【掲載日】2023/09/07

逆流性食道炎の治療薬を紹介-選び方、飲む際の注意点も解説

食後の胸焼け、胃もたれ、吐気、逆流性食道炎かも!?

「最近よく胸やけや、みぞおちあたりの不快感、酸っぱい液体が上がってくる感じがするといった自覚症状があるという方、もしかしたらそれは逆流性食道炎の症状かもしれません。
以前は日本人には少ない病気と言われていましたが、近年食事の欧米化などが要因で逆流性食道炎の患者が大幅に増えているそうです。
ここでは、逆流性食道炎に効果のある治療薬の種類や、手軽に入手できる市販薬の情報などを記載していきます。

逆流性食道炎の原因・症状

逆流性食道炎になる原因はいくつかあります。
①「下部食道括約筋」という食道と胃の境目の筋肉の緩みが原因で、胃酸が食堂内に逆流し食道の粘膜を胃酸が刺激し胸やけなどの症状を引き起こします。
②ストレスや加齢により食道の蠕動運動(食べ物を下へ下へと押し下げる力)が低下し、逆流してきた胃酸を胃へ押し戻せなくなり、食道内に胃酸が入って炎症が起きます。
③食べ過ぎで胃の中の圧力が高くなっていると胃液が上がって胸やけなどが引き起こされます。

逆流性食道炎の症状は、主に胸やけや胃もたれと呑酸(どんさん)です。胸やけは人によって感じ方は様々で、「みぞおちの周辺がヒリヒリと熱く焼ける感じがする」、「胸が痛い」、「げっぷが出る」、「酸っぱいものがこみ上げてくる」などの症状が出ます。また、内視鏡で見ると、胃酸のために食道粘膜がただれて炎症がある状態です。

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逆流性食道炎の治療薬の種類

逆流性食道炎の薬による治療は、症状を緩和させる対症療法が主となっており、完治させるものではありません。根本的に治すには、普段の生活習慣と食生活の改善が必要ですが、時間的にも長期的な治療となるため、今出ている症状を軽減させるために薬が処方されます。

胃酸の分泌を抑える薬(胃酸分泌抑制剤)

①プロトンポンプ阻害薬(PPI):
胃壁細胞のプロトンポンプに働き、胃酸の分泌を抑えます。胃酸抑制効果がとても強く、市販薬が効かない方にもおすすめ。市販はなく処方薬のみ。
②カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB):重症の逆流性食道炎の初期治療やPPIの効果が悪い方に使用されることが多く、PPIより胃酸分泌抑制効果が強力で効果までの発現が早いと言われています。処方薬のみ。
③H2ブロッカー:
胃壁細胞のH2受容体を遮断することで胃酸の分泌を抑えます。
④M1ブロッカー:
胃酸分泌を促進するM1受容体をブロックし胃酸の分泌を抑えます。

食道の運動機能を改善する薬(消化管運動機能改善剤)

ガスモチン・ナウゼリン:食道の動き(蠕動運動)を回復させ、逆流した胃酸を胃に押し戻します。また、胃の運動を改善して胃からの排出を促進する働きがあります。

食道の粘膜を保護するお薬(粘膜保護薬)

主成分は海藻の滑り成分で、食道粘膜の傷口に働き、胃酸による傷害を防ぐ働きがあります。食道は胃の粘液のように自らの粘膜を守れるような機能を持っていないため、胃と同じように粘膜で覆うことで炎症を起こしにくくするのです。

胃酸を中和するお薬(制酸薬)

水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム:これらを主成分とした胃酸中和薬は、出過ぎてしまった胃酸を中和することで、胃酸による炎症が起こるのを防ぐ薬です。

市販薬と漢方薬の違い

逆流性食道炎の症状を緩和させるための市販薬は、主に胃酸の分泌を抑える薬や食道を保護する薬、消化管の働きを正常にする薬などがあります。比較的軽症の方は、M1ブロッカー又はH2ブロッカーに分類される市販薬が良いでしょう。
尚、上記の市販薬で効果が表れにくい方や、ピロリ菌除菌のための抗生剤に副作用がある方、除菌後も胃部の不快感が改善されていない方などは、漢方治療を検討するのが良いとされています。

逆流性食道炎におすすめの市販薬4選

逆流性食道炎におすすめの市販薬を紹介します。
市販薬(M1ブロッカーやH2ブロッカー)で効果が見られなかった場合、市販薬より胃酸分泌抑制効果が更に強力な処方薬(PPIやP-CAB)に切り替えることも検討すると良いでしょう。

①ガスター10(第一三共ヘルスケア)【第1医薬品】

有効成分 ファモチジン(H2ブロッカー薬)
服用可能年齢 15歳以上
服薬回数 1回1錠・1日2回まで
※服用タイミングは症状の出た時(服用後に再度服用する場合は8時間以上あける)
剤形 小粒の糖衣錠
内容量 6錠/12錠
眠くなる成分 入っていない
特長 病院で処方される薬と同成分を含む薬で、胃酸の出過ぎをコントロールし、胃痛・胃もたれなどの胃の不快な症状に効果的。小粒で飲みやすい糖衣錠

②ガストール錠(エスエス製薬)【第二類医薬品】

有効成分 ピレンゼピン塩酸塩水和物(M1ブロッカー)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(胃酸中和・胃粘膜保護)、炭酸水素ナトリウム(胃酸中和)、ビオヂアスターゼ2000
服用可能年齢 15歳以上
服薬回数 1回3錠・1日3回
剤形 錠剤
内容量 30錠/60錠
眠くなる成分 入っていない
特長 過剰な胃酸分泌を元からブロックしつつ、2種類の制酸剤で胃酸過多を素早く中和。食事と同じタイミングで服用のため飲み忘れも起こりにくい。

③パンシロンキュアSP錠(ロート製薬)第二類医薬品

有効成分 水酸化マグネシウム(制酸成分:胃酸中和)、合成ヒドロタルサイト(制酸成分:胃酸中和)、沈降炭酸カルシウム(制酸成分:胃酸中和)、アルジオキサ(粘膜修復成分)、ピレンゼピン塩酸塩水和物(胃酸分泌抑制成分)、炭酸水素ナトリウム(制酸成分:胃酸中和)、チンピ末(生薬:弱った胃の働きを高める)
服用可能年齢 15歳以上
服薬回数 1回2錠・1日3回(食前or食後)
剤形 錠剤
内容量 30錠/72錠
眠くなる成分 入っていないが、目のかすみ・まぶしさを感じることがある
特長 胃酸分泌抑制、胃酸過多の中和、粘膜保護という3段階で総合的に症状を改善

④ファモチジン錠「クニヒロ」(皇漢堂製薬)第一医薬品

有効成分 ファモチジン(H2ブロッカー薬)
服用可能年齢 15歳以上
服薬回数 1回1錠・1日2回まで
※服用タイミングは症状の出た時(服用後に再度服用する場合は8時間以上あける)
剤形 糖衣錠
内容量 6錠/12錠
眠くなる成分 入っていない
特長 過剰な胃酸の分泌を抑制し、胃粘膜の修復を早め、胃痛、胸やけ、もたれ、むかつきの症状を緩和します。

逆流性食道炎におすすめの漢方薬4選

通常の市販薬で効果が出にくかった方や、薬剤成分で使えないものがあるなどの場合は、選択肢として漢方薬での治療も検討にあげてみるとよいかもしれません。

①ツムラ漢方六君子湯エキス顆粒(ツムラ)【第2類医薬品】

有効成分 日局ソウジュツ、日局ニンジン、日局ハンゲ、日局ブクリョウ、日局タイソウ、日局チンピ、日局カンゾウ、日局ショウキョウ
服用可能年齢 2歳以上
服薬回数 成人(15歳以上):1回1包・1日2回
7歳以上15歳未満:1回2/3包・1日2回
4歳以上7歳未満:1回1/2包・1日2回
2歳以上4歳未満:1回1/3包・1日2回
2歳未満:服用しない
剤形 顆粒
内容量 10包
眠くなる成分 入っていない
特長 胃酸の逆流による胸やけ症状の緩和に効果的。六君子湯は食欲を増進させる「グレリン」というホルモンの分泌量を増やす薬理作用があることが分かり、注目を集めています。

②大正漢方胃腸薬

有効成分 安中散(ケイヒ/エンゴサク/ボレイ/ウイキョウ/シュクシャ/カンゾウ/リョウキョウ)、芍薬甘草湯エキス末(シャクヤク/カンゾウ)
服用可能年齢 5歳以上
服薬回数 食前又は食間に服用
成人(15才以上):1回4錠・1日3回
5歳以上~15才未満:1回2錠・1日3回
剤形 錠剤(他に微粒タイプ・液体タイプあり)
内容量 60錠/100錠/160錠/220錠
眠くなる成分 入っていない
特長 2つの漢方薬を配合で幅広い症状に適用。安中散により消化管の動きを改善し胃酸の逆流を抑えます。芍薬甘草湯は胃の緊張をほぐし胃痛を和らげます。

③止逆清和錠(クラシエ)【第3医薬品】

有効成分 牛胆汁エキス末、ボレイ、カンゾウ、ケイヒ、ショウキョウ、オウバク
服用可能年齢 11歳以上
服薬回数 成人(15歳以上):1回3錠・1日3回
11歳以上15歳未満:1回2錠・1日3回
11歳未満:服用しない
剤形 錠剤
内容量 36錠
眠くなる成分 入っていない
特長 胃酸を中和すると同時に胃腸機能を整え、さらに胆汁分泌を促し消化吸収を盛んにすることで、胃酸の逆流による不快な症状を改善します。

④ツムラ漢方半夏瀉心湯エキス顆粒(ツムラ)【第2類医薬品】

有効成分 日局ハンゲ、日局オウゴン、日局カンキョウ、日局カンゾウ、日局タイソウ、日局ニンジン、日局オウレン
服用可能年齢 2歳以上
服薬回数 成人(15歳以上):1回1包・1日2回
7歳以上15歳未満:1回2/3包・1日2回
4歳以上7歳未満:1回1/2包・1日2回
2歳以上4歳未満:1回1/3包・1日2回
2歳未満:服用しない2歳未満:服用しない
剤形 顆粒
内容量 10包
眠くなる成分 入っていない
特長 胃の粘膜の保護作用が期待できる漢方薬。逆流してくる感じやゲップ、胸焼け症状の強い方におすすめ。

市販薬・漢方薬を服用する際の注意点

薬には服用期間が定められています。
それぞれ、薬によってその期間は異なりますが、短いもので3日間、長いものでも1か月程度とされており、必ず添付文書に記載がありますので確認するようにしましょう。
逆流性食道炎の薬は、根本的な治療ではなく、出ている症状を緩和するための対症療法となります。一定期間、薬を服用しても症状が変わらない場合や、改善と悪化を繰り返している場合などは、一度、医師や薬剤師に相談しましょう。

逆流性食道炎の治療薬についてよくある質問

逆流性食道炎の薬について、下記によくある質問をまとめました。

Q1. 薬が効かない時はどうすべきか?

一定期間服用しても効果が出ない場合は、専門医を受診し、症状に合わせた薬を処方してもらうのが良いでしょう。検査をすることで、胃痛なのか他の病気が原因なのかも判断できます。自己判断で市販薬を色々変えたり、用量を勝手に増やしてしまうのは危険です。また、薬を服用しているからといって暴飲暴食を続けていては意味がありません。食生活や飲酒・喫煙などの生活習慣も併せて見直すように心がけましょう。

Q2. 妊娠中に薬を飲んでも問題ないか?

妊娠中は子宮が大きくなって胃が圧迫されるために、胃酸が逆流しやすくなります。服薬は妊娠中は出来る限り避けた方が良いに越したことはありませんが、医師の処方のもと、妊娠時期を考慮しつつ、H2ブロッカー薬などが処方されることがあります。逆流性食道炎の市販薬においても妊娠中服薬ができる薬もありますが自己判断せず、飲む前に必ず担当医に相談するようにしましょう。

Q3. M1ブロッカー、H1ブロッカーとは何か?

どちらも胃酸の分泌を抑える効果のある成分です。医薬品だけでなく、OTC医薬品にも転用されています。M1ブロッカーは第1類医薬品のため薬剤師管理のもと店頭で購入可能、H1ブロッカーは第2類医薬品のため薬剤師なしで購入可能です。

Q4. 他の薬も飲んでいるが、逆流性食道炎の薬も飲んでよいか?

1つずつでは問題ないお薬でも、お薬とお薬の飲み合わせによっては、よくない影響が出る組み合わせがあります。この影響を相互作用といい、注意が必要です。飲んでいる薬がある場合は、必ず医師や薬剤師に伝え、お薬手帳を持参するようにしましょう。
特に、胃酸分泌を強力に阻害するプロトンポンプ阻害薬(PPI)は、非ステロイド性抗炎症薬(ロキソプロフェン、ジクロフェナク、アスピリンなど)や一部の抗菌薬と併用すると急性腎障害を起こすリスクが高まることが研究で報告されています。鎮痛薬は市販で簡単に入手でき、PPIを使用している患者さんも意識せずに併用してしまうことがあるため要注意です。

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まとめ

逆流性食道炎の薬は、ドラッグストアの市販薬でもたくさん販売されているため、気になる症状が出た際には簡単に薬を入手することができます。症状により、どの成分が効果的なのかも変わってきますので、市販薬を購入する際は店頭の薬剤師に相談するのが良いでしょう。また、しばらく服用しても症状が変わらない場合は、別の病気である可能性もありますので、一度きちんと病院を受診することも検討に入れるようにしてください。

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