【掲載日】2016/08/03   【最終更新日】2022/02/28

『過活動膀胱』(OAB)とは?頻尿などの症状と原因・治療方法について

木村 眞樹子医師

監修者

循環器内科・内科・睡眠科医

木村眞樹子医師

「最近、夜寝ているとトイレに行きたくてちょくちょく起きちゃう・・・ゆっくり寝ていられなくて困っているのよね。。歳かしら・・・」と、トイレでお悩みの方も多いはず。
そのトイレのお悩み もしかしたら、「過活動膀胱」といって、一つの病気の症状かもしれません。
あなたは、過活動膀胱という病気をどのくらい知っていますか?

「過活動膀胱」ってどんな病気?原因は?

外出先から帰って、トイレに早く行きたくて、家の鍵を探しているのに焦ってなかなか見つからず、イライラしていたらすぐ目の前がトイレなのに・・・なんて失敗の経験はありませんか?
「トイレに行きたい!」と思ったら、我慢がきかずにトレイに駆け込んで、あとズボンをおろすだけなのに・・・なんて失敗も。

あるデータによると、40歳以上の約12%に過活動膀胱の症状があり、おしっこの問題で悩んでいる人は、日本の人口に換算すると、810万人の過活動膀胱の患者さんがいると推定されているのです! 過活動膀胱とは、「我慢できないほどの強い病的な尿意があり、頻尿や失禁を伴う状態」のことで、膀胱と脳の連動がうまく行なわれていない状態を指します。

過活動膀胱は、骨盤底筋のゆるみやたるみのほか、加齢も原因となります。が、特に女性の場合は、更年期を過ぎると、女性ホルモンの不足により膀胱の過敏性が増し、膀胱が異常に収縮して尿が漏れ出す症状があります。 でも、人にはなかなか言えないし、恥ずかしいし・・と、一人でお悩みの方も多くいらっしゃいますが、トイレの悩みは毎日の悩み。一人で 悩んでいないで、早めにお医者さんへ相談しましょう。

◆毎日の生活の中で・・・
洗い物をしようとして水にさわるとトイレに行きたくなる
ちょっと外出するのも落ち着かない
夜、なかなかゆっくり眠れない

◆外出中に・・・
尿漏れパッドが手放せない
友達と旅行に行きたいけど、悩んでるなんて恥ずかしいしトイレが心配
映画やコンサート、長時間座っているのが難しくて落ち着かない

◆その他のシチュエーション
急いでいるのに、各駅停車の電車じゃないと不安
トイレが気になって仕事に集中できない
外で失敗するのが嫌で外にでなくなった

過活動膀胱の症状

過活動膀胱は、主に4つの症状に分類されます。

尿意切迫感

排尿を我慢する余裕がないほど、強い尿意が突然生じる状態

昼間頻尿

起きている間に頻繁にトイレに行き、日中の排尿回数が目安として8回以上の状態

夜間頻尿

就寝中に尿意で目が覚めてしまい、夜間の排尿回数が目安として2回以上の状態

切迫性尿失禁

急に尿意が起こり、トイレに間に合わず尿が漏れてしまう症状

また、過活動膀胱の定義は「尿意切迫感を必須とした頻尿症状を指し、尿失禁の有無は問わない」とされています。

おしっこの悩みは「歳」のせい?

咳やくしゃみ、声を出して笑ったとき、あるいは赤ちゃんを抱きかかえたり、重い荷物を持ち上げようとしたときに「あ、尿が漏れてしまった…」-あなたはそんな経験はありませんか? また、我慢できないほどの強い尿意が急に起こり、トイレに間に合わず、「あっ、またやっちゃった・・・」としっぱいした経験は??

成人女性のおよそ3割が尿漏れを経験しています。 男性に比べて女性に尿漏れが多い理由は、簡潔にいうと、からだの構造や妊娠・出産が関係しています。

したがって、高齢者だけでなく20代、30代の方が尿漏れを経験するのも決して珍しくありません。
我慢できないほどの強い病的な尿意があり、頻尿や失禁を伴う状態を過活動膀胱といい、膀胱と脳の連動がうまく行なわれていない状態を指します。確かに、「加齢」に伴う影響で、膀胱が過敏になり、排尿回数がおおくなったり、尿失禁を起こしたりする場合もありますが、加齢だけでは説明できない原因不明のことも少なくありません。

「恥ずかしい」などの理由で、実際に病院などで受診された方は全体の1割にも達していません。 女性の尿漏れは、体操や生活上の工夫、薬による治療、手術などで改善ができます。

また、昔と違い近年は女性の医師も増えていますので、お困りの方は是非、受診して早めに相談する事をおススメします。

<排尿のメカニズム>

尿は腎臓で作られます。
作られる量は1分間で約1cc、1日で約1000〜1500ccといわれています。

排尿のメカニズム

尿は膀胱に溜まります。膀胱はよく伸び縮み出来る筋肉でできていて、ふくらんだ状態になっています。個人差はありますが、我慢すれば600ccぐらい溜めることも可能です。

排尿のメカニズム

膀胱に尿が半分くらい溜まると筋肉が圧力を感じ、そのシグナルが脊髄を経て脳に伝わります。ここで尿意を感じ『トイレに行きたい』という気持ちになります。
そして脳が「おしっこをする」か「我慢するか」を判断し、膀胱と尿道に伝えます。
脳が「おしっこをする」と決めると、その命令は再び脊髄を経て、膀胱と尿道に伝えられ、排尿となります。

排尿のメカニズム

過活動膀胱の検査・診断方法とは?

過活動膀胱症状スコア(OABSS)と呼ばれる問診票を使います。
日中の排尿回数、夜間の排尿回数、急な尿意切迫感を点数化し、合計値で症状の程度を表します。

過活動膀胱症状スコア表

その他の検査では、
尿検査:血尿や膀胱炎がないか確認します。
残尿測定検査:残尿を確認します。
超音波検査:尿を我慢した状態で膀胱、前立腺を確認します。
排尿日誌:計量カップで尿量を測り、尿意の強さ、失禁の有無、飲水や飲酒など飲んだ水分の量などを2~3日間記録します。水分の摂取量と尿の排泄量、膀胱内に尿が蓄積されている時間などから診断します。

過活動膀胱の治療方法とは?

トレーニングでの治療

トレーニングでの治療は、過活動膀胱は加齢や妊娠・出産を機とした骨盤底筋のゆるみやたるみが原因のひとつです。骨盤底筋のトレーニングを最低でも3ヶ月継続することにより症状を改善する方法があり、更に薬を併用することで、早期改善が期待できます。
トイレにいく間隔を少しずつ長くすることで膀胱容量を増やす膀胱訓練も有効です。
トレーニングについては、下の図を参考に日々活用してみてください。
日々のトレーニングに併せて、1日1日の排尿回数をチェックしてみるのもいいでしょう。

過活動膀胱トレーニング方法

お薬での治療

薬での治療は、「抗コリン薬」という、膀胱の収縮を抑える作用のある薬を服用して治療をします。この薬は、膀胱の筋肉をゆるめ、膀胱が勝手に収縮してしまうのを抑え、尿をたくさんためられるようにするお薬です。
副作用としては、口がかわいたり、便秘や、物がかすんで見えたり、めまいなどが挙げられます。

その他には、「β3作動薬」という、膀胱の筋肉(膀胱平滑筋)における交感神経のβ3受容体を刺激し、筋肉が緩むことで膀胱が広がり尿道が縮みます。膀胱が広がると、尿をより蓄えることができるため、過活性膀胱による症状を改善します。

抗コリン薬とは異なる作用のため、前述の抗コリン薬の一部と併用することで作用が増強する相乗効果も見込めます。

このような副作用が少しでも抑えられるように、さまざまな製薬メーカーでは日々もっと良い新しい薬の開発をしていて、それにご協力いただける多くの治験ボランティアの方を必要としています!

電気刺激治療

電気や磁気で下腹部に刺激を与えて、骨盤底筋の収縮力を強めたり、膀胱や尿道の神経のはたらきを調整したりする治療です。2013年に承認を受けた治療法で、過活動膀胱だけでなく、腹圧性尿失禁にも効果があると言われています。

仙骨神経刺激治療(Sacral Neuro Modulation: SNM)

2017年保険承認

ボツリヌス毒素膀胱壁内注入法

2020年保険承認

また、毎日の生活の上でも、飲料の摂取で少しずつ改善するのもひとつの方法です。1日の中で、昼間の目標排尿量(おしっこの量)は、1,200~1,500ml、夜は300~500mlくらいになるように調節するのが適当な排尿量といわれています。
夜に水分をたくさん摂ると、就寝時間中にトイレに起きてしまうなど夜間頻尿さらに睡眠状態の悪化にもつながってしまうため注意が必要です。

ご家庭内でのトイレ環境の工夫も。ご高齢の方は、自分の部屋をトイレの近くにしたり、夜はポータブルトイレや、症状がひどい方は採尿器などを使用するなどの工夫をお薦めします。

*副作用が少ない、よりよい効果のある新しいお薬を開発中です!*

まとめ

日々、今販売されているお薬よりも、更に効果的なもので、副作用が少ないお薬が開発され、販売に向けて臨床試験(治験)が行われています。 薬はみんなでつくるもの。
みな様方お一人お一人のご協力があって、初めて新しいお薬が販売されるのです。
まだまだ日本では、『治験』に対して正しいご理解を頂いている方が多くいらっしゃらないため、先進国であるにも関わらず、海外の国から比べてお薬に関しては大幅に遅れているのです。
自分の健康状態を保つために、また未来の自分、さらには多くの方々のために、是非治験にご協力ください。

監修者

木村 眞樹子医師

循環器内科・内科・睡眠科医

木村眞樹子医師

東京女子医科大学医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。
妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる様々な人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。

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