【掲載日】2023/04/27

不妊治療とは?どんな方法がある?保険適用についても解説

2022年4月から不妊治療の保険適用が拡充されました。従来の特定不妊治療(現在でいう生殖補助医療)だけでなく一般不妊治療等についても適用となるため、子どもを望む人たちにとって不妊治療を選択しやすくなったと言えるでしょう。
ここでは、不妊治療の種類や保険適用の詳細について、わかりやすく記載していきます。

不妊治療とは?

妊娠を希望し、避妊せず性生活を続けても1年以上妊娠しない場合を「不妊症」と言います。
不妊治療は、前述のように妊娠を希望するにも拘らず一定期間妊娠の兆候がない夫婦に対して行われる治療で、まず不妊の原因を調べた後、その原因に応じて治療を行っていきます。
明確な原因がわからない場合は、タイミング法から始まり、徐々に高度な治療に進めていくステップアップ方式を用いて治療を行っていきます。

不妊治療の種類や流れとは?助成金利用についても解説

不妊治療の方法とは?

不妊治療には様々な方法があり、不妊の原因に応じてそれに合った治療を行っていきます。
主な治療法には、タイミング法、排卵誘発法、人工授精、体外受精などがあります。また、不妊の原因を取り除く目的で、内視鏡手術を行うことも多いです。下記でひとつひとつ詳しく記載していきます。

①タイミング法

不妊治療の最初の選択肢になります。自身で基礎体温を付けたり市販の排卵検査薬を用いたりしてタイミングを計る方法とは異なり、医学的検知から妊娠しやすいタイミングを医師が判断し指導する方法です。排卵日近くに経腟超音波検査で卵胞の大きさを測定し、そこからあと何日で排卵するかを予測します。同時に子宮頸管粘液の性状をチェックし、補足的に尿中や血中の排卵を促すホルモン(LH)の値を測定し総合的に判断します。排卵日の2日前から排卵日までに性交渉があると妊娠しやすいため、医師はそのタイミングで性生活をもつように指導します。このタイミング法で6か月ほど治療を続けても妊娠しない場合は、次の段階にステップアップすることが検討されます。

②排卵誘発法

排卵誘発剤を用いて卵胞(卵子)を発育させ、排卵を促す方法を排卵誘発法といいます。
内服と注射の2通りの方法があります。通常は排卵がない場合や、起こりにくい方に使用されますが、タイミング法や人工授精、体外受精の際にもこの方法を併用することによって妊娠率が高まるため、併用を検討されることも多いようです。排卵誘発剤の中で、最もポピュラーな内服薬は「クロミッド(クロミフェン)」ですが、内服薬で排卵が起こらない場合は注射剤によって卵胞の発育を促したり排卵誘発を促したりします。注射剤は効果が大きい反面、副作用も多く、多胎率(双子・三つ子など)の増加や、卵巣過剰刺激症候群のリスクが高まることもあるので慎重に使用されます。

③内視鏡手術

検査としても治療としても用いられる方法です。
(1) 腹腔鏡手術:お腹の3~5か所に5~12mmの小さな穴をあけて、炭酸ガスでお腹を膨らませ棒状のカメラを挿入し、モニターで確認しながら特殊な細い器具を使って手術を行います。子宮内膜症・子宮筋腫・卵巣嚢腫・卵管周囲癒着などの病変や癒着を切除し、不妊症の要因である可能性の因子をクリアにすることで妊娠の可能性を高めます。
(2) 子宮鏡手術:子宮内宮に3~5mm程度の太さの内視鏡カメラを入れて、電気メスなどで病変を切除する方法です。全身麻酔で経腟的に行われます。子宮内ポリープや子宮筋腫(粘膜下筋腫)など、妊娠の妨げになる要因を除去します。
(3) 卵管鏡手術(FT):卵管が詰まったり癒着していたりすると、精子や卵子が通れません。自然妊娠を希望する場合に選択する手術で、このFT手術は、カメラが内蔵された直径0.6mmのカテーテルを子宮内から卵管に入れていき、狭窄している場所をバルーンで広げていきます。これにより自然妊娠する可能性を高めることができます。

④人工授精(AIH)

精子を採取し、洗浄・濃縮して元気な精子を選別し、受精しやすい状態にしてから、排卵時期に合わせて子宮に直接注入する方法です。自然妊娠は、精液が膣に入ってから精子が子宮に到達しますが、それに対し人工授精は直接子宮に精子を注入するため、精子と卵子が出会う確率が上がります。タイミング法の延長にある治療で、違いは性交渉を持たないというだけで自然妊娠に近い形の治療となります。この治療が向いているのは、軽度の乏精子症や軽度の精子無力症、性交障害がある、精子と頸管粘液の相性が良くない場合や不妊の原因が明らかでない場合などが適しているとされています。人工授精の妊娠率は1周期あたり5~10%とされており、体外受精に比べるとあまり高いとは言えません。また、4~5周期くらいまでが目安と考える医師が多く、ある程度続けても妊娠できない場合は次のステップに進むことが検討されます。

⑤生殖補助医療

体外受精・顕微授精など、体の外で受精させる治療を高度生殖補助医療(ART)といいます。
(1) 体外受精:薬を使って育てた卵胞内にある卵子を体外に取り出し(採卵)、そこに精子を振りかけて受精卵をつくり、できた受精卵を子宮内に戻す(胚移植)治療法です。流れとしては①排卵誘発、②採卵・採精、③受精、④胚培養、⑤胚移植、⑥黄体補充、⑦妊娠判定の順で治療が行われます。
(2) 顕微授精:卵子の中に直接ひとつの精子を注入して受精させる方法で、(1)の治療で卵子と精子の受精が成立しない、あるいは精子の数が少ないなどの理由で顕微授精以外では受精の可能性が低い場合に検討される治療法です。最近では体外受精を上回る勢いで適用が広がっています。
(3) 凍結融解胚移植:いったん成長した受精卵(胚)を凍結させておき、採卵後の子宮のコンディションを整えてから戻す方法を取る為、新鮮胚移植(採卵周期に胚移植を行う方法)に比べると妊娠率が高いと言われています。

不妊治療の種類や流れとは?助成金利用についても解説

特定不妊治療とは?

以前は、不妊治療のうち、「体外受精」及び「顕微授精」で行う治療を特定不妊治療と呼んでいました。治療費が高額になることから、多くの自治体では助成金給付の対象となっていましたが、2022年4月から体外受精・顕微授精等は「生殖補助医療」として保険適用されるようになりました。尚、人工授精等の「一般不妊治療」についても保険適用範囲となっています。

不妊治療で自然妊娠の確率を超えることは可能か

妊娠が成立しやすいかどうか、妊娠するための力のことを「妊孕性」といいます。妊孕性は20代が一番高く、35歳ごろからかなり下がっていきます。20代の1周期当たりの妊娠率が25~30%だとすると、40代では1~5%と言われています。
他方、凍結胚移植(F-ET)では、2017年の結果によると41~45歳では約20%の妊娠率となっています。
※厚生労働省出典「令和2年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業
不妊治療の実態に関する調査研究」(㈱野村総合研究所調査報告)より

この結果を見ると、年齢にもよりますが、例えば40代で自然妊娠の可能性が低い場合には、確率からみると凍結胚移植などの生殖補助医療は有効な選択肢と考えられます。

加齢と妊娠の関係性

加齢が進み35歳ごろから妊孕性(妊娠するための力)が低下すると言われています。

理由1
卵子の数と質の低下:卵胞(卵子)は胎児の時に作られ、年齢とともに徐々に減っていき、特に30代後半からは急激に減ることがわかってきました。また、新しく作られることはないので、年齢が上がってから排卵される卵子は、その年齢分老化した卵子ということになります。卵子の質の低下により染色体数異常の割合も高まりますので、卵子の数と質の両面から見ても、妊孕性は20代の若い人ほど高く、妊娠適齢期も同様と言えるのです。

理由2
婦人科疾患の罹患率が増加:年齢が上がると、卵管炎、子宮筋腫、子宮内膜症等に罹患する確率が増し、妊娠を妨げる因子が増えていきます。

また、男性の場合も加齢により精液量、精子正常形態率、精子運動率が減少し、精子DNAの損傷の割合も高くなることがわかっています。このことから女性だけでなく男性の加齢についても、妊孕性の低下や流早産率の上昇に影響があるとされています。(※日本婦人科医会より

20代の流産率が10%程であるのに対し、母体の年齢が35~39歳では25%ほど、40~44歳では50%に至るなど、加齢が進むほど流産確率が高まるとされています。(※日本生殖医学会より

不妊治療の保険適用について

2020年4月から、人工授精等の「一般不妊治療」と体外受精・顕微授精等の「生殖補助医療」について、保険適用されることとなりました。
以下の治療がすべて保険適用となります。

一般不妊治療
タイミング法、人工授精

生殖補助医療
採卵・採精、体外受精・顕微授精、受精卵・胚培養、胚凍結保存、胚移植

年齢・回数の要件(体外受精・顕微授精) ※人工授精は2023年3月現在、年齢回数制限なし

年齢制限
治療開始時において女性の年齢が43歳未満であること

回数制限
初めての治療開始時の女性の年齢が40歳未満→通算6回まで(1子ごと)
初めての治療開始時の女性の年齢が40歳以上43歳未満→通算3回まで(1子ごと)

また、患者の状態の応じ、追加的に実施される治療のうち先進医療に位置付けられたものについても保険診療と併用可能となります。先進医療の部分は保険適用外となりますが、自治体により助成金制度を設けているところもあります。

治験ボランティアに参加してみませんか?

【医学ボランティア会JCVN】とは?
製薬メーカーや治験実施機関から治験ボランティアの募集依頼を受け、当会に入会いただいたボランティア会員の皆さまへ、治験のご紹介とご案内をサポートさせていただくために設立された団体です。
JCVNに登録頂いた会員の皆さまには、それぞれの年齢やお住まいの地域、健康状態などによって「くすり」の治験や健康食品・化粧品モニター、医療機器の使用モニターなど多岐に渡る様々なモニター・治験・臨床研究等の案件を、主にメール配信にてご紹介しております。
登録料および利用料や年会費は一切ございません。どなた様もお気軽にご登録いただけます。

まとめ

わが国の少子化における対策のひとつとして2022年4月、不妊治療の保険適用が拡充されました。それまでは経済的な負担が大きい為に選択しづらかった不妊治療ですが、この保険適用により比較的取り組みやすい環境が整えられてきました。とはいえ妊娠は年齢的にも、ある程度のリミットが設けられてしまうため、子どもが欲しいのになかなかできないと感じている場合は、まずは早めに夫婦揃っての検査を受けるのが良いでしょう。また、不妊治療は女性側の身体的・精神的負担は非常に大きいものです。パートナーと不妊治療への価値観や意見のすり合わせをしっかり行い、実際に治療が始まったら、上手に休息を取り入れ気分転換をしながら心身のケアをしていくことが、不妊治療を継続する上ではとても大切なポイントになるでしょう。

不妊症の基礎知識ページに戻る

不妊症の基礎知識一覧

人気の記事

治験ボランティア登録はこちら

フリーダイヤル0120-189-408

営業時間(月~金)10:00 - 18:00

治験ボランティア登録

その他の病気の基礎知識を見る

こちらもよく読まれています

治験情報一覧

治験ボランティア・モニター参加者募集

  • フリーダイヤル0120-189-408