【掲載日】2024/07/24

高齢者がRSウイルスに感染すると重症化する?症状や治療法、予防法について解説

RSウイルス感染症とは

RSウイルス感染症は、RSウイルスが呼吸器に感染することで引き起こされ、2歳になるまでに一度は感染すると言われており、成人以降も繰り返し感染することがあります。
秋から冬の季節をピークに1年を通して感染する可能性があり、成人が感染した場合は上気道の炎症による咳、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった風邪に似た症状が見られ、大半は自然に症状が治まりますが、初めて感染した乳幼児や吸器疾患を持つ高齢者に対しては気管支炎や肺炎といった重度の呼吸器障害を伴う危険性が潜んでいます。
RSウイルスは主に接触感染と飛沫感染で広がるため、特に幼稚園や学校をはじめとする子供が集まりやすい場所で感染者が発生することが多く、感染者と直接接触したり、感染者が触れたドアノブ、コップ、おもちゃ、椅子や机などを介したりすることで大人へと感染していきます。

RSウイルスの対処法とは?症状から咳がひどい場合の対処法まで解説

高齢者がRSウイルス感染症にかかる原因

高齢者の場合、基礎疾患や加齢による免疫力が低下している影響により、ウイルスや細菌に対する抵抗力が弱くなっているため様々な感染症に罹患しやすい状態となっています。
主に寒い季節に流行する季節性感染症の代名詞とも言われるインフルエンザでは、日本全国で1,000万人近い感染者が例年報告されており、そのうち60歳以上の高齢者の割合は全体の10%強にのぼるとされています。
一方で、RSウイルス感染症の患者数はインフルエンザには劣るものの60歳以上の患者に限定した場合では、感染者数は同等の割合、死亡率はインフルエンザより若干低い程度であると言われています。
また、RSウイルス感染症にかかっているかを診断する際、高齢者は小児や若年成人と比較するとウイルスの排出量が少なく、検査でウイルスを検出することができないこともあります。
そのため、ただの風邪であると診断を受けてしまい、RSウイルス感染症に気づかないうちに周囲の人へ感染させてしまっているケースも考えられます。

高齢者のRSウイルス感染症の症状

一般的な症状

軽度の場合では、発熱や倦怠感、鼻水、鼻詰まり、咳などの風邪と同様の症状がみられます。
ウイルス感染から5日前後で初期症状が現れ始め、だいたい1週間程症状が継続しますが、多くの場合はそれ以上進行することなく、軽症で自然治癒します。
しかし、RSウイルスの感染力は非常に強く、症状が現れる前から発症後約1〜2週間にわたって感染力が続きますので、症状が治まったと本人が思っていても周囲の人に感染させないよう注意しましょう。

重症化や致死率について

乳幼児や高齢者、基礎疾患のある方は、RSウイルスに感染した時に重症化のリスクが高くなります。
RSウイルス感染症は、軽症であれば発熱や耳鼻咽喉系の炎症をはじめとする風邪と同じような症状で留まりますが、乳幼児や高齢者、基礎疾患や呼吸器系疾患などがある場合は重症化してしまい、以下のような症状を引き起こすこともあります。

細気管支炎
RSウイルスにより細気管支に炎症を引き起こし、呼吸困難や喘鳴が悪化します。特に乳幼児が引き起こしやすい症状です。

肺炎
ウイルスが肺に至ることで肺炎を引き起こします。断続的な咳や血が混ざった痰、息切れや胸の痛みなどがみられ、多くの場合は入院治療が必要となります。

重度の呼吸困難
ゼーゼー吐息が乱れて呼吸が非常に困難になり、酸素投与や人工呼吸器が必要となる場合があります。

急性中耳炎
乳幼児や小児がなりやすく、RSウイルス感染症と診断された患者のうち、2歳未満の70%、2歳以上の30%に耳の痛みや発熱が見られることがあります。

また、RSウイルス感染症による致死率は感染全体の10%以下と言われていますが、80歳以上の高齢者、基礎疾患がある患者などは致死リスクが高まります。

高齢者のRSウイルス感染症の検査

RSウイルス感染症の診断には、主に2種類のウイルス検出方法が用いられます。
なお、高齢者の場合には小児や若年層に比べてウイルスの排出量が少なく、簡易検査ではウイルスが検出されずに診断できない場合があるため、精度の高い検査方法が必要となります。

迅速抗原検査
RSウイルス感染症だけでなく、インフルエンザや新型コロナウイルスを検出する際にも用いられる最も代表的な簡易検査方法で、スワブと呼ばれる綿棒を用いて鼻腔や咽頭の粘膜や皮膚表面を拭い、ウイルスの抗原を検出する方法です。
ウイルス量がピークとなる初期症状発症後2~3日以内に診断することが望ましく、症状の原因を究明するのに適していますが、後述のPCR検査に比べて精度が低く、感染初期やウイルス量が少ない状態で検査をしても偽陰性となる可能性が高くなってしまいます。

PCR検査
迅速抗原検査同様にスワブを用いて喉や鼻のぬぐい液などの検体を採取し、検体に含まれるウイルスの遺伝子を大量に複製することで微量の遺伝子でも検出可能なレベルにまで増幅する技術です。
PCR検査は抗原検査よりも高感度で特異性が高く、発症前の潜伏期間からでも診断することが可能な一方で、結果が出るまでに数時間がかかることがあるため、病院や検査機関で検査することが多いです。

その他、患者から採取した検体を細胞培養してウイルスを増殖させる方法や、血液を採取し、RSウイルスに対する抗体(IgMやIgG)を検出する方法などもありますが、感染症の迅速な診断にはあまり適していません。

高齢者のRSウイルス感染症の治療

RSウイルス感染症になってしまった場合、インフルエンザに対する抗ウイルス薬のような効果的な治療方法が現代では存在しないため、症状を緩和する対処療法によって治療を施します。
一般的な風邪の治療方法と同じように、抗生物質の使用や咳止め、解熱剤、鎮痛剤による薬剤投与で症状を緩和し、咳や痰で呼吸が困難な場合には気道吸引やネブライザー療法、重篤な場合には酸素療法や入院による点滴など、必要に応じた治療を行います。

高齢者のRSウイルス感染症の予防

高齢者に対するRSウイルス感染症の正確な診断方法や効果的な治療方法がないため、RSウイルス感染症にかからないための予防策が高齢者には重要となります。

基本的な感染対策

RSウイルス感染症の予防は、通常の風邪やインフルエンザの予防と同じく、手洗い・うがい・マスクの着用、手指の消毒といった基本的な感染対策で予防することが求められてきました。
また、自己免疫力を高めるために規則正しい睡眠や適度な運動、バランスの取れた食事といった生活習慣を続けることも必要です。

60歳以上はワクチン接種が可能

2024年1月に、RSウイルスワクチンである「アレックスビー」が発売され、60歳以上は医療機関でワクチン接種できるようになりました。
アレックスビーは、グラクソ・スミスクライン株式会社(GSK)が開発した60歳以上を接種対象者とするRSウイルス感染症予防ワクチンであり、人を対象とした臨床試験では、60歳以上で約80%強、60歳以上の基礎疾患のある人では約94%でRSウイルス感染症に対する効果が検証されました。
その後、2023年9月に日本で初めて製造販売承認を取得し、2024年より正式なワクチン剤として高齢者に行き届くようになりました。
アレックスビーの成分にアレルギー反応を示す方や、心血管疾患などの基礎疾患がある方への接種は医師の判断が必要ですが、60歳以上の高齢者はワクチン接種による予防でRSウイルス感染のリスクを減らすことができますので、未接種の方はぜひ検討してみましょう。

まとめ

冬季に流行しやすいRSウイルス感染症は、軽度であれば風邪と同じ症状で済むものの、高齢者にとっては重篤な肺炎や気管支炎といった重症化に至るような危険性を孕んでいます。
近年では高齢者を対象としたワクチン接種で感染を予防することが可能となりましたので、自身だけではなく周りの感染拡大を防ぐためにも、積極的にワクチン接種を受けることをおすすめします。

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