【掲載日】2021/12/22   【最終更新日】2024/07/24

RSウイルスの対処法とは?症状から咳がひどい場合の対処法まで解説

RSウイルス感染症とは?

RSウイルスとは?特徴は何?

RSウイルスの正式名称は「Respiratory syncytial virus」と呼び、RSウイルス感染症とはRSウイルスの感染によって風邪などの症状を引き起こす呼吸器系感染症です。
RSウイルス感染症は、地理や気候を問わず世界中に存在し、かつ年齢を問わず発症します。
感染の流行時期は夏季から9月頃を期に11~1月をピークに迎え、初春まで長期的に続く傾向にあります。感染力は非常に強く、幼稚園や保育園などの施設内感染に注意が必要です。

RSウイルスはどのように感染するの?

RSウイルスの主な感染経路は、感染している人の咳やくしゃみ、または会話をした際に飛び散る唾液などのRSウイルスが含まれたしぶきを吸い込む「飛沫感染」によると考えられています。また、感染者が触れたドアノブなどの表面についたウイルスに接触し、鼻や口などの粘膜や傷口などを通して感染する「接触感染」も挙げられます。
なお、RSウイルスが麻しんや水痘、結核のように空気感染するといった報告事例はありません。

RSウイルスの症状は?咳はある?大人が感染した場合の症状は?

子供が感染した場合の症状

小児風邪の80~90%がRSウイルスによるものと言われ、生後1歳までに半数以上、2歳までにほぼ100%の乳幼児が感染します。2歳以上の子供は鼻風邪のような軽い風邪症状で済むことが多いですが、1歳未満や低出生体重児、心肺系の基礎疾患や、免疫不全のある重症化リスクの高い乳幼児の場合は、肺炎や細気管支炎といった重症化のリスクが高くなると言われています。なお、年長児や成人における感染や再感染も普遍的に見られますが、重症となる例は比較的少ない傾向にあります。
RSウイルスは感染後4〜5日の潜伏期を経て、咳、鼻水、発熱などが症状として現れます。また、潜伏期間から発症後10〜14日間ほどでウイルスが体外に排出されますが、1ヶ月程度体内に留まる事例もあります。

大人は軽度の風邪程度で終わることが多い

成人以降もRSウイルスによる感染症は発症しますが、乳幼児の頃から繰り返し感染することで体内に免疫ができているため、発症しても鼻水や咳、微熱といった軽度の風邪症状で完治することが大半です。また、感染しても症状が発症しないままウイルスを体内で撃退する場合もあります。

小さなお子さんは重症化に注意

生後数週間~数ヶ月の乳児期早期にRSウイルスに初感染した場合や、出生体重が極端に軽い乳児、心臓や肺の基礎疾患といった免疫不全がある場合に、重篤な症状を引き起こすことがあります。

特に注意すべき症状は以下のとおりです。

  • 息を吐くときに「ヒュー、ヒュー」「ゼー、ゼー」といった呼吸音がする
  • 顔色や唇の色が悪い
  • 胸がペコペコとへこむような呼吸をする
  • 呼吸が速く、呼吸の回数が極端に増えている

このような症状が見られる場合は肺炎、気管支炎、細気管支炎などを発症している可能性があり、場合によっては酸素投与、点滴などの処置や、入院及びその後の経過観察が必要な場合もあります。また、生後3ヶ月未満の赤ちゃんでは、上記のような症状が出ない場合もあり、哺乳不良、活気不良、無呼吸発作、チアノーゼ(皮膚の色が紫色になる状態)などの症状を認めることもあります。なかでも無呼吸発作は命にかかわる重篤な症状ですので、細心の注意が必要な症状です。

大人で重症化しやすいケースは?

免疫力が極端に弱まっている場合や、特定の場合は大人であっても重症化することがあります。

  • 高齢者や喘息の持病がある方
  • 妊産婦
  • 神経や筋疾患、免疫不全の基礎疾患などの持病がある方

RSウイルスは小児が感染しやすい病気ですので、上記の要素に該当し、かつ小さいお子様と一緒に暮らしている家族構成の場合は、十分に注意が必要です。
特に高齢者の感染は、主に病院や介護施設などの高齢者が集まる空間での集団感染によるものが多く、免疫力や体力的にも衰えているため、稀に感染から死亡に至るケースもあります。

高齢者がRSウイルスに感染すると重症化する?症状や治療法、予防法について解説

RSウイルスに感染した時の対処法

RSウイルスの感染が疑われれば病院で検査してもらおう

小さなお子さんに風邪のような症状が見られ、特に、生後6ヶ月未満のお子さんに下記いずれかの症状が見られたときは、昼夜問わず小児科医のいる病院へ受診しましょう。

  • 38度以上の熱
  • 呼吸が浅く 速くなる
  • ゼイゼイと咳がひどく眠れない
  • 痰が詰まる
  • 顔色が悪い
  • 急にぐったりする

また、RSウイルス感染症にかかっている可能性のある人や、診断された方が家族や身近のいる場合に、自身に発熱、鼻水、咳、痰といった風邪に似た症状が見られる場合はRSウイルスに感染している可能性が高いので、他の人への感染を防ぐためにも直ちに診察を受けてください。
RSウイルスに感染しているかの診断は、鼻の穴に細い綿棒を入れて鼻粘膜をぬぐい、15分程度で判定が出ますが、RSウイルス感染症が疑われる全ての患者さんに行う検査ではありません。

RSウイルス自体に効果のある抗ウイルス薬は現時点ではありません。そのため、感染時に発症している症状をやわらげる対症療法を行うのが一般的な治療法となります。
具体的には、痰が出やすい場合は去痰薬、熱がある場合は解熱薬、その他に自身の免疫力を向上させるために体力の回復を幇助する薬を使用したり、吸入などの処置で呼吸状態を改善させたりする方法が挙げられます。重症化した場合にはこれらに加え、酸素投与、補液(点滴)、呼吸管理が行われます。
また、昨今では重症化リスクの高い小児に対し、抗RSウイルスモノクローナル抗体(シナジス)と呼ばれる重症化の抑制薬を予防投与することが認可されていますが、投与対象には条件があり、早産で生まれたお子さま、または慢性肺疾患や先天性心疾患、ダウン症等の基礎疾患がある乳幼児が対象となります。

軽度の風邪症状のみの場合も病院へ行くべき?

軽度の風邪症状がみられ、かつ周囲にRSウイルスに感染している可能性のある人がいない場合、まずは解熱鎮痛剤や咳をしずめたり痰を出しやすくしたりする鎮咳去痰薬などの市販薬を使い、症状を和らげましょう。ただし、生後1〜2ヶ月の赤ちゃんでRSウイルス感染症が疑われる場合は、経過中に無呼吸発作などの重症な症状が突然発症する危険があるため、入院し経過観察が必要かどうかを判断するために上記のRSウイルス感染症の検査を積極的に行います。

咳がひどい場合の対処法は?

咳が続き止まらない時には、部屋の湿度を高めに設定するように心がけましょう。喉の乾燥を和らげ、咳による刺激を軽減させることができます。湿度は50~60%程度になるよう、時期によっては加湿器や洗濯物などで加湿すると良いです。水分補給は、発熱に対してだけでなく、喉を潤すことにも繋がるのでこまめにケアするようにしましょう。炭酸飲料は喉への刺激が強いので避けた方が無難です。
ただし、水分補給ができないほど咳き込んでいる場合や、喘息の発作が出ているような時は病院を受診するようにしましょう。入院して輸液の投与や酸素吸入などが必要となる場合があります。
また、咳が続いて眠れない場合は、布団の中にタオルなどを入れて傾斜をつけ、上半身を高くして横向きに寝かせると良いです。少し楽になるので眠りやすくなるかもしれません。

RSウイルスに効果のある薬はある?

RSウイルスに対する抗ウイルス薬はありません。症状に合わせた対症療法が基本となります。安静にしてゆっくり休ませ、部屋の湿度や水分補給などに気を付けて、お子さま自身の免疫力で回復できるよう環境を整えてあげることが大切です。また、症状を緩和させる目的で状態に合わせて去痰薬・解熱剤の処方や喘鳴が強い際には吸入処置などを行います。
尚、予てより重症化リスクの高いお子さま(在胎36週未満であった早産のお子さま、慢性肺疾患や先天性心疾患を持っているお子さま等)には、重症化抑制薬(抗RSウイルスモノクローナル抗体製剤「シナジス」)の使用も承認されています。最近では、これらの要件に加えて、RSウイルス感染症の重症化リスクの高い、肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患を有する乳幼児についても新たに投与対象となることが承認されました。

RSウイルスを早く治す方法はある?

RSウイルスに対する抗ウイルス薬などの特効薬はありません。水分補給と栄養をしっかりと取り、安静にして休養を取るようにしましょう。部屋の湿度にも気を付けて必要であれば加湿するようにします。RSウイルスは咳のほかに鼻水や痰などが多くなるのも特徴なので、鼻水吸引の器具でこまめに吸引してあげると呼吸がしやすくなります。

感染を拡大させないための対策とは?

感染拡大させないための方法や注意点

RSウイルスの主な感染経路は飛沫感染と接触感染ですので、マスク着用による飛散防止と、石鹸やうがい薬を活用した手洗いうがいによる殺菌が拡大防止策として効果的です。特に、RSウイルス感染症である自覚のない年長児や成人から乳幼児への感染がもっとも危険視されていますので、RSウイルス感染症の自覚がないうえで咳が続いていたり、RSウイルス流行時期に呼吸器症状があったりする場合は、マスクの着用を徹底しましょう。
また、普段から朝昼晩と栄養のある食事を摂り、十分な睡眠をすることで自身の免疫力を落とさないように心がけましょう。

ワクチン接種などの予防策は?

現在までに認可されたRSVワクチンはなく、各国の薬剤メーカーが新薬の開発のために日々臨床試験を実施していますが、対象となる患者数が足りておらず、開発は難航しています。
そのため、現状では特定の条件に該当する乳幼児のみに投与できる、遺伝子組換え技術を用いて作成された抗RSウイルスモノクローナル抗体製剤(製品名はシナジス)が使用されます。
RSウイルス感染症の流行初期に投与を開始し、流行期以降も1ヶ月ごとに筋肉注射することで、重篤な下気道炎症状の発症を抑止できる効果が期待できます。
投与対象となる条件は以下のとおりです。

  • 母体にいた期間が28週以下で、RSウイルス流行開始時に12ヶ月齢以下の乳幼児
  • 母体にいた期間が29~35週以下で、RSウイルス流行開始時に6ヶ月齢以下の乳幼児
  • 過去6ヶ月以内に気管支肺異形成症などの呼吸器疾患の治療を受け、RSウイルス流行開始時に24ヶ月齢以下の新生児、乳児および幼児
  • RSウイルス流行開始時に24ヶ月齢以下で、心臓や血流などの血行動態に異常が見られる先天性心疾患を持った乳幼児
  • RSウイルス流行開始時に24ヶ月齢以下で、免疫不全を伴う乳幼児
  • RSウイルス流行開始時に24ヶ月齢以下で、ダウン症候群の乳幼児

まとめ

ほとんどの人が一度は風邪をひいたことがあると思います。風邪はポピュラーな病気で、そのほとんどは軽い症状で収まりますが、風邪と思っていたものが実はRSウイルスによる感染症であったものかもしれません。
大人にとってはただの風邪程度の症状かもしれませんが、乳幼児などが感染すると重い呼吸器症状を引き起こす場合もありますので、特に乾燥する時期や冬場など、風邪が流行する時期には一段と感染対策を徹底し、乳幼児や小児に移さないよう注意しましょう。

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