尿病」ですが、実は、日常生活のなかではすでに多くのサインを発しています。
以下のチェックポイントを確認し、該当するようであれば、一度診察を受けてみましょう。

✔ 食後に強い眠気がおそってくる
✔ 食後にだるくなってしまう
✔ 空腹時にイライラする
✔ トイレが近い
✔ 喉が渇きやすい
✔ 運動不足気味
✔ 足がつりやすい
✔ 目がかすむ

糖尿病にかかりやすさチェック

通常の健康診断でも発見しづらい「隠れ糖尿病」ですが、実は、日常生活のなかではすでに多くのサインを発しています。以下のチェックポイントを確認し、該当するようであれば、一度診察を受けてみましょう。

□ 家族や血縁者に糖尿病の人がいる
□ 肥満気味だ
□ 不規則な生活をしている
□ 運動不足になっている
□ 高血圧だといわれたことがある
□ 食生活が偏りがちだ
□ 最近ウエストが太くなった
□ ストレスが多い
□ お酒をよく飲む
□ 早食いだ
□ 野菜嫌いだ
□ 喫煙習慣がある
□ 清涼飲料水をよく飲む

情報に振り回されず、糖尿病の改善を目指そう

情報に振り回されず、糖尿病の改善を目指そう

すでに国民の1割以上が、糖尿病と診断され、予備軍も年々増加しています。そんななかで、テレビや雑誌などでは、糖尿病予防や改善に向けた、さまざまな情報があふれています。多くの情報が飛び交うなかで、改善を期待して飛びついてしまう健康食品や健康療法、指導法などがあるかもしれません。

しかし、どんな方法を使ったとしても、基本となるのは毎日の生活です。糖尿病の仕組みを知り、身体に負担の少ない食事を考え、運動を習慣にしながら、日々ストレスのない生活を続けられるのが一番の予防法。毎日を楽しく過ごすための健康習慣を身につけましょう。

監修者

木村 眞樹子医師

循環器内科・内科・睡眠科医

木村眞樹子医師

東京女子医科大学医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。
妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる様々な人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。

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