【掲載日】2022/12/20

頻尿に効く漢方薬とは?漢方薬の種類も解説!

頻尿とは

尿が近い、尿の回数が多い、という症状を頻尿といいます。日本泌尿器科学会によると、一般的には、起床後から就寝までの期間の排尿回数が8回以上の場合が頻尿と考えられていますが、あくまでも目安であり1日の排尿回数は人によって異なるため、排尿が1日8回以上でも頻尿ではない場合や、7回以下でも頻尿の可能性が高い場合もあります。
また、日中の頻尿症状がなくても就寝中にのみトイレが近かったり排尿回数が多くなったりする夜間頻尿といった症状もあります。

尿漏れとは

尿漏れとは尿失禁とも呼び、自分の意志と関係なく尿が不意に漏れてしまう症状です。
頻尿は尿意を感じることや排尿頻度が増えてしまうとは言え、ある程度排尿の機会をコントロールすることができますが、尿漏れは排尿をコントロールすることができず、外出時やトイレに行けない場面など思わぬところで尿が漏れてしまうため、おむつの常備やQOLの低下などの問題も生じます。

頻尿・尿漏れの原因

排尿とは、体内の不要な水分を尿として体外に排出する行為を指します。頻尿になるということは、体内の不要な水分が多い状態、または膀胱の機能が低下していて尿を溜める事ができない状態となっていることを指します。頻尿になってしまう原因は様々ですが、過度な水分摂取、緊張や不安による心理的ストレス、気候や温度による体温低下、加齢に伴う機能低下などの生活習慣が起因するもの、あるいは排尿機能の低下や泌尿器系疾患が起因するものとして挙げられます。

・生活習慣
暴飲暴食による肥満、加齢に伴う筋力低下、過度なアルコール摂取や喫煙、運動不足、出産経験の有無など。

・過活動膀胱
膀胱が過度に収縮し、尿が膀胱内に十分に溜まっていないのに尿意を感じてしまう症状。

・前立腺肥大
男性特有の症状で、前立腺の肥大により尿道が圧迫され、排尿を妨げる男性特有の症状。

・尿路感染
尿道に細菌が感染することで膀胱炎や前立腺炎などの炎症が起こり、炎症が神経を刺激して排尿に影響を及ぼす症状。

・膀胱の機能低下
加齢による膀胱の伸縮機能や尿を溜める機能低下に伴い、排尿回数が増加。

・薬剤性
降圧剤や糖尿病治療薬には利尿作用が含まれているため、副作用として頻尿症状が懸念。

・心因性
緊張やストレスを感じる場面では、心理的に一時的に頻尿状態になることがある。

頻尿の症状

過活動膀胱

過活動膀胱(OAB)は、何らかの理由で膀胱の収縮運動が過敏な状態となり、膀胱に尿が十分に溜まっていないにも関わらず頻繁に尿意を生じさせてしまう疾患です。
中高年層に多く見られ、肥満や加齢、便秘・高血圧・糖尿病との関連、過度な飲酒、喫煙、運動不足などにより、膀胱の血流低下で膀胱の神経が傷ついたり硬くなったりすることが原因とされています。
過活動膀胱は、主に4つの症状に分類されます。

・尿意切迫感
排尿を我慢する余裕がないほど、強い尿意が突然生じる状態

・昼間頻尿
起きている間に頻繁にトイレに行き、日中の排尿回数が目安として8回以上の状態

・夜間頻尿
就寝中に尿意で目が覚めてしまい、夜間の排尿回数が目安として2回以上の状態

・切迫性尿失禁
急に尿意が起こり、トイレに間に合わず尿が漏れてしまう症状

『過活動膀胱』(OAB)とは?頻尿などの症状と原因・治療方法について

尿漏れの症状

腹圧性尿失禁

重い荷物を持ち上げた時、走ったりジャンプをしたりした時、咳やくしゃみをした時などの衝撃で、お腹に力が入った時に不意に尿が漏れてしまうのが腹圧性尿失禁です。主に女性に多く見られ、骨盤底筋群という尿道括約筋を含む骨盤底の筋肉が加齢や出産の経験に伴い緩むことが原因とされています。

切迫性尿失禁

尿意を感じた途端に尿が漏れてしまったり、トイレが近くにあるにも関わらず間に合わずに漏れたりしてしまうのが切迫性尿失禁です。膀胱に尿が溜まった状態で膀胱が勝手に収縮してしまい、尿意を感じてからトイレに行くまで排尿を我慢するといったコントロールができずに尿もれしてしまうため、特に外出時や乗り物に載っている最中に起きてしまう危険性があります。

溢流性尿失禁

排尿時に尿が完全に出切らず膀胱内に残ってしまい、尿意を感じていないのに残った尿が少しずつ漏れ出してしまうのが溢流性尿失禁です。
前立腺肥大症による尿路の圧迫や、膀胱周りの器官(直腸、子宮など)の手術により膀胱周囲の神経の機能が低下してしまっていることが原因とされています。

頻尿・尿漏れの対処法は?

頻尿、尿漏れの対処法は、水分の過剰摂取、生活面、疾患など様々な原因が考えられるため、まずは自身の頻尿の原因を把握することが大切です。
日中に多く水分を取る習慣がある方は、飲む頻度や量を抑えてみたり、外出前や長時間身動きが取れなくなるような予定の前には控えてみたりするだけでも効果が見られます。
また、過度なストレスや不安を感じない、初めて訪れる場所ではトイレの位置を事前に確認しておくなど、安心感や心にゆとりをもつように努めることも大切です。
その他、尿意を感じてからトイレに行くまでの時間を意図的に少しずつ伸ばし、我慢と排尿のサイクルによって膀胱の収縮性を調整する膀胱訓練や、排泄を促す筋肉である骨盤底筋が緩まないよう、仰向けの状態で腹筋に力が入らないように膣や肛門の筋肉に力を入れ、引き締めたりゆるませたりを繰り返し行う骨盤底筋体操も実践してみましょう。

漢方薬による治療

漢方では、人間の体を動かすエネルギーとして、血液・臓器・神経・ホルモンを司る「気」、全身に酸素や栄養を運んだり、ホルモンバランスの調整をする働きである血液を指す「血」、涙や尿などを含む、体内の60%を占めるあらゆる水分を指す「水」の三要素によって人体は形成されていると考えられています。頻尿や尿漏れなどの排尿障害は、このうちの「水」に異常をきたす「水毒・水滞」によって生じる症状です。
排尿障害の原因は主に腎機能の低下(腎虚)、水毒・水滞、血の滞りによるものであるため、下腹部の不快感や痛みの緩和、炎症抑制、排尿促進など、これらの原因に働きかける作用のある漢方をもって治療をします。
薬剤と漢方との違いとして、薬剤は体の悪い部分にピンポイントで効果を発揮し、症状を抑えることを目的としていますが、漢方は体質そのものに効果を発揮し、緩和や改善を目的として体の機能を整えていくことを目的としています。症状が重い場合には薬剤治療が効果的ではありますが、日常生活に多少の不便を強いられるような症状の場合は漢方での治療法がおすすめです。

頻尿・尿漏れにおすすめの漢方薬

八味地黄丸(はちみじおうがん)

名称の通り8つの生薬からできており、体内の水分代謝を改善して血液循環を促進させる効果により全身が温まり、泌尿器や生殖器・腎臓の機能を活性化させることで、加齢による泌尿器の衰えや頻尿症状、体の冷え、しびれやむくみなどの幅広い症状を改善します。

牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)

「気」「血」のめぐりの悪さや筋肉や骨へ栄養供給が不足することで招く、痛みや気だるさを解消する効果があります。
「八味地黄丸」に生薬を加えたもので、体を温める効果に栄養素や利尿作用が備わっているため、尿量の減少、夜間頻尿、腰痛や下肢のむくみといった足腰の症状にも効果があり、主に高齢者によく用いられます。

猪苓湯(ちょれいとう)

「猪苓湯」は、排尿機能のお悩みに広く使用される一般的な漢方で、尿量を増やして菌を体外に排出させるとともに、膀胱粘膜を保護する力を高める作用があります。膀胱炎や尿道炎による排尿異常や、口の渇きがある人の排尿困難、排尿痛、残尿感などを改善します。

清心蓮子飲(せいしんれんしいん)

「気」の衰えやストレスなどの精神的な疲労からくる排尿症状があるときに使用されます。主な対象として、イライラすると膀胱炎様の排尿障害を起こしやすい方や、些細な心配事で頻繁にトイレに行く方、胃腸が弱く体力が低下した方の残尿感などに効果的です。

小建中湯(しょうけんちゅうとう)

弱った胃腸や、便秘や下痢などの排便症状を改善する漢方の「桂枝加芍薬湯」に「膠飴」と呼ばれる麦芽飴加えたものが「小建中湯」です。腹部を温めて血流を促すことでお腹の冷えや腹部の膨満感などを緩和させるため、虚弱体質の方の頻尿症状や、小児の夜尿症、冷えからくる頻尿症状の改善のほか、緊張してこわばった腹直筋を和らげる効果があります。

まとめ

頻尿、尿漏れ、排尿痛、残尿感などの排尿にかかわる不定愁訴は、排尿機能の低下や器官異常など様々な要因が考えられます。漢方医学では、これらの排尿異常と一見関連しないように見える肩こり・イライラ・冷え・便秘などの全身症状を考慮して適応するように漢方薬を選定します。
その中でも漢方の考えにある気血水の内の「水」に効果があるとされる漢方を処方することで、頻尿症状を改善することが一般的です。

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