【掲載日】2024/12/23
高齢者のインフルエンザ対策とは?症状や予防接種の重要性を解説!
知っておきたい!高齢者のインフルエンザの基本知識
例年国内で多くの感染者を出すインフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる高熱や喉の痛みはじめとする急性呼吸器感染症です。
体力や免疫力が低下しやすい高齢者にとって、インフルエンザは感染による重症化や合併症のリスクが高まるため特に注意が必要な感染症です。
今回は、高齢者が知っておくべきインフルエンザの基礎知識や予防法について、ポイントをお伝えします。
インフルエンザの特徴と影響
インフルエンザはインフルエンザウイルスによって引き起こされる急性呼吸器感染症です。
ウイルスは低温で乾燥した環境を好み、空気中や物の表面長期間にわたって生存するため、日本国内では冬季に感染機会が増加します。
また、インフルエンザウイルスはヒトからヒトへの感染力が非常に高く、寒さや乾燥によって鼻や喉の粘膜が乾いた状態ではウイルスに対する防御力が低下してしまうため、インフルエンザに罹りやすくなる傾向にあります。
冬季はインフルエンザに罹りやすい環境に適していることに加え、寒さから屋内で過ごす時間が増え、窓を閉め切って換気が少なくなることが多いため、学校やオフィス、病院や公共交通機関などの閉鎖空間でインフルエンザ感染者が咳やくしゃみで飛沫を放出し、それを吸い込むことでウイルスが爆発的に広がりやすくなります。
高齢者が直面するインフルエンザの危険性
インフルエンザの症状は通常の風邪よりも激しい咳や高熱、全身への様々な症状が見られるため、発症中は免疫力や体力が著しく低下します。
若年層の健常者であればインフルエンザが重症化することはほとんどありませんが、乳幼児、高齢者、妊婦、持病がある方などは重症化リスクが高く、海外ではインフルエンザによる死亡者数の約9割は高齢者であると報告されています。
特に高齢者は、老化による免疫力や内臓機能の低下により、肺炎や気管支炎をはじめとした合併症を併発する可能性が高くなります。
また、たとえ重症化までは至らずとも激しい全身症状による食欲低下により栄養失調状態になったり、寝たきりの原因となったりすることもあるので注意が必要です。
インフルエンザの感染メカニズムと経路
インフルエンザの主な感染経路は、主に飛沫感染と接触感染の2つがあります。
インフルエンザに罹るほとんどの原因は飛沫感染によるものです。インフルエンザに感染している人のくしゃみや咳、つばなどにはウイルスが含まれており、健康な人がこれらを鼻や口から吸い込んだりすることで、人から人へと感染していきます。
なお、インフルエンザは空気中に漂った飛沫の粒子(飛沫核)だけでは感染しないと考えられており、空気循環の良い環境化であればインフルエンザ患者から2メートル以上離れていれば感染は防げると言われています。
また、接触感染の場合は、感染者がくしゃみや咳を押さえた手や、感染者が触れたものを介してウイルスが手に付着し、自身の口や鼻に触れることで粘膜から感染します。
予防接種がもたらす重要な効果
インフルエンザの感染を防ぐため、インフルエンザが流行するシーズンの前には多くの人が予防接種を受けています。
しかし、インフルエンザにはA,B,Cの3型が存在し、ワクチンは毎年流行するインフルエンザの型を予測して作られており、ワクチンを打てば絶対にインフルエンザにかからない、といったわけではありません。
インフルエンザワクチンを接種する大きな目的は、発症後の症状を抑え、重症化を防ぐことになります。
特に60歳以上の高齢者や、免疫不全、基礎疾患がある方は、インフルエンザワクチンを接種することで重症化や死亡に至るリスクを大幅に軽減できる効果が見込めるため、ワクチン接種の費用が一部公費負担になる定期予防接種を受けられるほど、予防接種の意義が大きいとされています。
高齢者がインフルエンザにかかるリスクとは?
インフルエンザは老若男女かかわらず多くの人が罹る恐れのある感染症です。
免疫力の低下や基礎疾患が見られる高齢者が直面する、インフルエンザの危険性について紐解いてみましょう。
重症化を招くリスク要因
インフルエンザが重症化するリスクが高い人(ハイリスク群)には、もともと何らかの慢性的な病気を持っている人や、免疫力が低くなっている状態の人であることが多いです。
インフルエンザが重症化した場合の代表的な症状として肺炎や気管支炎が挙げられますが、喘息・COPD・間質性肺炎などの慢性肺疾患を持っている方は、特に注意が必要です。
次いで、慢性的な心疾患、ステロイド服用による免疫抑制状態の方、5歳未満の幼児、65歳以上の高齢者、妊婦などがハイリスク群として挙げられます。
インフルエンザによる合併症の影響
肺炎
インフルエンザに感染した高齢者が最も発症しやすい合併症が肺炎です。
インフルエンザ感染後の発熱が長期間続き、激しい咳や息苦しさが見られ、胸の痛みや食欲低下となどを伴っている場合は、症状が急速に悪化する可能性があります。
このような肺炎は、ウイルス性肺炎と細菌性肺炎のいずれかに該当します。
合併症による肺炎のほとんどは細菌性肺炎に分類され、湿った咳と共に、黄色や緑色を帯びた痰が見られます。一方で、ウイルス性肺炎の場合はインフルエンザ感染から3日以内に急速に進行し、呼吸不全に至る場合もあります。
急性脳症
突然の嘔吐、体のけいれん、意識がもうろうとしているなどの症状が見られる場合はインフルエンザ脳症の可能性があります。インフルエンザに感染した日から1~2日くらいで発症するほど短期間のうちに症状の前兆が見られ、わずか1日足らずのうちに重症になることもあります。
高齢者のインフルエンザ重症化率の実態
2022年度の季節性インフルエンザの感染者数は約1200万人にのぼり、そのうち60歳未満の重症化率は0.03%、60歳以上では0.79%といった統計が厚生労働省より報告されています。
また、65歳以上の高齢者のインフルエンザによる入院率は、1,000人あたり5~10人程度、インフルエンザによる死亡の90%以上が65歳以上の高齢者であるとされています。
インフルエンザワクチンを接種することにより、重症化リスクや死亡リスクは軽減されるものの、若年層に比べて高齢者はワクチンの効果がやや低いことが多いため、周囲の人もワクチンを接種して相互に感染リスクを減らすための「集団免疫」の効果が高齢者には有効となります。
インフルエンザの症状と高齢者への影響
インフルエンザは一般的な風邪症状とは似て非なるもので、周囲への感染力も高く、幼児や高齢者にとっては命にかかわる重大な合併症を招く恐れのある呼吸器感染症です。
インフルエンザの一般的な症状
インフルエンザウイルスが体内に入ると、1~3日の潜伏期間を経て体内でウイルスが大量に増殖し、徐々に症状が見られるようになります。主に38~40℃の急な高熱、喉の痛み、咳といった風邪に似た症状のほか、悪寒、頭痛、筋肉痛、関節痛、倦怠感などの全身症状を伴うことがほとんどです。
特に全身症状はインフルエンザ感染直後に感じられることが多く、咳や発熱などの症状が徐々に見られるようになり、感染1~2日後からこれらの症状が重くなり、感染後1〜2週間症状が続くこともあります。
高齢者に特有の症状
高齢者がインフルエンザに感染した場合も上記の一般的な症状が見られますが、高齢者は加齢により平熱が低くなっていること、免疫昨日の低下により発熱物質が発生しにくくなっていることなどから発熱や初期症状が見られないこともあり、感染していることに気づかず治療が遅れたり、すでに周囲に感染させていたりすることがあります。
さらに、高齢者は若年層や健常者と比較して体力が衰えていたり、免疫力が低下していたりすることが要因となって急激に症状が深刻化して重症に至るケースも多いです。
また、高齢者では、インフルエンザによる高熱や炎症が原因となって身体に大きな負担がかかり、意識が朦朧としたりせん妄状態に陥ることも稀にあります。
高齢者が知っておくべきインフルエンザの治療法
インフルエンザは毎年流行するシーズンがあり、高齢者にとってのインフルエンザは、老化による体力や免疫力の低下も相まって重症化や合併症が発症するリスクが高まるため、インフルエンザの流行が見込まれる時期の直前にワクチンの予防接種を受けることがとても重んじられます。
インフルエンザの一般的な治療法
インフルエンザは必ず医療機関で受診しなければならない症状ではなく、基本的には治療をしなくても時間の経過とともに自然に治る症状です。
ですが、症状の緩和とウイルスの増殖を抑える効果のある抗インフルエンザウイルス薬は、発症から48時間以内に服用することで平均的な発熱期間よりも1〜2日間短縮させることができ、鼻やのどからのウイルス排出量も減少するので周りに感染させにくくなるということも研究により判明しているので、インフルエンザに感染したかもしれないと思ったら早めに医療機関を受診しましょう。
代表的な抗インフルエンザ薬
- タミフル
- リレンザ
- イナビル
- ゾフルーザ
自宅療養で注意すべきポイント
安静にして休む
インフルエンザは高熱や重い咳症状などで、思っている以上に体力を消費します。体力をすこしでも回復させるためにも立ち上がったり歩き回ったりせずになるべく動かず安静状態で過ごし、睡眠時間を十分にとりましょう。
栄養・水分を十分に補給する
インフルエンザに限らず、発熱時は体内から多くの水分が失われます。脱水を防ぐためにもこまめに水分を補給しましょう。
注意するポイントとして、カフェイン飲料は体内の水分を排出してしまう作用があるので、水、麦茶、経口補水液などで水分を補給しましょう。
湿度を調整する
咳や痰、喉の炎症などにより、インフルエンザ感染時はのどがダメージを負った状態になります。
加湿器などを活用して室内の湿度を50~60%に設定し、のどの粘膜を保護しましょう。
インフルエンザについてよくある質問
高齢者のリスク
老化による免疫力の低下などの影響により、高齢者がインフルエンザにかかると肺炎や脳炎などの合併症を発症するリスクが高くなってしまいます。
回復までの期間
若年者や健康な成人の場合は、インフルエンザ感染後1週間以内で回復することが多いですが、高齢者や免疫力が低い人の場合は症状が長引くことがあり、2週間以上かかることもあります。
高齢者がインフルエンザにかかってしまった場合は速やかに医療施設で受診し、抗インフルエンザ薬などの治療をはじめることで回復までの期間を短縮させることができます。
自然治癒の可能性
インフルエンザによる発熱や咳、筋肉痛などの症状は、通常3〜5日で改善がみられ、全体的な回復には1週間程度かかるとされています。
しかし、高齢者が治療を受けずに自然治癒を待つ場合、かえって症状が悪化したり肺炎や脳炎などの合併症を引き起こすリスクが高くなることがありますので、自然に回復を待つよりも早期の診断と治療をすることが推奨されます。
まとめ
加齢による免疫力の低下などにより、高齢者は若年層や健常者よりもインフルエンザにかかりやすく、通常のインフルエンザの症状だけに留まらず肺炎や脳炎といった合併症のリスクも高まります。
インフルエンザが流行する季節には、うがい・手洗いやマスクの着用といって感染症の基本的な対策を徹底するとともにワクチンの予防接種も積極的に受け、日頃から体調の変化に気を配りましょう。
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