【掲載日】2024/12/26
副鼻腔炎(蓄膿症)の原因・症状・治し方・治療薬
副鼻腔炎(蓄膿症)とは
鼻で呼吸する際に空気が通過する通り道を「鼻腔」と呼び、その周囲には「副鼻腔」と呼ばれる空洞が、左右それぞれに4つ存在します。
副鼻腔にたまった鼻水は、通常、鼻とつながっている自然口を通って副鼻腔の外に出ていきますが、副鼻腔が炎症し、鼻の粘膜が腫れたり粘度が高い鼻水が固まったりしてしまうと、この自然口が塞がってしまい副鼻腔内の鼻水や膿がだんだんと溜まってしまいます。
この症状を副鼻腔炎(蓄膿症)と呼んでいます。
副鼻腔内に炎症が起こる原因は、ウイルスや細菌、ハウスダストや花粉、たばこの煙の刺激といった外的要因やアレルギーによるものが大半ですが、鼻中隔湾曲症や鼻腔内のポリープなどの鼻の構造異常によるものでも副鼻腔炎の原因となる場合があります。
また、副鼻腔炎には種類があり、発症から4週間以内の場合は「急性副鼻腔炎」、症状が3ヵ月以上続く場合は「慢性副鼻腔炎」と診断されます。
急性副鼻腔炎とは
主に風邪の原因となる細菌やウイルスの感染が原因となって、鼻づまり、黄色や緑色の鼻水、頭痛などの症状が突然発症します。
症状は軽い場合が多く、1〜4週間程度で自然に治るケースが多いですが、細菌による二次感染を生じた際には抗生物質を含めた薬物治療、鼻詰まりなどの症状が重い場合には蒸気吸入や鼻洗浄などの自宅でできるケアが必要となります。
慢性副鼻腔炎とは
蓄膿症と呼ばれる症状のほとんどが慢性副鼻腔炎に該当します。
慢性副鼻腔炎は鼻づまりや膿を含んで色味を帯びた鼻水などの症状が3か月以上続く場合と医学的に定義されており、鼻詰まりによる顔面のむくみや嗅覚低下などの症状が見られることもあります。
急性副鼻腔炎のように感染症が原因となって発症することもありますが、アレルギーや鼻中隔のゆがみ(鼻中隔弯曲症など)、ポリープ(鼻茸)といった生まれ持った体質や鼻の構造的な問題が原因となっているケースが多いです。
そのため、薬物治療や鼻洗浄を続けるだけで症状が改善しない場合は、内視鏡を使った副鼻腔手術で鼻の構造そのものを改善することもあります。
副鼻腔炎(蓄膿症)の原因
副鼻腔炎(蓄膿症)は、何らかの原因で鼻腔と副鼻腔をつなぐ通り道(自然口)が塞がれ、分泌物が排出されなくなり、繁殖した細菌やウイルスによる炎症がきっかけとなって発症します。
自然口が塞がれてしまう原因にはどのようなものがあるのでしょう?
感染
副鼻腔炎の最も一般的な原因であり、風邪のもととなる細菌やインフルエンザ、アレルギー保有者の場合は真菌(カビ)などが副鼻腔に侵入することで炎症が起こると、鼻の粘膜が腫れて副鼻腔の通りが悪くなります。
アレルギー
花粉症やハウスダストなどでアレルギー反応を示す方は、鼻粘膜が腫れやすく急性副鼻腔炎を引き起こす場合があります。
鼻の構造的な問題
鼻の仕切りが曲がっている鼻中隔弯曲症や、鼻や副鼻腔内にできる良性のポリープ(鼻茸)の場合、鼻腔内や副鼻腔の通り道が狭くなり、鼻水などの排出機能が低下して炎症を繰り返しやすくなります。
また、上の奥歯の虫歯や歯周病が進行すると、炎症が上顎まで波及してしまい、副鼻腔周辺が炎症を起こす場合もあります。
環境要因
風邪を引きやすい寒い季節や乾燥、タバコの煙や粉塵の多い場所、強く鼻をかんでしまうことなどは鼻の粘膜を傷つける要因となります。
副鼻腔炎(蓄膿症)の症状
副鼻腔炎(蓄膿症)は、鼻の奥にある副鼻腔に炎症が起きることで、鼻に関連するさまざまな不快な症状を引き起こす病気です。適切な治療を受けないと症状が慢性化し、長期間悩まされることも少なくありません。
鼻漏、後鼻漏
いわゆる鼻水のことを指し、のど側に流れこんでくるものを後鼻漏と呼びます。
膿が混じって黄色や緑色になり、粘り気があるのが特徴で、 いくら鼻をかんでも鼻詰まりが解消されないような不快感が残ります。
鼻閉(鼻づまり)
鼻の粘膜が腫れて自然口が塞がれたり、鼻ポリープ(鼻茸)や鼻中隔弯曲症などで圧迫感を感じたりすることがあります。
顔の痛みや圧迫感
副鼻腔が炎症や腫れにより鼻の通り道が狭くなってしまうと、粘液や膿が副鼻腔内にたまり、鼻周辺に圧力がかかります。 また、鼻周辺には神経が集中しているため、副鼻腔内の粘膜が炎症を起こすと目の周りや顔面部が痛むことがあります。
副鼻腔炎(蓄膿症)の検査
副鼻腔炎の疑いがある場合は耳鼻科を受診しましょう。
問診では発症状況や症状の経過を確認し、症状に応じた検査をすることで、ほぼ診断することができます。
内視鏡検査
内視鏡検査は、鼻腔や副鼻腔の状態を直接観察できるため、副鼻腔炎の診断に非常に適した方法です。
細く柔軟な内視鏡を鼻腔内に挿入し、主に粘膜の炎症や腫れ、膿の有無、副鼻腔と鼻腔をつなぐ部分の閉塞状況をカメラに映し出される画像で確認します。
膿性鼻汁や鼻の変形やポリープの有無などは容易に視認が可能なため、発症期間と照らし合わせることで急性副鼻腔炎か慢性副鼻腔炎かを評価する手がかりとなります。
また、この検査は局所麻酔を使用して短時間で行われ、痛みは少ないのが特徴です。
ただし、鼻腔や副鼻腔が構造的に完全に塞がっている場合には、内視鏡検査のみでの診断が困難なため、別の方法を採用する場合もあります。
CT
CT検査は、内視鏡検査だけでは判別できない詳細な鼻腔内の状態を評価するために用いられる画像診断法です。CT装置からX線を照射して副鼻腔を断層撮影することで、粘膜の腫れや膿の蓄積、副鼻腔の閉塞状況、骨の異常などを正確に把握できます。これにより、内視鏡では確認できない深部の副鼻腔の状態を評価することが可能となります。
急性副鼻腔炎が疑われる場合では、膿や炎症の範囲を確認することで重症度を判断できます。一方、慢性副鼻腔炎が疑われる場合では、炎症が慢性化している粘膜の厚みや、鼻ポリープの有無、骨の形状に異常がないかなどを詳しく調べることで診断を補助します。
CT検査は短時間で詳細な情報を得られるため、診断精度を高める重要な手段です。
ただし、CT検査はX線を使用するため放射線被曝を伴い、必要性を十分考慮した上で実施されます。最新のCT装置では被曝量は最小限に抑えられているものの、他の検査結果と合わせて総合的に診断が行われることが一般的です。
レントゲン
レントゲン検査は、副鼻腔内の異常を確認するため方法の一つです。先に紹介したCT検査と同様にX線を使用し、副鼻腔に膿や液体が溜まっているか、粘膜が腫れているか、骨の異常があるかを画像として映し出して診断します。
多角的に撮影して高い解像度で詳細を確認できるCT検査と異なり、レントゲン検査は単一方向からでしか撮影することができずCT検査と比べると解像度が低いために、鼻の細かい構造や形状の変化を検出することが難しい場合があります。
ただし、レントゲン検査はX線の使用量が少なく放射線被曝のリスクが低いことに加え、短時間で検査を実施することができ、費用や身体的負担が少ない点が特徴です。
副鼻腔内で粘膜が腫れている場合や膿が溜まって空洞が埋まった状態では、レントゲン画像に白く写ります。
詳細な診断を必要としない場合には、簡便で低負担なレントゲン検査が推奨されることがあります。
副鼻腔炎(蓄膿症)の治療方法・治療薬
副鼻腔炎による慢性的な鼻づまりや頭痛、鼻水が止まらないといった症状に苦しむ人は少なくありません。適切な治療を受けることで症状の軽減や完治が期待できるため、どのような治療法や薬があるのか詳しく解説します。
①抗生物質
細菌感染が原因となっている急性副鼻腔炎の治療には、抗生物質が推奨されます。
抗生物質は細菌の増殖や働きを抑え、炎症や膿の蓄積を軽減する効果がありますが、ウイルスが原因の副鼻腔炎には抗生物質は効果がありません。
また、鼻の構造的な問題が原因となって発症している慢性副鼻腔炎に対しては、薬の作用による直接的な効果がないため、細菌の感染予防や炎症緩和を目的として少量を長期投与することで、副鼻腔の粘膜の状態改善や炎症の鎮静を図ることができます。
②マクロライド系抗生物質
マクロライド系抗生物質は、特に慢性副鼻腔炎の治療に効果的な薬剤で、代表的なものとしてクラリスロマイシンが挙げられます。
殺菌作用は弱いため、化膿止めを目的とした用途ではなく免疫機能を活性化したり増強させたりする免疫賦活剤として用いられ、免疫調整や炎症の抑制、粘液分泌の減少など、鼻粘膜の回復をサポートする効果があります。
通常の服用量の半分を数か月にわたって服用する少量長期投与療法、副作用のリスクを軽減して長期間服用できる特徴があり、一般的に2〜4週間で効果を感じ始め、2〜3ヶ月をかけて最大の改善が得られます。抗生物質であるにもかかわらず、副作用のリスクを抑えながら、炎症を抑える効果がある、に安全で効果的な治療方法のひとつでもあります。
商品名 | クラリスロマイシン錠200mg「サワイ」 |
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効能・効果 | 副鼻腔炎、中耳炎、喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎など |
薬のタイプ | 錠剤 |
用法・用量 | 1日400mg(力価)を2回に分けて経口投与(成人) |
③去痰薬
副鼻腔炎になると粘り気の強い鼻水が鼻の奥に溜まってしまい、副鼻腔の内部にある鼻水や細かなごみを鼻の外へ排出できず、鼻の粘膜の状態をさらに悪化させてしまいます。
この状態を改善するために使用される去痰薬は、鼻腔や副鼻腔内に蓄積した粘液や痰を排出し、症状の緩和や治療を助けるために用いられます。
代表的な成分には「カルボシステイン」や「アンブロキソール」があり、カルボシステインは痰の粘りをとり分泌量を減少させることで鼻腔や副鼻腔の詰まりを軽減します。一方で、アンブロキソールは粘り気のある気道粘液を薄め、痰を出しやすくする作用があります。
商品名 | ムコダイン錠250mg |
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効能・効果 | 副鼻腔炎、上気道炎(咽頭炎、喉頭炎)、急性気管支炎、気管支喘息など |
薬のタイプ | 錠剤 |
用法・用量 | 1回500mgを1日3回経口投与(成人) |
④点鼻薬
副鼻腔炎で使用される点鼻薬には主にステロイド成分が含まれており、鼻の中に直接噴射するタイプが一般的で、アレルギー反応や炎症を抑える効果、水分を調節する効果などで局所的な炎症を鎮める効果が期待できます。
ステロイド剤が含まれているので副作用が気になると思いますが、近年の点鼻薬はほとんど鼻以外には作用せず、体内で作用する割合はごくわずかで1%以下と言われているので、副作用を心配せずに使えるようになっています。
鼻水や鼻づまりがひどい場合には点鼻薬が炎症部分に届きにくい場合があるので、経口薬の抗生物質で鼻詰まりを抑えたあとに点鼻薬を使用するなど、併用することでさらなる効果が期待できます。
商品名 | チクナインC 点鼻スプレー |
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効能・効果 | 副鼻腔炎、急性鼻炎、アレルギー性鼻炎、鼻づまり、鼻みずなど |
薬のタイプ | 点鼻薬 |
用法・用量 | 1日1~5回 1~2度ずつ噴霧(7歳以上) |
⑤ロイコトリエン受容体拮抗薬
この薬は、気道や鼻粘膜の炎症を引き起こす化学物質であるロイコトリエンに対し、アレルギーや炎症反応を起こし続けないように作用をブロックすることで症状を抑える効果を示します。
特に、鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎や気管支喘息を併発している場合に有効であるとされています。
モンテルカストはロイコトリエン受容体拮抗薬に分類される薬剤のひとつであり、1日1回の処方で済むため副作用も比較的少なく、食事の影響を受けにくい点が利便性を高めています。また、ステロイド点鼻薬と併用することで、好酸球の増加や鼻ポリープの進行を抑える相乗効果が期待できます。
商品名 | モンテルカスト錠10mg |
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効能・効果 | 副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息など |
薬のタイプ | 錠剤 |
用法・用量 | 1日1回就寝前に経口投与(成人) |
副鼻腔炎(蓄膿症)の予防
副鼻腔炎は、日常生活でのちょっとした工夫や注意で予防が可能です。特に、鼻や喉の健康を保つために適切な衛生習慣や環境対策を取り入れることが重要です。以下では、副鼻腔炎を防ぐための具体的なポイントを解説します。
鼻洗浄
副鼻腔炎になった際の鼻洗浄は、鼻洗浄は鼻腔内の粘膜を清潔に保ち、炎症や不快な症状を軽減するための有効な方法です。
副鼻腔炎になると、副鼻腔の内部に鼻水や鼻に入ったホコリなどが貯まってしまっている状態なので、鼻洗浄により鼻腔にたまった膿や異物、アレルギー物質などを取り除くことで、副鼻腔内部の粘膜の状態を改善します。
鼻洗浄は生理食塩水や専用の洗浄液を用意し、専用の鼻洗浄器具やボトルを用いるのが一般的です。適切な体勢で洗浄液を片方の鼻孔から流し入れ、反対側の鼻孔から排出することで、鼻腔全体を洗い流します。洗浄液は体温に近い温度(約37℃)に調整することで、不快感を軽減できます。
注意点としては、洗浄液を正しく準備することが重要です。市販の生理食塩水や専用製品を使用し、自己調合する場合は塩分濃度を約0.9%に調整する必要があります。また、過度な頻度での洗浄は粘膜を傷つける可能性があるため、頻繁に鼻洗浄する必要がある場合には医師の指導に従って行うことが推奨されます。
加湿する
鼻が乾燥してしまうと、副鼻腔炎で粘度が高くなった鼻水が更に硬くなってしまい、鼻詰まりを悪化させてしまいます。
加湿された環境下では鼻の粘膜が保湿され、粘液が柔らかくなり排出が促進されて鼻詰まりが軽減するので、加湿器や蒸気を発生させるスチーム、温かいシャワーを浴びるなどの加湿効果も、副鼻腔炎の症状を緩和させる方法のひとつになります。
禁煙する
喫煙によって発生する有害物質は、鼻粘膜や副鼻腔の繊毛の働きを低下させ、粘液が蓄積して炎症を引き起こしやすくなります。
禁煙することでこれらの状態を簡単に改善することができるので、副鼻腔炎になった場合はなるべく喫煙を控えるようにしましょう。
まとめ
副鼻腔炎による症状が軽度な場合でも、放置すると慢性化するリスクがあるため、早めの診断と適切な治療が必要となります。
自宅でも出来る予防法や医師による治療で症状の改善が期待できるので、健康な鼻呼吸を取り戻すためにも、早めに行動することをおすすめします。
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