治験のバイトとは?メリット・デメリットや注意点、報酬について解説

治験とは

治験とは、新しい薬が国の承認を得るために安全性や有効性を確認する目的で行われる、開発の最終段階に位置する臨床試験のことです。
実際に人に対して新薬候補の「治験薬」を投与し、特定の疾患や症状に対する効果があるか、薬の成分が安全であるか、深刻な副作用が発生しないかを調査します。
治験を実施する際には、被験者の安全を最優先にする「ヘルシンキ宣言」と呼ばれる倫理規範に従い、「GCP」と呼ばれる厳格な基準に基づいて進める必要があります。
さらに、治験を実施する前には、これらの要件が満たされているかどうかを「IRB(治験審査委員会)」が審査し、承認を得る必要があります。
これらの工程を経て、治験で得られた有効性や安全性に関するデータが国に認められることで、新薬として初めて多くの人々に供給されることが可能となります。

治験バイトとは

ボランティア(被験者)が治験に参加することで生じた負担は、多くの場合、治験実施医療機関からサポートを受けることでボランティアに還元されます。
ここでの負担とは、治験実施施設までの交通費や治験期間中の食事、治験に要する時間などを指し、これらを補助する目的で、「負担軽減費」と呼ばれる金銭を受け取ることができます。
一見、仕事の対価として給与が支払われるアルバイトと似ていますが、治験に対価を支払うことを義務付ける法律はなく、治験参加は自由意思によるものであるという明確な違いがあります。
そのため、治験参加はアルバイトではなく「有償ボランティア」として位置づけられており、「謝礼金を受け取れる治験に参加すること」を「治験バイト」と表現することがあります。

治験のバイトはやばい?危険性は?

治験を実施することは簡単なものではありません。
治験に参加するボランティアの人権や安全を最優先するため、その実施方法や妥当性、副作用に関する厳格な基準が満たされていることを示し、第三者機関における厳しい審査を受けて認可される必要があります。

・ヘルシンキ宣言
世界医師会にて採択された倫理規範

・GCP(医薬品の臨床試験の実施基準)
厚生労働省で定めた人権や安全を最優先するための厳しい基準

・IRB(治験審査委員会)
治験の妥当性や副作用などについて厳しく審査する第三者機関

上記に基づいたプロトコールを作成し、ボランティアの安全性に最大限配慮して治験を実施します。ただし、既に承認されている薬であっても、眠気や倦怠感、消化器系への影響などの副作用が発生する可能性があります。また、承認前の薬に関しては、予期しない作用や身体への影響が発生するリスクを完全に排除することはできません。
そのため、治験に参加する前には必ず『インフォームド・コンセント』が実施されます。担当医師などから治験の詳細や、発生する可能性のある副作用についてボランティアに対し十分な説明が行われ、その説明を受けた上で、治験に参加するかどうかはボランティア自身の自由な意思で決めることができます。
治験では、通常の診療に比べて通院や検査の回数が多く、治験担当医師がボランティアの健康管理を徹底しています。治験薬の服用など治験に起因する健康被害が万が一生じた場合には、治験担当医師や医薬メーカーが速やかに対応する体制が確立されています。

治験バイトの種類

治験バイトでは、治験薬や試験品の効果を確認するために、定期的な診察や検査が行われます。
そのため、多くの治験では事前にスケジュールが決められており、参加するボランティアはそのスケジュールに合わせて時間を確保する必要があります。
治験バイトのスケジュールは、決められた日時に入院して定期的に検査を受ける入院タイプと、決められた期間やスケジュールに治験実施施設で検査を受ける通院タイプがあり、なかには入通院が混合したタイプの治験バイトもあります。

入院の治験バイト

入院タイプの治験バイトでは、指定された医療機関に一定期間入院する必要があります。
入院中は参加ボランティア全員に対して、起床や就寝、食事、検診などの時間が細かく定められ、治験内容によっては外出やスマートフォンの利用、喫煙、飲酒といった行動が制限される場合があります。
また、入院期間は短いもので1泊、長い場合は10日から数週間に及ぶこともあり、入院回数も1~2回程度が一般的です。そのため、治験参加中の拘束時間が長くなる傾向にあります。
このように、入院タイプの治験バイトは参加者の負担が大きくなるため、負担軽減費が高めに設定されることが多いのが特徴です。

日帰りの治験バイト

通院タイプの治験バイトは、主に健康食品やサプリメント、試験品の効果を検証するものが多く、指定された医療機関に、決められたスケジュールに従って定期的に通院します。
1回の通院での拘束時間が比較的短く、数回の参加で終了することが一般的です。
スキマ時間を活用して気軽に参加できるため、人気の高い治験のひとつと言えるでしょう。

治験バイトの流れ

◆治験ボランティアの登録
まずは、治験ボランティアを募集している機関のホームページで会員登録を行いましょう。性別、年齢、持病、服薬状況などの健康情報を登録することで、参加条件に合った治験が紹介されやすくなります。

◆治験へ申し込む
ホームページに掲載されている治験や、電話・メールで紹介された治験の中から希望するものを選びます。すべての治験には参加条件や実施場所が定められているため、参加しやすい治験や自身の条件に合った治験を選びましょう。

◆治験参加前の案内
自身の現在の健康状態や治験の参加条件に該当しているかを確認し、聴取した内容に問題がなければ参加日時を調整して治験実施施設を紹介します。

◆事前検診、同意取得
参加したボランティアが治験の被験者として適切であるか、事前検診の結果により判断します。
また、治験参加前には「インフォームド・コンセント」を行い、医師から治験の説明を受けたか、参加への同意をボランティアの自由意思で決定したかを踏まえる必要があります。

◆治験参加
事前検診で適格と判断された方が治験参加となります。
入院、または通院により規定のスケジュールで参加していただきます。

治験バイトの応募方法・条件

会員登録完了後、募集中の治験へのお申し込みが可能となります。
参加条件、日程、場所などを事前に確認し、希望のものを選びましょう。

応募方法

治験バイトは、治験のポータルサイトや治験ボランティアを募集している企業などから申し込むことができます。ホームページに掲載している治験からのお申込みや、登録したボランティア会から会員宛てに配信されるメールからのお申込みが主流となります。
また、医療機関や大学病院で治療中の患者さんを治験に勧めたり、製薬会社のサイトなどで独自に治験バイトを募集しているパターンもあります。
募集内容に大まかな参加条件や実施場所、日時などが記載されていますので、自分が参加対象になっているか、決められたスケジュールで治験に参加できるかを事前に確認しておきましょう。
応募する際には、個人情報や健康状態などをアンケートや電話で事前に聴取することがあります。
回答した内容が応募した治験の要項に該当しているか判断するための材料となるので、正しく詳細な情報を提示しましょう。

応募条件

前提として、治験バイトはどんな人でも参加できるわけではありません。
治験の参加条件は、年齢、性別、健康状態など、治験の内容ごとに特有の条件が定められています。参加条件に自身が該当し、血液検査などで健康状態を数値化したうえで、医師が適格と判断した場合にのみ治験に参加することができます。
特に、BMIや血液検査の数値が参加条件に含まれている治験の場合、参加当日に計測した数値で参加条件に該当しているかを判断しますので、直近で計測した自身の健康状態を把握しておくことや、参加までに体調を整えておくことが重要です。

治験バイトのメリット

治験に参加することには、様々なメリットやデメリットがあります。
それぞれの観点から治験がどのようなものであるかを理解することで、治験をさらに有意義に活用することができるようになります。

新薬や新しい治療法を試すことができる

医療の開発は日々進んでおり、既承認の薬よりもさらに効果が期待できるものを探求したり、難治性疾患を治療するための方法などを研究しています。
特に治療中や服薬中の患者にとっては、最先端の医療を試すことのできる貴重な機会でもあるので、現在受けている治療とは異なる選択肢の一つとして治験を検討することができます。

治療にかかる費用を抑えられる

治験に参加する際にかかる施設までの交通費や治験薬の費用は、治験実施医療機関や製薬メーカーなどが負担します。治験完了後には負担軽減費といった名目で協力費が支払われるので、本来治療にかかる費用などを相殺することができます。

社会貢献になります

新薬が市販されるには、人体に対する有効性と安全性が認められなければ世に出すことができません。つまり、非承認段階の新薬を人体に投与する治験がなければ、新薬を開発することができません。
「治験に参加する」ということは医療開発の一端を担うことであり、さらなる医療を期待している方々へ新薬を届ける架け橋となっているとも言えますので、十分な社会貢献を果たしていると言えるでしょう。

治験バイトのデメリット

治験薬の予期しない副作用の可能性

動物を対象とした非臨床試験を経ているとはいえ、治験で投与する薬は人間を対象とした有効性と安全性などの十分な臨床データが得られておりません。
厚生労働省から承認されていない「くすりの候補」を治験では使用するため、本来期待できる効果に伴い、人体にとって好ましくない作用(副作用)が発生する可能性も存在します。
そのため、治験前のインフォームド・コンセントにて担当医師等から治験の詳細な内容や副作用等についての説明を受け、治験に正式に参加するかどうかはご本人の自由意志で決めることができます。

実施場所、日程を自由に選択できない

治験はあらかじめ決められた施設や日程で実施されるので、治験ボランティアは施設までの交通費負担やスケジュールの確保などをする必要があります。治験に参加することで発生するこれらの負担は、負担軽減費と呼ばれる金銭などで還元されます。

治験参加中の制約や制限

治験参加期間中は臨床データに影響を及ぼさないよう、運動や飲酒、喫煙の制限、食事や睡眠時間の制約など様々な制約や制限が課せられます。

プラセボ(偽薬)

治験内容のひとつに、新しい「くすり」の候補と、効果や作用をもたらさないプラセボ(偽薬)との比較検査があります。また、二重盲検法と呼ばれる方式の治験では、治験ボランティアだけでなく治験担当医師も治験薬がプラセボであるかどうかを知らされません。
治験薬は、プラセボと比較してはっきりと上回る効き目があって初めてくすりとして認められる治験には欠かせない手法ではありますが、新薬の効果を期待して参加した治験ボランティアにとっては不利益となってしまうので、インフォームド・コンセントを通して治験ボランティアにしっかり治験内容を理解していただく必要があります。

治験バイトの注意点

「成人」であっても年齢に注意

日本国内における民法の改正により、2022年4月1日から、成年年齢が20歳から18歳に変更となりました。
治験の参加対象のほとんどが成人以上である場合が多いですが、それとは別に参加条件として年齢の下限、上限を設定しています。
18歳の大学生は法律上成人ではありますが、参加対象年齢が20歳以上となっている治験にはもちろん参加できませんので注意しましょう。

治験は「平日」実施することが多い

治験は治験専門の医療機関だけでなく、病院や診療クリニックなどでも実施することがあります。その場合、平日の一般診療と並行して治験も行うため、外来の混み具合に影響されて検査時間が伸びてしまったり、土日が休診のために治験が実施されなかったりすることもあります。
治験のスケジュールは中~長期にわたる期間を要することが多いため、社会人や学生は平日のまとまった時間を確保することが難しい問題があります。

治験バイトについてよくある質問

治験とモニターは、何が違うの?

治験とモニターとの違いを大まかに分類すると、治験で使用する「試験品」が、治療を目的とした薬剤であるか、予防を目的としたサプリメントや機能性表示食品などであるか、と言えます。
治験では主に薬剤を使用するため、服薬による身体への影響や入院などの日程的な拘束を伴い、被験者への負担が大きい反面、新薬の効果を得られたり、高額な謝礼が受け取れたりするなどのメリットがあります。
モニターでは食品や化粧品などの試供品を主に使用するため、治験よりも身体的な負担が軽く、日常生活の合間や自宅にいながら簡単に協力することができる反面、治験と比較すると謝礼は安価となります。

どのエリアに住んでいても治験に参加できますか?

治験実施医療機関により、治験ごとに参加可能な都道府県が定められています。参加可能な場合でも、施設にお越しいただく際の交通費が負担軽減費に含まれている場合がありますので、あらかじめご了承下さい。

生活保護を受けていても登録・参加できますか?

生活保護受給者が治験での負担軽減費を受け取ることによって、生活保護の適用除外又は保護費減額の事由になり得ます。また、保険外併用療養費制度は原則として適用されません(生活保護法第52条第2項)。
よって、原則生活保護受給者の方は参加対象外とされているため、ご案内の機会は必然的に限られてしまいます。

まとめ

新薬の効果を試すことができ、負担軽減費を受け取ることができ、さらに社会に貢献できるため、治験に参加することは非常に魅力的に感じられるかもしれません。
しかしながら、そのようなメリットだけでなくデメリットも存在し、場合によっては健康に影響が出るリスクが発生する可能性があることを十分に理解して治験にのぞむ必要があります。
また、治験はアルバイトや仕事ではなく、有償ボランティアに位置づけられます。
治験参加前には治験内容に関する説明を受ける機会が必ず設けられていますので、自身が参加する治験の内容をしっかりと理解したうえで自身の自由意志で判断し、正しく参加しましょう。

治験ボランティア・モニター参加者募集

  • フリーダイヤル0120-189-408

会員登録

医学ボランティア会JCVNに会員登録していただきますと、
新着治験情報がメールで受け取れるほか、
JCVNホームページのマイページにログインすることが可能となります。
マイページログイン後は、治験の日程や負担軽減費等の詳細情報が閲覧できますので、
会員登録がお済みでない方は、ぜひご登録ください!

メールアドレスで登録する場合

お電話でのお申し込みの場合
平日10時〜18時 ※土日祝を除く

フリーダイヤル0120-189-408