【掲載日】2025/05/19
認知症予防の方法は?発症・進行を遅らせるための方法を紹介
認知症の予防が重要な理由は?
認知症とは、脳の機能が衰えることで記憶や判断力、思考力などが低下し、記憶障害(もの忘れ)、言語障害(言葉が出にくい)などの症状が現れ、日常生活に支障をきたす病気の総称です。
認知症は加齢に伴い発症率が上昇するとされており、誰にでも発症する可能性があります。また、現在の医療では根本的な治療法も見つかっておらず、認知症が進行すると介護が必要となることもあり、本人だけでなく家族や周囲の負担が増大するなど、多くの方にとって避けられない問題となることが多いです。
しかし、認知症の発症リスクを抑えたり発症を遅らせたりといった予防策をとることで、生活の質(QOL)を維持し、長く自立した生活を送ることが可能になります。早い段階から生活習慣を見直し、人や社会との積極的な交流、知的活動、刺激のある日常生活を取り入れることが重要視されています。
「認知症予防の10カ条」について
認知症に関する情報提供や啓発活動を実施し、認知症の予防と理解促進を目的とする「公益財団法人 認知症予防財団」団体が掲げている「認知症予防の10カ条」には、認知症の発症リスクを抑えたり、進行を遅らせたりするために推奨される生活習慣や行動の指針が記載されています。
1.塩分と動物性脂肪を控えたバランスのよい食事を
2.適度に運動を行い、足腰を丈夫に
3.深酒とタバコはやめて規則正しい生活を
4.生活習慣病(高血圧、肥満など)の予防・早期発見・治療を
5.転倒に気をつけよう 頭の打撲は認知症招く
6.興味と好奇心をもつように
7.考えをまとめて表現する習慣を
8.こまやかな気配りをしたよい付き合いを
9.いつも若々しくおしゃれ心を忘れずに
10.くよくよしないで明るい気分で生活を
10カ条の項目には「ポジティブな思考」、「人とのコミュニケーション」「様々なものへの興味や好奇心」などの要素が含まれており、これらが充実することで思考や感情が刺激され、認知症予防につながるとされています。
認知症予防に必要な事は?
WHO(世界保健機関)が発表した「認知症予防ガイドライン」には、認知症のリスクを軽減するための5つ取り組みがまとめられています。
1. 外出の機会を増やす
運動やトレーニングはもちろん、近所を散歩したり階段を昇降するなど日常で体を動かし続けたりすることで、常に脳が刺激され活性化します。
2. 人との関わりをもつ
孤独や社会的孤立は認知症リスクを高めるため、家族や友人、地域社会との交流を続けましょう。
3. 生活習慣病を予防・持病を治療する
高血圧、糖尿病、脂質異常症などの脳血管に負担を与える疾患は認知症発症のリスク要因となるため、適切な治療と健康管理が必要です。
4. 聴力低下の確認と対策
加齢に伴う聴力低下は誰にでも起こり得ますが、聴力が低下すると脳に入る情報量が少なくなってしまい、神経細胞の活動が衰える場合があります。
大音量を避け、補聴器を使用するなどで聴力を維持することが認知症予防にもなります。
5. 栄養バランスの良い食事
塩分や糖分方を避け、バランス良く栄養素を接種できる食事を続けることは認知症発症のリスクとなる生活習慣病の予防にもつながります。
また、WHOのガイドラインでは、野菜、果物、魚、オリーブオイルを中心とした、ギリシャやイタリアをはじめとする地中海沿岸の国の伝統的な料理である「地中海食」が、認知症予防に最適な食事の例として提案されています。
世代別認知症の予防法
~30代の予防法
30代までの若年層の方は、規則正しい生活を継続することが基本となります。
学業や仕事など多忙な日々に追われて運動不足や睡眠不足になったり、外食や偏食で食生活が乱れたりなど、日常生活が不規則になりやすい世代となります。
糖分・脂肪の摂取を控えたバランスの良い食事を心がけ、十分な睡眠と運動を生活の中に習慣づけさせることで将来的に脳の健康を守り、認知症リスクを減らすことができます。
40~50代の予防法
40代から50代の中年層の方は、喫煙や飲酒、新陳代謝の低下などが原因となって生活習慣病が発症するリスクが高くなる世代となります。とくに心臓や血管への負担が大きい高血圧や動脈硬化は、脳細胞へダメージを与え認知症を進行させることもあります。
また、様々なストレスを抱えることが多くなり、心身の不調やうつ症状などで脳の神経細胞や記憶、思考を司る部位などに悪影響をもたらすこともあります。
認知症のリスクを高める様々な要因がこの年代から増える傾向にあるため、健康診断を定期的に受診することで自身の健康状態を把握し、体の異変にいち早く気づくことが重要です。
60代~の予防法
60代以降の高齢層の方は、加齢や体力の低下に伴う認知症のリスクが最も高くなるため、認知症予防に取り組むことが特に重要な時期です。
禁煙や禁酒をはじめ、継続的な運動などを積極的に取り入れることで体や脳を活性化させ、発症リスクを抑えることが重要です。
また、認知症の疑いがあるときや不安を感じたときは、早めに医療機関を受診しましょう。現在の医療では認知症を完全に治す治療法は確立されていませんが、万が一認知症でも進行を遅らせたり、症状を和らげたりする方法がいくつかあるため、発見や治療が早いほど進行をゆるやかにできます。
認知症予防の具体例
食事
過度な糖分や塩分は抑えつつ、栄養素が偏らないようバランスよく食事を摂取しましょう。また、飲酒習慣のある方は頻度を減らすのも効果的です。
具体的には、脳の酸化ストレスや老化を防ぎ活性化させる作用を持つビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、DHAなどが含まれた食材が適しています。
食材 | 主な栄養素 | 効果 |
---|---|---|
青魚(サバ、イワシ) | DHA・EPA | 脳神経を保護、血流改善 |
ナッツ類(クルミ、アーモンド) | ビタミンE・オメガ3 | 抗酸化作用、脳の老化防止 |
ベリー類(ブルーベリー、イチゴ) | ポリフェノール | 記憶力向上 |
緑黄色野菜(ブロッコリー、ほうれん草、人参) | ビタミンB群・抗酸化物質 | 脳の炎症を抑える |
良質な油(オリーブオイル) | オメガ3・オメガ9 | 脳の健康維持 |
トレーニング
ランニングや筋力トレーニングなど、一般的に健康に良いとされる運動も効果的ですが、ここでは認知症予防に特化したトレーニングに変わる遊び方を紹介します。
種類 | 具体例 | 効果 |
---|---|---|
対人系 | 麻雀、将棋、神経衰弱 | 記憶力、思考力、コミュニケーション |
脳トレ系 | パズル、クロスワード、数独 | 記憶力、問題解決能力 |
創造系 | 折り紙、楽器演奏、デッサン | 想像力、指先への刺激 |
運動系 | ウォークラリー、ラジオ体操 | 脳と体の連携が強化 |
認知症の予防法は確立されていない
残念ながら、現代の医療では認知症を100%防ぐ方法は確立されていません。
認知症は数十年かけて進行する病気のため、「○○をすれば認知症を防げる」という確実な証拠を得るには、何十年もかけた大規模な研究が必要になります。
また、認知症にも様々な種類があり、多様な原因が絡み合っていたり進行の仕方がそれぞれ異なったりなど、一つの方法で完全に予防するには長期的な研究データが不足しているため難しいのです。
しかし、完全に予防できる方法はないものの、WHO(世界保健機関)や日本の厚生労働省が推奨する「認知症リスクを下げる方法」は明らかになっており、「脳に刺激を与えるような健康的な生活を続けること」が、最も有効な認知症予防と考えられています。
認知症の治療法はある?
認知症を完全に治せる治療法や薬も、残念ながら予防法と同様に現代医療では存在しません。
しかし、認知症は進行性疾患なので、認知症の進行を遅らせて生活の質を維持することを目的とした薬物療法や非薬物療法は存在します。
認知症に対する薬物療法では、情報を伝える神経伝達物質(アセチルコリン)が減少してしまうのを防ぐアセチルコリンエステラーゼ阻害薬や、過剰な興奮により神経細胞にダメージを与えるグルタミン酸の作用をブロックするNMDA受容体拮抗薬などがあります。
認知症に対する非薬物療法には、脳の活性化や五感を刺激させるような運動、リハビリ、人とのコミュニケーションやリラクゼーションなどがあります。
治験ボランティアに参加してみませんか?
医学ボランティア会JCVNは、製薬メーカーや治験実施機関から治験ボランティアの募集依頼を受け、当会に入会いただいたボランティア会員の皆さまへ、治験のご紹介とご案内をサポートさせていただくために設立された団体です。
JCVNに登録頂いた会員の皆さまには、それぞれの年齢やお住まいの地域、健康状態などによって「くすり」の治験や健康食品・化粧品モニター、医療機器の使用モニターなど多岐に渡る様々なモニター・治験・臨床研究等の案件を、主にメール配信にてご紹介しております。
登録料および利用料や年会費は一切ございません。どなた様もお気軽にご登録いただけます。
まとめ
認知症は加齢と共に発症リスクが増す病気なので、発症前の予防や発症後の進行を遅らせるための対策が重要です。
完全な認知症の治療法は未確立ですが、規則正しい生活や適度な運動、バランスの取れた食事を日々の生活習慣に取り入れ、日常的に脳が刺激され活性化することで認知症予防に大きな役割を果たします。
早期の気づきと適切な対策を講じることで若々しい脳の機能を保ち、高齢者になっても生活の質を維持しましょう。
アルツハイマー型認知症の基礎知識一覧
- そのもの忘れ、もしかしたらアルツハイマーかも?
- 認知症予防の方法は?発症・進行を遅らせるための方法を紹介
人気の記事
治験ボランティア登録はこちら
その他の病気の基礎知識を見る
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)
- PMS(月経前症候群)
- あせも
- アトピー性皮膚炎
- アルツハイマー型認知症
- アレルギー
- インフルエンザ
- ウイルス
- おたふく風邪
- がん
- クラミジア
- コレステロール
- しびれ
- とびひ
- ドライアイ
- ニキビ
- ノロウイルス
- はしか
- メタボリックシンドローム
- めまい
- リウマチ
- 不妊症
- 体重減少
- 便秘
- 前立腺肥大症
- 副鼻腔炎
- 口内炎
- 咳
- 喉の渇き
- 夏バテ
- 子宮内膜症
- 子宮外妊娠
- 子宮筋腫
- 心筋梗塞
- 手足口病
- 新型コロナウィルス
- 更年期障害
- 気管支喘息
- 水疱瘡
- 水虫
- 熱中症
- 物忘れ
- 生活習慣病
- 疲労
- 痛風
- 糖尿病
- 耳鳴り
- 肝硬変
- 脂肪肝
- 脂質異常症(高脂血症)
- 逆流性食道炎
- 過敏性腸症候群(IBS)
- 過活動膀胱(頻尿・尿漏れ)
- 関節痛
- 難聴
- 頭痛
- 頻尿
- 骨粗しょう症(骨粗鬆症)
- 高中性脂肪血症
- 高尿酸血症(痛風)
- 高血圧
- 鬱病(うつ病)