【掲載日】2021/06/04

不妊治療の種類や流れとは?助成金利用についても解説

不妊症とは?

「不妊」とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間(約1年間)妊娠しないものをいいます。
不妊の原因の多くは加齢による生殖機能の低下であり、その他のケースでは女性側の月経不順や無月経期間による排卵異常、子宮内膜症や子宮筋腫といった婦人科系疾患等が挙げられ、男性側では小児期のおたふく風邪などに罹患したあとに高熱が続いたことや、睾丸炎を起こした既往やヘルニアの手術を受けた場合など、精子をつくる力が低下していることがあります。

不妊症と病気の根本的な違いとは何か?

一般的な病気は、頭痛や腹痛、喉が腫れているなど何かしら身体的な症状がみられ、症状をもとに検査をすることで原因を特定し、治療をします。
しかし、不妊症は痛みも不快感もなく、検査を受診しても原因の特定が難しいものです。
精子や卵子に異常がないのに受精しない場合や、細胞分裂がうまく働かない場合もあります。排卵があっても、卵胞内の卵子がすでに変性していることもあります。
妊娠に至る過程の段階で、排卵障害、受精障害、卵管障害、着床障害といった様々な要因が不妊の原因に繋がります。また、体内で生成される卵子の質が未熟な場合や、染色体に異常がある場合もあります。
検査結果に異常が見られない場合や、原因が特定できない場合が多く、現代医学では解明できない問題も多く残っています。

不妊症の人はどのくらいいるの?

妊娠を希望するカップルが不妊に至るケースは、10組に1組と言われています。2007年調査された世界規模での報告では、不妊症の比率は調査された時代や国により1.3%から26.4%に分布し、全体では約9%と推定しています。
2015年の調査では、日本では不妊を心配したことのある夫婦は3組に1組を超え、内15.6%が不妊検査や不妊治療の経験があることがわかりました。
また、もっとも女性が妊娠しやすい年齢は20歳前後とされていますが、30歳代半ば頃から、年齢が上がるにつれて様々なリスクが相対的に高くなるとともに、妊娠・出産に至る確率が低くなっていくことが指摘されています。女性の年齢が45歳を過ぎると、たとえ排卵や生理があっても、赤ちゃんを作ることの出来る質の良い卵子ができなくなってしまうために妊娠の可能性は難しいと言われています。

不妊の原因とは何か?

女性の不妊症の原因

①排卵因子
月経周期が25日~38日でなく、基礎体温が二相性を示差ない場合は月経不順の兆しがあり、排卵障害の可能性があります。
排卵障害の原因としては、ホルモンバランスに異常があり、乳汁を分泌させるプロラクチンというホルモンが過剰に働いてしまう「高プロラクチン血症」により卵巣機能を抑制された結果、卵巣内の男性ホルモンが高まる「多嚢胞性卵巣症候群」によって排卵が正しく機能しない場合などが挙げられます。その他、大きな精神的ストレスや大幅なダイエットに伴って月経不順をきたした場合にも不妊症になることがあります。

②卵管因子
卵管の機能に異常(卵管内の幅が狭くなる「卵管狭窄」や卵管がつまる「卵管閉塞」など)がある場合があります。例えば、性器クラミジア感染や淋菌などの感染症により卵管の閉塞や周囲の炎症により卵管周囲が癒着を起こし、卵管に卵子が取り込まれにくくなるために不妊症になることがあります。特に女性ではクラミジアにかかっても無症状のことが多く、感染に気づかないことがあります。
また子宮内膜症により排卵が妨げられたり、卵巣周囲の癒着により排卵された卵子の取り込みが妨げられたりする場合もあります。

③ 子宮因子
子宮の機能に原因がある場合があります。子宮粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮腔内癒着症、中隔子宮が挙げられ、特に子宮粘膜下筋腫では過多月経である場合が多く、内膜の表面が滑らかではなくなったりするため受精卵の子宮内膜への着床の障害になったり、着床しても流産しやすくなり不妊の原因になることがあります。なお、子宮筋腫は着床を妨げるだけでなく、精子が卵子へ到達するのを妨げて妊娠しにくくなることもあります。

④子宮頸管因子
子宮頸管の狭窄や頸管粘液の分泌に異常がある場合には、精子の進入を妨げてしまうため不妊の原因となります。また、ブドウ球菌、クラミジアや淋菌感染症などにより子宮頸部の炎症が慢性化すると不妊の原因になります。

⑤免疫因子
女性側に抗精子抗体(精子を障害する抗体)や精子不動化抗体(精子の運動を止めてしまう抗体)が見つかった場合には、精子の運動性や卵子と精子の結合、受精卵や初期胚に影響を与えます。
下記の「原因不明不妊」には、高い確率でこの免疫因子が含まれていると考えられています。

⑥原因不明不妊
不妊症検査によって明確な原因が見つからない場合を原因不明不妊と分類され、全体の不妊症の1/3を占める原因と言われています。検査で原因が特定できないとはいえ、主に2つの要因によるものと考えられています。ひとつは卵管内で何らかの原因により精子と卵子が受精しない場合です。この場合は人工授精や体外受精(IVF)を含めた生殖補助技術(ART)を試みます。
もうひとつは、加齢により精子または卵子の昨日が低下、または消失している場合です。ヒトの卵子の質は年齢が30歳を過ぎると低下しはじめ、35歳を過ぎると急激に下降すると言われています。また、一度、精子や卵子の機能が消失してしまうと、現在では有効な治療はほとんどないと言われています。

男性の不妊症の原因

①造精機能障害
・乏精子症:精子数が精液1mlあたり1500万未満の状態
・精子無力症:精子運動率が40%未満で精子の動きが悪い状態
・無精子症:精液中に精子が全く見られない状態
・奇形精子症:正常な精子が形成される割合が4%未満の状態
・精索静脈瘤:精索静脈瘤は精巣上部や周辺の静脈が拡張した状態

②性機能障害
性交時に有効な勃起が起こらず性行為がうまくいかない勃起障害(ED)や性行為は出来ても腟内での射精ができない腟内射精障害などがあり、心的要因が主であると言われています。

③閉塞性精路障害
精路(精巣上体、精管、射精管)に何らかの炎症や閉塞があり、精巣内で精子が作られても精路内で詰まり、射出精液中に精子が認められない状態をいいます。無精子症の原因の中でも15~20%に認められます。

④その他
低ゴナドトロピン性性腺機能不全、高プロラクチン血症、テストステロン分泌低下などのホルモン障害や感染症による副腎障害、癌などが挙げられます。

不妊治療の種類

一般不妊治療

下記の方法の他、排卵誘発薬(内服薬、注射)で卵巣を刺激して、排卵を起こさせる薬物療法や、子宮内膜症などに対する外科療法も含まれます。

・タイミング法
排卵日の2日前から排卵日までの妊娠しやすいと言われる時期に性交のタイミングを合わせる方法であり、6回以上の性交で妊娠しなければ妊娠率が停滞してしまうため、他の方法に移行することが望ましいと言われています。

・人工授精
採取した精液中から活発な精子(運動良好精子)を取り出して濃縮し、妊娠しやすいタイミングで子宮内に直接注入する方法であり、人工授精で妊娠する確率は1回あたり約10%と言われています。

高度生殖医療

卵巣から卵子を取り出し(採卵)、体外で精子と受精させて数日後に受精卵を子宮に戻す(胚移植)方法です。高度生殖医療で子どもが生まれる確率は総治療あたり平均11.7%と言われ、32歳くらいまでは約20%ですが、年齢とともに下降し、40歳を過ぎると7〜8%になると言われています。

・体外受精
卵子と精子を同じ培養液の中で培養して受精させ、得られた受精卵を子宮に戻す方法を呼びます。

・顕微授精
健常で活発な働きの精子を卵子の中に針で注入する方法で、受精障害や重症精子減少症、重症精子無力症など体外受精では受精が起こらない可能性が高い場合に実施します。

不妊治療の流れについて

不妊の可能性があると判断した場合、はじめに基本検査をします。そして基本検査で異常が見つからなければ、上記のタイミング療法をします。
目安の期間を6ヶ月と設定し、妊娠に至らなければ排卵誘発法(卵巣を刺激して卵胞を多く 成熟させる)と手段を変えていきます。このように、出来るだけ自然妊娠に近い治療法から開始し、一定の成果が認められない場合には、妊娠の確立を高める為に治療内容を順次レベルアップしていく治療法を「ステップアップ治療」と呼びます。自然妊娠に近い方法でも妊娠に至らない場合は、人工授精→体外受精→顕微授精といったように、手段や方法をより高度なものに変えていきます。

不妊症の原因は複雑で不明確な場合が多いため、様々な検査や治療を試みながらひとつずつ原因を究明し、不妊治療を進めていきます。「不妊治療は時間がかかる」といわれますが、検査や治療を段階的に評価することで明らかになる原因や問題点をふまえたうえで体外受精をしないと、なかなか妊娠できなかった場合に、何が原因なのかがわからず、結局最初から検査をやり直さなければならなくなります。ただし、原因が明らかとなった場合に、次のステップをとばし早い段階で高度医療に進む場合もあります。

不妊治療の費用はどれくらいかかるの?

不妊治療の初診料:2,000~3,000円(保険適用外)+各種検査費用

1. ホルモン測定(採血):約1,000~2,000円
黄体化ホルモン、卵胞刺激ホルモン、卵胞ホルモンなどのホルモン検査

2. 子宮卵管造影法:約10,000円
卵管の癒着の有無や子宮のかたちなどを調べる検査

3. 超音波検査(エコー):約1,500円
子宮全体の形状や状態確認、子宮筋腫・子宮内膜症・卵巣嚢腫などの異常を確認する検査

4. 性交後試験(フーナー試験):約500円
排卵前の時期に性交し、その際の粘液内の精子数を確認する検査

不妊治療検査
1. タイミング法:10,000円以内/検査 検査回数や検査内容など個人差があります。
2. 人工授精:20,000~40,000円/検査
3. 体外受精:200,000~300,000円
4. 顕微授精:300,000~400,000円
※その他各種検査費用が発生する場合があります。

不妊治療に助成金はあるの?

不妊治療費用の支援拡充内容

政府は2020年12月に不妊治療費用に対する助成金の総額を約370億円に拡充する方針を固めました。

■対象治療法
特定不妊治療(体外受精および顕微授精)

■対象者
特定不妊治療以外の治療法によって妊娠の見込みがないか、または極めて少ないと医師に診断された夫婦(治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦)

■給付の内容
①1回30万円
凍結胚移植(採卵を伴わない)および採卵したが卵が得られないなどのため中止したものについては、1回10万円。
通算回数は、初めて助成を受けた際の治療期間初日における妻の年齢が、40歳未満であるときは通算6回まで、40歳以上43歳未満であるときは通算3回まで助成(1子ごと)

②男性不妊治療を行った場合は30万円
精子を精巣または精巣上体から採取するための手術

■拡充の適用
2021年1月1日以降に終了した治療を対象

変更前
(2020年12月31日までに
終了した治療)
変更後
(2021年1月1日以降に
終了した治療)
所得制限 730万円未満(夫婦合算の所得) 制限なし
助成額 1回15万円(初回のみ30万円) 1回30万円
助成回数 生涯で通算6回まで
(40歳以上43歳未満は3回)
1子ごと6回まで
(40歳以上43歳未満は1子ごと3回)
対象年齢 妻の年齢が43歳未満 変更せず

自治体によって不妊治療の助成内容は違う

不妊治療の助成は、国だけでなく都道府県や市区町村によって、助成内容や金額が上乗せされる場合があります。

◆東京都
東京都では2回目以降の治療も治療ステージA(新鮮胚移植)の場合は20万円、治療ステージB(採卵を伴う凍結胚移植)の場合は25万円まで助成してくれます。(国の定めでは1回15万円まで)
また、不妊検査や一般不妊治療(タイミング療法、一般不妊治療など)の費用を1回に限り最大5万円助成する制度もあります。
さらに市区町村によっては独自の費用助成を行っているところもあり、例えば港区では特定不妊治療を対象に1年度あたり30万円までの助成を実施し、年度内の回数制限もなく限度額に達するまで何度でも申請できます。

◆埼玉県
埼玉県では2017年度より「ウェルカムベイビープロジェクト」を発足し、43歳未満の女性に対する初回30万円までの助成に加え、女性の年齢が35歳未満の場合はさらに最大10万円の上乗せ助成が受けられます。※一部適用外となるケースあり
また、女性の年齢が43歳未満の夫婦がそろって受けた不妊検査費用には最大2万円までの助成もあります。
第2子以降の治療も支援し、国の制度における通算6回(40〜42歳は3回)という回数制限を、県は1回の出生あたり6回(40〜42歳は3回)に設定しています。

◆福井県
福井県は、国が定めた助成上限回数以降も助成します。
初回治療時点で39歳以下の場合は、通算7回目以降も年度内3回まで1回あたり最大10万円の助成を行っています。通算6回目まで年度内の助成回数制限はありません。また、40〜42歳の場合も年度内3回までの助成が可能です。
通算4回目以降も最大10万円までの助成金の交付を実施しています。通常、助成の対象外である治療ステージG(卵胞が発育しない、または排卵終了のため中止)、H(排卵準備中、体調不良等により治療中止)でも、1回あたり7万5000円を上限に助成申請が可能です。
ただし、ステージG、Hの場合、39歳以下は通算6回目まで、40〜42歳は通算3回目が終了するまで通算回数に含みません。

◆三重県
2014年に全国に先駆けて男性不妊治療に対する助成金制度を設けた三重県では、国が定めている通りの助成制度のほか、前年の所得合計額が400万円未満の夫婦を対象に1回あたり10万円までの上乗せ助成を各市町が実施しています。
また、鳥羽市では人工授精を行った場合には、1年度にかかった総治療費(保険適用外分)の3分の2、最大3万円を通算5年まで助成し、第2子以降の特定不妊治療についても1回あたり15万円(治療内容によっては7万5000円)までの助成を実施しています。そのほか、特定不妊治療費の助成上限額を超えた男性不妊治療費についても上限5万円までの助成があります。

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