【掲載日】2022/08/05

体重減少の原因と考えられる病気とは?

体重減少の原因

体重は食事などで摂取するエネルギーと、運動などで消費するエネルギーのバランスを示す簡易的な指標です。体重の減少は、摂取エネルギーの減少、消費エネルギーの増加、あるいはその両方が起きているものと想定されます。
肥満予防や体重調整のためのダイエットは、食事制限や運動による脂肪燃焼などを基軸としてエネルギーのバランスを意図的に変動させますが、食事量や運動量を変えていないにも関わらず体重減少が続く場合は、身体的な異常や病気によって体重減少が起こっている可能性があります。ホルモンバランスや生活環境の変化による一時的な体重変動の可能性もありますが、体重のコントロールを意図していない状況で6~12カ月間で体重が4.5kg、もしくは元の体重の5%以上減少した場合に、医学的な体重減少として扱われます。
体重減少を引き起こす要因は数多くありますので、不自然な体重減少が見られた場合は、以下に該当する項目がないか自己診断してみましょう。

栄養不足

偏食により摂取する栄養素が補えきれない場合や、食欲低下、咬合力の低下などにより食事量が減り、必要なエネルギーが不足している状態を低栄養と呼びます。特に60歳以上の高齢者に見られ、体を動かすためのエネルギーや、体を作るタンパク質が不足した状態が続くと、体重の減少や脱水症状、免疫力の低下などを引き起こすことがあります。

消化不良・吸収不良

食事により摂取した食物は、胃液や消化液で体内に吸収しやすいよう十分に分解され、小腸や大腸といった消化器官から水分や栄養素が吸収されます。胃腸が弱っていると消化液の分泌量や吸収機能が低下してしまい、膨満感や食欲不振が表れ体重減少へとつながります。

代謝・内分泌異常

人間が活動するためのエネルギー源となるブドウ糖は、膵臓から分泌されるインスリンにより体内の細胞に行き渡り、エネルギーとして利用されます。糖尿病などでインスリンの分泌や働きが低下してしまうと高血糖状態となり、食欲亢進と体重減少を起こします。

炎症性疾患などによるエネルギー消耗

悪性腫瘍などの重篤な疾患、関節リウマチや結核などの炎症性疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)といった病状は、全身に長期間炎症をもたらし、徐々に身体をむしばんでいく進行性の病気です。 そのため筋肉や脂肪といった体内組織が異常に代謝され、代謝に必要な酸素やエネルギーの生成が欠乏し、体重減少を起こします。

サルコペニア・フレイル

サルコペニアは「加齢による筋肉量の減少」、フレイルは「虚弱」を意味します。加齢とともに、筋肉量は減少する傾向にあり、筋肉を維持するためには、たんぱく質の摂取や適度なトレーニングが不可欠です。食事量が減少し、体力低下に伴い運動をしない状態が継続すると、サルコペニアとなり、さらに身体能力も低下するフレイルへと進行します。さらに筋肉に含まれる水分も徐々に減少し、次第に体重の減少を引き起こします。

どんな時にどんな人がなりやすい?

食事量や体力、胃腸機能の低下は加齢からくるものが多く、先述の低栄養や消化・代謝不良のほか、嚥下障害や消化器官疾患、悪性腫瘍(がん)などの体重減少につながる病気は、特に高齢者がかかりやすい特徴があります。また、若年層の方であっても糖尿病や甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)のような病気のほか、うつ病や摂食障害などの不安障害や精神的な疾患により、体重が減少してしまうことがあります。また、いずれの疾患であっても、治療薬による副作用で食欲不振となり、体重減少を引き起こすこともあります。

主な病気の症状と特徴

拒食症

拒食症は、医学的に神経性食欲不振症とも呼ばれ、肥満体型への過剰な嫌悪感や、客観的に痩せている容姿であるにも関わらず、自身が描く理想的な体型と現状がかけ離れていると偏ったイメージを持ってしまうことで、常識を逸した食事制限を行い極限まで体重が減少した状態を指します。精神的な面やこころの問題を抱えている場合に体重減少として表れてしまう摂食障害のひとつとされています。

うつ病

憂うつ、気分が重いといった抑うつ気分や、何をしても楽しくない、何にも興味がわかないといった喪失感が2週間以上毎日続く場合、うつ病と診断される目安となります。
疲労感が溜まっていても安眠できない、または、一日中眠気に襲われた感覚がある、寝付けず不眠症外に陥るといった状態とともに食欲減退がみられ、食事の量が低下して体重減少を来たします。

糖尿病

生活習慣病の一つで、膵臓から生成されるインスリンの分泌や働きが低下し、常に血糖値が高い状態が続く症状です。インスリンが不足すると摂取したブドウ糖を栄養源として体内に取り込むことができなくなりエネルギーを喪失してしまいます。その結果、脂肪や筋肉にあるたんぱく質を代替利用するため、食欲亢進を伴い徐々に体重減少を来たします。

バセドウ病(甲状腺機能亢進症)

甲状腺ホルモンが過剰に分泌され新陳代謝が活発になり、甲状腺機能が亢進した状態になる病気です。甲状腺ホルモンは全身の代謝を調節するホルモンであり、過剰な分泌によって全身の代謝が亢進されます。そのため、消費エネルギーが摂取エネルギーを上回り、体力の消耗が激しく、疲れやすい・汗をかきやすいという症状に伴い体重減少がみられるようになります。

慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍

胃の痛みやもたれ、吐き気、食欲不振などの消化器症状が見られ、ストレスや不眠、暴飲暴食、ピロリ菌感染などが原因とされています。胃潰瘍の場合は食後、十二指腸潰瘍では早朝や空腹時にみぞおち周辺が痛みます。また、十二指腸潰瘍では食事をとると痛みが軽減することが特徴です。痛みや不快感に伴い食欲が低下し、体重減少を来たします。

潰瘍性大腸炎

大腸の粘膜に炎症が起き、潰瘍やただれが発症します。主な症状として、下痢、粘血便があり、重症になると発熱や貧血などの全身症状がみられ、20代~40代の若年層に多く発症する傾向があります。大腸からの水分吸収が困難になるため、下痢による脱水状態や腹痛による食欲低下を伴う体重の減少がみられます。

悪性リンパ腫

白血球の成分の1つであるリンパ球は、他の細胞と結束してウイルスなどの病原体やがん細胞などの異物を攻撃する作用がありますが、このリンパ球ががん化してしまうと異常増殖してしまい、
首やわきの下、足の付け根などリンパ節の多い箇所に腫れやしこりがあらわれ、進行するとともに発熱、体重の減少、顕著な寝汗などの全身的な症状がみられるようになります。リンパ腫が消化器やその周辺に広がってしまうと消化器症状や食欲低下がみられ、体重減少を来たすようになります。

胃がん

胃がんは、胃の壁の内側をおおう粘膜の細胞が塩分の過剰摂取やピロリ菌感染などの要因でがん細胞となり、無秩序に増殖していくことで発生します。初期症状がほとんど見られないために定期検査を受けていない場合は早期発見が難しく、進行すると胃痛、胸やけ、嘔吐、吐血などの症状が見られるようになります。それらの症状により食欲不振や体重減少を来たします。

大腸がん

大腸がんとは大腸の一番内側にある粘膜に発生するがんで、日本国内の半数以上の症状例ではS状結腸と直腸に発生するとされています。良性のポリープが大きくなる過程でがん化するタイプと、粘膜の正常な細胞ががん細胞に変異するタイプがあり、発症の原因として、運動不足、野菜や果物の摂取不足、肥満、飲酒といった生活習慣に関わるリスク要因が挙げられています。
発症初期の段階では自覚症状はほぼ見られず、症状の進行とともに血便、便秘、下痢、腹痛などの便通障害や食欲不振があらわれ、体重減少を来たします。

肺結核

結核菌に感染することにより、咳、痰、血痰、胸痛などの呼吸器関連症状と、発熱、冷汗、だるさ、やせなどの全身症状が2週間以上続きます。似たような呼吸器系疾患として挙げられる肺炎やインフルエンザと比較すると進行速度はやや遅く、初期症状も風邪と誤認してしまうこともあります。症状が進むと呼吸困難や倦怠感をともない、食欲不振や体重減少を来たします。

まとめ

摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが崩れることで体重減少が起こりますが、ダイエットや食事制限をしておらず、不自然な体重の減少が見られる場合は体の異常や病気が関連している場合があります。特に食欲不振を感じていたり、食事量を変えていなくても体重が減ったりしている場合は、体内の器官の作用が正常に働いていない可能性がありますので、病院にある消化器科や循環器科などで一度検査を受けてみましょう。

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