【掲載日】2016/07/29   【最終更新日】2022/08/24

高血圧の治療法は?薬物療法は?生活習慣改善法も解説

木村 眞樹子医師

監修者

循環器内科・内科・睡眠科医

木村眞樹子医師

高血圧とは?

私たちの身体は運動や環境の変化によって、常に血圧が上下していますが、体を動かしたり寒さを感じたりしたときの一時的な血圧変動とは違い、安静時でも慢性的に血圧が高い状態(収縮期血圧が130mmHg以上、拡張期血圧が80mmHg以上)が継続し、どちらか一方でもこの値を超えていると高血圧症と診断されます。

高血圧の症状とは?

測定値では高血圧症であってもほとんど自覚症状がないことが多く、目立った症状がないうちに発症し経過していきます。なかには、肩凝りや頭重感、めまい、動悸、息切れといった症状を訴える方もいます。
高血圧症の状態を放置していると、血管の壁に常に圧力がかかっている状態になるため血管が硬くなる動脈硬化が起こり、脳梗塞や脳出血、狭心症や心筋梗塞、慢性腎臓病などの重大な病気のリスクが高くなることに注意が必要といえます。
いずれも自覚症状がほとんどないので、普段から血圧を測る習慣をつけることが大事です。

高血圧になることによるリスク

どんな原因であっても、血圧が高い状態が続けば、身体には大きな負担をかけることになります。高血圧そのものは自覚症状が少ないですが血管へ障害を与える状態であり、障害を受けやすい代表的な臓器は心臓、腎臓、脳が挙げられます。これらは人間が生きる上で重要な臓器であり、高血圧による影響が伴うと命にかかわる症状が発症する危険性があります。
また、糖尿病や脂質代謝異常症も血管へ深刻な影響を与える症状の代表格ですが、高血圧と組み合わさることで合併症のリスクが大幅に増加します。

高血圧が引き起こす合併症とは?

動脈硬化
高血圧が悪化してくると、最初に起こりやすいのが動脈硬化です。圧がかかり続けた血管は傷がつきやすく、血管壁の修復が必要になります。このとき、身体は血液中にあるコレステロールなどを集め、傷ついた部分を保護しようとします。修復された血管は、壁が厚くなり、血管が細くなります。同時に、血管が本来持っていた柔軟性を失うことになり、血管が固くなってしまうのです。こうした状態を「動脈硬化」といいます。
動脈硬化があると、血流も悪くなり、さらに高血圧が悪化するという悪循環が生まれてしまうのです。

脳卒中
高血圧から引きおこる動脈硬化は、発生する部位によって、更なる合併症を招きます。たとえば、脳の血管で動脈硬化が起これば、脳の血流が悪くなり、ひどい場合には「脳卒中」を起こす可能性があります。脳梗塞(のうこうそく)や脳出血、くも膜下出血などは、障害が残ったり、生命に関わったりする大変な病気です。

心筋梗塞などの心疾患
同様に、心臓の血管に動脈硬化が起これば、心疾患のリスクを高めてしまいます。たとえば、狭心症は、心臓にある冠動脈に動脈硬化が起こり、血管が狭くなることで心臓への血流が減ることで胸痛の症状がでます。さらに、血管が詰まってしまうと心筋梗塞(しんきんこうそく)という命にかかわる病気にいたります。

血圧レベル別の脳卒中発症の頻度

血圧レベル別の脳卒中発症の頻度

収縮期血圧、拡張期血圧別に脳卒中発症との関連を調べると、いずれも値が高くなるにつれて脳梗塞の発症リスクが高くなっています。この結果、脳血管は収縮期血圧と拡張期血圧の影響を受けていると考えられます。

高血圧の原因とは?

高血圧症には腎臓疾患や内分泌異常、心臓や血管の異常などが原因で起こる「二次性高血圧」と、親が高血圧であるなどの遺伝的要因や生活習慣などの様々な要因が加わって発症する「本態性高血圧」とがあります。
本態性高血圧は、体質的に高血圧になりやすい人が、塩分の過剰摂取、喫煙、過度の飲酒、運動不足、ストレス、加齢などの様々な要因が加わることによって発症します。これらの要素により血流が悪くなったり、血圧をコントロールするホルモンや自律神経の働きが乱れたりすることで血圧上昇の原因となります。

高血圧の治療法

高血圧の基本的な治療方法は食事療法と運動療法といった生活習慣の改善です。

食事療法で気を付けること

・塩分制限
食事に置いて、塩は味を整えるための重要な調味料の1つです。様々な料理に含まれているほか、特に昨今ではインスタントラーメンやファーストフードなど、簡単に食事を済ますことができる食材や食文化が増加傾向にあり、一日に必要な塩分量を超過して摂取しがちです。
塩分摂取を1g減らすごとに1mmHg血圧が下がると言われ、高血圧の予防、治療のためには塩分制限は日に6g未満が目標といわれています。例えば日本食の材料には一日約2gの食塩が含まれており、調理や食事中に使う食塩、しょうゆ、みそなどからの塩分を5gに抑える必要があります。またしょっぱい味付けの食材料を減らすことでも減塩に繋がります。

・アルコール
一回の飲酒は短時間血圧を下げるようですが、多量飲酒は血圧を上げる作用があります。節度ある適度な飲酒は「一日平均純アルコールで20グラム程度」と定義されており、目安は以下の通りです。

  • ビール・・・・・・・中瓶1本(500mL缶1本)
  • 日本酒・・・・・・・1合
  • チュウハイ(7%)・・350mL缶1本
  • ウィスキーやブランデー・・・・・ダブル1杯
  • ワイン・・・・・・・2杯弱

※女性は上記の半分の量が推奨。

毎回のアルコール摂取量を控え、深酒せず、休肝日を最低週2回設けるなど、お酒との付き合いを見直してみましょう。

運動療法で気を付けること

・運動
酸素をたくさん使う運動(有酸素運動)は、長期間くり返して続けると血圧を下げる効果があります。目安としては、長期間できる運動(ウォーキングを1回10分以上、一日合計40分以上、など)を週に4~5日くらいの頻度で継続すると良いでしょう。

・体重制限
体重の目安となるのが体重と身長より計算するBMI(Body Mass Index)という指標です。

BMI=体重(Kg)÷身長(m)×2乗

BMIは22が理想的な標準体重で、BMIが25以上になると肥満。さらに、生活習慣病になる確率が2倍を超えると言われています。
肥満の方は自身の体重を支える為に、体にストレスがかかり交感神経が優位になって血圧が高めになり、体重を1kg減らすごとに血圧は1~5mmHg下がるといいます。自身の標準体重や適正なBMIを把握し、血圧をコントロールしましょう。

生活習慣の改善で気を付けること

・喫煙
タバコと高血圧との直接的な関係性はありませんが、高血圧と同様に喫煙行為は動脈硬化の危険因子です。動脈硬化が進行しないように禁煙することはとても大切です。

・ストレス
何らかのストレスがかかると、普段の血圧は正常でも血圧が急激に正常値を超えて上がってしまう「昼間高血圧(ストレス下高血圧)」や、医師や看護師の白衣を見ただけで緊張し、それがストレスとなって血圧が上昇する「白衣高血圧」といった症状など、特定な環境下や状況下で血圧が上がってしまう「仮面高血圧」と呼ばれる現象があります。
家庭血圧を基準とし自身の普段の血圧値を理解して、リラックスをしたり適度に気分を変えてみたりなどすることで改善する場合があります。

治療の際に使用する薬物やその効果とは?

高血圧に対する薬物療法は下記のような作用を持つ薬剤を使用します。

  • レニン・アンギオテンシン系薬 …… 昇圧ホルモンを抑えて血管を拡張したり、利尿を促したりする。
  • 血管拡張薬 …… 血管を拡張する。
  • 神経遮断薬 …… 心臓への余分な刺激を抑える。血管の緊張をとる。
  • 利 尿 剤 …… 尿量を増加して血液量を減らす。

まとめ

「高血圧」の状態だけでは、体が痛いわけでも症状が見えるものでないため放っておいてしまいがちな疾患です。ですが、心血管疾患や脳疾患など重大な疾患を引き起こすリスクを持っています。
軽度の症状であれば薬剤を使わなくても日々の生活の見直しだけで改善できます。
自分の適正な血圧を把握し、コントロールすることを心がけましょう。

監修者

木村 眞樹子医師

循環器内科・内科・睡眠科医

木村眞樹子医師

東京女子医科大学医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。
妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる様々な人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。

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