【掲載日】2022/08/16   【最終更新日】2022/10/28

子宮筋腫はどんな病気?簡単に症状や兆候、原因や治療・予防に関して

子宮筋腫とはどんな病気?

子宮筋腫とは、子宮の筋組織にできる良性腫瘍のことです。婦人科では比較的若い方から閉経後の方まで高頻度に見られる疾患で、厚生労働省の調査結果(2011年)では、30~40代では4人に1人が筋腫をもっているとされ、2017年の患者数調査では推定受診患者数は11万6000人という結果が出ています。特に症状がなく健康診断で偶然見つかることも多くあります。それほど大きくないものであれば多くの場合は経過観察程度で特に治療を要することはありません。しかし、腫瘍の大きさやできた場所により、何らかの症状を伴い生活に支障が出る場合には治療が必要となることもあります。
この筋腫はできた場所により、粘膜下筋腫(子宮の内側)、筋層内筋腫(子宮の筋肉の中)、漿膜下筋腫(子宮の外側)に分けられ、筋腫の成長には女性ホルモンが関係することから閉経後は小さくなる傾向があります。

子宮筋腫の主な症状とは?

過多月経

月経中に多量の出血がある、レバーのような血の塊が出るといった症状を過多月経といいます。経血量でいうと140ミリリットル以上ですが、目安として1~2時間ごとにナプキンを交換する必要がある場合は過多月経かもしれません。他に、出血量が多く常にナプキンとタンポンを同時に使用している方や、月経中に2.5cm以上の血の塊が混じる場合、鉄欠乏性貧血の方も過多月経となることがあります。日常生活に支障がある場合は早めに婦人科を受診して、過多月経の原因を調べてもらいましょう。過多月経は子宮筋腫に限った症状ではありませんが、子宮筋腫が原因であった場合は、治療が必要かどうか医師と相談するとよいでしょう。

過長月経

月経時と変わらない量の出血が8日以上続く場合を過長月経といいます。原因はいくつかありますが子宮筋腫や子宮腺筋症などにより、子宮そのものに何らかの異常(形や大きさ)がある場合に月経期間が長くなることがあります。子宮筋腫などが原因で月経期間が長くなった場合は、月経量の増加も同時にみられることが多いです。

貧血

過多月経や過長月経により、出血量が多い場合は貧血に注意が必要です。普段通りの生活をしていても、顔色が悪く立ちくらみや動悸、息切れ、倦怠感などを感じることが増えてきた人は貧血の可能性がありますので、お近くのクリニックで貧血検査を受けてみるとよいでしょう。
貧血改善のために薬を服用しますが、子宮筋腫による過多月経や過長月経が原因で貧血がひどい場合は、貧血の薬だけでは症状の改善がみられないこともあります。その場合は子宮筋腫自体の治療を検討します。

下腹部の痛み

子宮筋腫があることで、月経時の下腹部痛が強くなることがあります。筋腫のできる場所や個人差がありますが、ズーンとした重みを感じる鈍痛や、陣痛のように押し寄せる強い痛みを感じる場合もあります。また、月経困難症と呼ばれる症状で、下腹部痛以外に発熱、頭痛、吐き気、食欲不振、憂うつなどを併発することもあります。
下腹部痛は、子宮筋腫に限った症状ではなく、痛みが強い場合は子宮内膜症や子宮腺筋症の可能性も考えられますので、気になる場合はクリニックを受診して原因を調べてみましょう。

不正出血やおりもの

粘膜下筋腫(子宮の内側にできた筋腫)では、月経期間以外でも子宮内膜から持続的に出血(不正出血)することがあります。また、子宮内膜にただれができ、分泌液が混ざった水様のおりものが増えることがあります。
不正出血やおりものの異常はがんをふくめた子宮筋腫以外の婦人科に多い症状なので、異変を感じたら早期に婦人科を受診しましょう。

子宮筋腫の原因

筋腫が発生するはっきりとした原因はわかっていませんが、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)の影響で子宮筋腫が大きくなることがわかっています。赤ちゃんから小学生までの子どもには全くみられず、高校生や大学生などから徐々に発症し、ホルモンの分泌が盛んな成熟期である30代後半から40代に急増します。女性ホルモンの作用によって大きくなっていくため、月経のある間は少しずつ大きくなり続け、閉経後は少しずつ小さくなりますが、完全に消失することはありません。

子宮筋腫の検査・診断について

問診

初診時には、まず医師からの問診を受けます。いつから症状が出ているか、月経の状態や自覚症状、今までの病歴も含めて尋ねられます。子宮筋腫の可能性がある場合は、過多月経、過長月経、貧血の有無、頻尿、便秘、月経痛、おなかの張りなどについて聞かれます。それまでの自分の体調や生理周期・症状などをまとめておくと良いでしょう。

超音波検査(エコー検査)

超音波検査は、超音波をあてて、はね返る反射波が画像処理され、モニターに映し出されるしくみで、おもな子宮筋腫の大きさや位置、数などに加え、卵巣に異常がないかも確認できます。ほとんどの婦人科では経腟法と呼ばれる細いスティックタイプのプローブを腟に挿入して子宮や卵巣を観察する方法が用いられます。子宮筋腫以外の子宮腺筋症、卵巣腫瘍、子宮肉腫などと鑑別が難しい場合があるので、超音波検査で何らかの異常が発見された場合は、追加でMRI検査を行うこともあります。

内診

腟内に医療用の手袋をした指を入れて卵巣や子宮の状態を確認する検査方法で触診とも呼ばれます。子宮の大きさ、硬さ、子宮筋腫の有無、子宮筋腫の位置と大きさ、数、卵巣の硬さと大きさ、周辺臓器の癒着の有無などを調べます。子宮筋腫がある場合、子宮の形がボコボコとしていたり、硬く盛り上がっていたりします。小さいものや内側にある筋腫だと内診だけでは発見できないことが多いため、経腟超音波検査を併用して行うことが多いです。また、内診の際に、子宮頸がんの検査を行うことができます。検査は子宮の細胞をこすり取って悪性の細胞の有無を調べる細胞疹で、子宮頸がんの検査をしばらく行っていない方の場合は、医師から検査のついでに一緒に行うことをお勧めされることもあります。

MRI検査

内診や超音波検査で子宮筋腫など何らかの異常が発見された場合、更に大きさや正確な位置を調べる際に行う検査です。MRI(磁気共鳴画像診断)検査は、強い磁気と電波を利用して縦横斜め、さまざまな体の断面を画像化します。超音波検査より精度が高く、広範囲の詳細な画像が得られます。

子宮筋腫の治療方法は?

子宮筋腫はそのほとんどが良性腫瘍となりますので、特に症状がない場合やそこまで大きいものではなく生活に支障が出ていない場合は経過観察のみとなり、必ずしも治療が必要というものではありません。ただし、子宮筋腫によって過多月経や過長月経、貧血など生活に影響を及ぼす場合には治療(薬物療法または手術療法)を検討する必要があります。

薬物療法

①対症療法
子宮筋腫によっておこる症状を薬によって軽減します。
・鎮痛剤:強い月経痛が起こった時に痛みを抑える目的で使用します。
・鉄剤:貧血の対策として使用します。

②ホルモン療法
子宮筋腫の成長を促すとされているエストロゲンを調整することにより子宮筋腫の成長を妨げる、または症状を和らげる治療法です。ホルモンを直接コントロールするため高い効果が期待できる一方、ホルモンバランスが不安定になって副作用をきたすことがあります。

③GnRHアナログ製剤(GnRHアゴニスト)
エストロゲンの分泌を抑え、子宮筋腫を小さくする治療法で閉経と似た状態になるため、月経が止まり貧血症状も改善します。治療を始めると2-4ヵ月で筋腫は半分ぐらいの大きさになりますが、子宮筋腫が消えることはありません。閉経時と似た状態になるため、急激な更年期症状などの副作用があり、長期使用すると骨粗鬆症が生じる可能性がある為、連続投与は6か月間までとされています。また、GnRHアナログ製剤の使用を中止すると筋腫は3か月ほどで元の大きさへと戻ります。
使用目的としては、手術前に子宮筋腫を縮小させ手術をしやすくする目的の他、閉経が近い年齢の場合は閉経までの時間稼ぎとして使用される場合もありますが、6か月使用後も閉経にならない場合は別の治療法の検討も必要です。
点鼻薬・皮下注射剤・経口剤など数種類あるため、どのタイプにするかは医師と相談して決めます。

④低用量ピル
妊娠時と同じ状態を作り出し、排卵を抑えるホルモン剤です。副作用として血栓症、一時的な吐き気、体重増加などがおこりえます。

手術療法

①子宮全摘術
子宮筋腫を含めて子宮全体を切除する手術です。
子宮を残さないことで子宮筋腫の再発の不安はなく、子宮に関係する他の病気の心配もなくなるのは利点といえるでしょう。②の方法より手術時間も短く、出血も少ないです。その後の妊娠を望まないのであれば選択肢の一つになります。月経はなくなりますが、卵巣は通常残しますので女性ホルモンの分泌に影響が出ることはないと言われています。

②子宮筋腫核出術
子宮を残し、筋腫だけを除去する手術です。将来妊娠を希望する人や全摘出に抵抗がある場合に検討します。ただし、点在した筋腫や大きすぎる筋腫には不向きで、出血量も多くなります。また取り残した筋腫があると再発する可能性や、周りの臓器と癒着が起きる可能性もあります。

[術式]
・開腹手術:お腹を切って筋腫の核出を行うため、大きい筋腫でも対応できる術式です。ただし、術後の回復には時間がかかり、お腹に傷跡が残ります。

・腹腔鏡下手術:腹腔鏡を用いて開腹せず子宮筋腫を核出する術式です。腹部に3~4ヵ所の小さな穴を開け、そこから腹腔鏡(カメラ)やメスなどの手術器具を入れて、カメラから映し出される映像をモニターで確認しながら子宮筋腫を核出します。大きすぎる筋腫や10個以上の筋腫は対応が難しいと言われていますが、体に残る傷跡も小さく、術後の回復も早いため早期の社会復帰が期待できます。熟練した技術が必要となるため、実施している医療機関が限られるのはデメリットと言えるでしょう。

・子宮鏡下手術:子宮鏡(レゼクトスコープ)を用いて、開腹せず子宮筋腫を核出する術式です。子宮筋腫の大きさが30ミリ以下で、かつ子宮内腔への突出度が50%以上であることが条件となります。手術時間が短く術後の痛みも少ないことに加え、腟経由の手術なので、おなかに傷がつかないのも利点です。ただし、粘膜下筋腫以外のものには適応にならず筋腫が大きい場合は一度に取り切れないこともあります。

子宮筋腫の予防と注意点は?

子宮筋腫の原因は十分解明されていないので予防方法も確立されていません。ただ、子宮筋腫は女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)が影響を与えて筋腫が大きくなるということがわかっていますので、ホルモンバランスを整えることが重要です。ホルモンバランスが乱れると月経周期が乱れたり生理不順が起きたりします。バランスの良い食事、緑黄色野菜や鉄分・食物繊維の積極的な摂取を心がけましょう。
また、自身の体としっかり向き合い、毎日の基礎体温表の記録、月経痛や経血量の変化などに注意し異変があれば早期に受診しましょう。また定期健診を受けることで子宮筋腫を初期段階で発見でき、他の子宮の病気についても早期発見につなげることができるため、意識的に検査を受けることが大切です。

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