【掲載日】2020/09/12   【最終更新日】2022/10/07

子宮内膜症とは?症状・原因・検査方法・治療などを解説

子宮内膜症とはイメージ

月経痛がある方は特に注意!子宮内膜症にかかる方は意外と多いんです。

子宮内膜症とは

子宮内膜症イメージ

月経にお困りの方は子宮内膜症かもしれません。

子宮内膜症とは、月経に随伴して子宮の内側以外に内膜が出来てしまう病気のことです。子宮内膜は厚さ1センチ程の筋肉でできている子宮の最も内側を覆っている粘膜部分のことです。その子宮内膜以外に出来てしまう事で月経や妊娠に影響を与えるリスクがあります。

子宮内膜外にできた内膜は月経周期に合わせて、出血と増殖や剥離を繰り返します。月経を繰り返すと病巣部が肥大化し、周囲の細胞組織と癒着を起こすリスクが考えられます。また月経時に内膜外の血液が排出されずに炎症を起こし、放置すると月経痛を重くしたり、妊症や月経困難症、卵巣癌等の原因にもなります。

子宮内膜症の原因

現在,環境や遺伝によるもの、子宮内膜の変化したもの等様々な仮説が立てられておりますが、いずれも明らかな要因として解明されておりません。大まかに原因として纏めると「女性ホルモンに起因し、月経と共に症状が進行するもの」ではないかと考えられます。

ここでは3つの原因説についてご紹介します。

  • 子宮内膜移植説

    子宮内膜移植説が最も一般的な仮説として挙げられています。これは月経時に剥がれ落ちた子宮内膜細胞が、流れ出ずに卵管へと逆流し腹腔内に付着する場合や、リンパや血管系の流れによって他の部位に付着するというものです。そのまま増殖していくと深部内膜症や骨盤腹膜内膜症へと進行します。子宮内膜症部分の細胞は子宮内膜部分同様にエストロゲンやプロゲステロン(黄体ホルモン)が生成されており、子宮内膜部分と同じ月経時に増殖する腺が確認できます。また、月経時に経血が卵管を逆流することは現象として確認されており、異所に付着する可能性は十分考えられます。

  • 体腔上皮化生説

    その他子宮内膜症の原因として体腔上皮化生説が挙げられます。これは腹膜や卵巣の表面の体腔上皮が他の性状を示す子宮内膜組織に変わり、病巣を形成するというものです。この説だと子宮内膜症を原因として引き起こるチョコレート嚢胞は腹腔内上皮が子宮内膜化してできるという説明となります。
    ミュラー管(中腎傍管とも呼ばれ、卵管や子宮や膣の上半分の基になる部分)と中皮細胞(上皮の中で腹膜、胸膜、内生殖器にあたる部分)は、 共に胎生期の体腔上皮より発生してゆく為近しいものです。この腹膜等の中皮細胞がなんらかのきっかけにより、化生を起こしてしまうのではないかと考えられます。

  • 免疫学的異常・肝細胞説

    その他にも、異所性の子宮内膜組織を免疫上拒絶できずに生着・発育を許容してしまうという免疫学的異常説や、体腔上皮や残った胎生組織の幹細胞が起源となる幹細胞説様々な仮説が提唱されています。最後に子宮内膜症ができる直接的な原因とは言えませんが、下記へ当てはまる方はエストロゲンの分泌が盛んになり、また分泌期間が長くなることから子宮内膜症になりやすいのではないかと言われています。
    最後に子宮内膜症ができる直接的な原因とは言えませんが、下記へ当てはまる方はエストロゲンの分泌が盛んになり、また分泌期間が長くなることから子宮内膜症になりやすいのではないかと言われています。
    ・近親者に子宮内膜症の家族歴がある方
    ・月経回数が多くなる素因がある方
    (高齢出産や未経産の方、早い初経、遅い初経を迎えた方、月経周期が短い方、月経期間が長い方等)

子宮内膜症ができる部位と診断名称

子宮内膜症は腹膜や子宮筋層内、卵巣、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)、仙骨子宮靭帯(子宮を後ろから支える靭帯)、卵管や膀胱子宮窩(子宮と膀胱の間のくぼみ)等にできやすいと言われます。その他消化器臓器(直腸、S状結腸、虫垂)、泌尿器臓器(尿管、膀胱)、皮膚(外陰部、腹壁、臍、鼠経)、胸腔(肺、気管支、胸膜)、手術創、腎臓にもできることがあり、その発生場所によって診断名称が変わります。

子宮内膜症ができる部位と診断名称イメージ

  • ・腹膜→骨盤子宮内膜症
  • ・子宮筋層内→子宮腺筋症
  • ・卵巣→卵巣子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞)
  • ・ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)→ダグラス窩・深在性子宮内膜症
  • ・仙骨子宮靭帯(子宮を後ろから支える靭帯)→深部子宮内膜症
  • ・卵管→卵管内膜症
  • ・膀胱子宮窩(子宮と膀胱の間のくぼみ)や肺・腸管・尿管等→他臓器子宮内膜症(稀少部位子宮内膜症)

子宮内膜症は近年増加が指摘されており、10代後半から発生します。女性はエストロゲンの分泌量が20歳~30歳代のころに最も分泌されると言われる為、その時期に内膜症罹の罹患者が多くなります。厚生労働省によると加齢と共に増加するものであり、子どもを産み育てる世代(生殖年齢層)にある女性の5~10%は子宮内膜症に罹患していると言われているそうです。子宮内膜症の好発部位は、卵巣が50%、子宮と直腸の間のダグラス窩腹膜が40%、仙骨子宮靭帯が20%程度です。生殖年齢の女性(思春期~閉経期)の5%~10%が子宮内膜症を持っていると言われています。
生涯の月経回数が多い(妊娠・出産回数が少ない)女性に発症が多く、晩婚化や女性の社会進出等の様々な要因から増加傾向にあります。

子宮内膜症の症状

子宮内膜症の症状イメージ

今すぐチェック!~子宮内膜症の症状~

  • □月経痛
  • □月経時以外にも下腹部痛がある
  • □腰痛がある
  • □レバー状の塊がある
  • □排便痛
  • □腹部満腹感
  • □疲労や消耗感がある
  • □性交痛がある
  • □月経量が多い
  • □不妊状態である
  • □頭痛・肩こりがある
  • □便秘・下痢気味である
  • □不正出血がある
  • □足の痛みがある
  • □吐き気や嘔吐がある
  • □頻尿である
  • □めまいや発熱がある
  • □関節痛がある

※必ずしも当てはまる方がすべて子宮内膜症というわけではありません。

実は子宮内膜症の症状は様々であり、無症状の方もいます。
ただ自覚が無くても月経と共に続発的に症状が進行し、年齢を重ねると増悪傾向にある為定期的な検査が必要です。
最も多く挙げられるのは月経時の下腹部と骨盤部の疼痛です。日本内膜症協会の調査では、確定診断された子宮内膜症患者のうち、月経痛は88%もの人に見られ、月経時以外の下腹部痛は72%、腰痛は57%、性交痛57%、排便痛39% と疼痛症状が高頻度となります。
疼痛の原因として主にプロスタグランジンの分泌により、子宮筋が収縮され経血を体外へ排出しようとする働きがあります。このプロスタグランジンが過多分泌されると、筋肉が収縮されて月経痛を引き起こします。また子宮筋収縮は腰痛や冷え性、更には月経困難症(過多月経、不正出血)の症状も引き起こす事があります。このプロスタグランジンが胃や腸に作用すると吐き気や嘔吐、下痢の原因となります。
その他、疼痛の原因として他部位の出血が原因に因るものの場合があります。経血排出とは異なり、子宮内膜症の場合は排出口が無い為、体内に血液が溜まります。それにより子宮以外に出血や痛みが起こります。続いて子宮内膜症部分の進行による癒着が進むと、臓器の腹膜面が変形してしまい、月経時以外でも下腹部痛や骨盤内構造の歪み・腰痛が引き起こされます。
その他にも胸膜・肺、腸管、尿路等に発生すると、月経時に気胸、血便、血痰、下血等の症状が起こりえます。
腰痛だと思っていたつもりが子宮内膜症によるものであった…と言うことが無いように、適切な検査と治療を受けることが必要です。

低温機・排卵日・高温期イメージ

子宮内膜症の検査方法

子宮内膜症の検査方法イメージ

子宮内膜症は良性疾患ですが、月経と共に症状が進行していきます。
疼痛に放置せず早めに医師に診断を受けることをお勧めします。
ここでは初診以降の主な診断手順に関してご紹介します。

ここでは3つの原因説についてご紹介します。

  • 問診

    子宮の状態を確認(子宮内膜症や子宮筋腫の診断歴、卵巣の状態、子宮後屈や動きが無いか、深部浸潤性子宮内膜症(DIE)が無いか、ダグラス窩の硬結が無いか、子宮出血が無いか、子宮後面、卵巣チョコレート囊胞、子宮頸管拡張と子宮内掻爬術等の手術歴が無いか、子宮腺筋症歴が無いか)、骨盤内の手術歴があるか、帝王切開歴があるか、不妊歴が無いか、流産歴や早産歴が無いか、妊娠の希望の有無が無いか、 これまでの薬物治療歴・その有効性および副作用について問題無いか等を確認します。

  • 内診

    膣鏡や指の挿入にて子宮、卵巣の可動性や疼痛の状態を確認します。 ※性交経験が無い場合には内診しないこともあります

  • 腫瘍マーカー(血液検査)

    あくまでも単独で確定診断はつかない為、他の検査方法と併合的に判断するものです。子宮内膜症のリスクがないかの基準値として血液中のCA125の数値が問題ないか確認します。その他A125やCA19-9の増殖度にて子宮内膜症他癌がないか等も確認します。

  • 超音波(エコー)検査

    経膣・経直腸・経腹等を通して子宮内膜症の診断をする他、経過の把握の手段にも使用されます。
     
     子宮の壁の状態やチョコレート嚢胞(卵巣内に発生した内膜症)が無いか、子宮や卵巣の腫大の有無、周囲への癒着の有無を調べます。
     膨大していたり等の子宮内膜の状態によってはMRI検査も併用します。

  • 磁気(MRI)・X線(CT)

    超音波(エコー)検査に比べ,特異的に血液の流れや滞りが診れる為、卵巣チョコレート囊胞の有無・子宮内膜症病変の位置・癒着、他臓器腫瘍の状態を診断する際に使用します。

  • 腹腔鏡検査

    主に確定診断に使用されます。基本は内診や薬物療法等を優先し、外科手術の方が適していると判断された場合に勧められることがあります。療法抵抗性の疼痛や、確定診断と進行状況の確認が必要な場合は、全身麻酔を行った上で腹部に小さな穴を数ヵ所開けて腹腔内部を観察します。悪性癌や不妊の原因になっている、薬物治療に効果がない、6センチ程度の肥大化したチョコレート嚢胞がある場合などが挙げられ、必要によっては確認と同時にそのまま手術を行うこともあります。

子宮内膜症の治療方法

子宮内膜症の治療方法イメージ

一般的に薬による治療と手術による治療があります。
病態、病状、年齢、妊娠・出産希望の有無に合わせて治療方法を選択します。閉経までの長い期間付き合うものとなります為、どの治療法が適切であるかを都度選択していくことが重要です。

  • 薬物療法

    薬物療法には、主に痛みを抑える為の対症療法と、子宮内膜症の進行を止めて病巣を萎縮させるホルモン療法に大別されます。
    対症療法には使用中も妊娠可能な非ステロイド性抗炎症薬( NSAID )や漢方等用いられ、生理痛等に有効です。
    他にも内膜症病巣の増殖を抑制するピル(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬/低用量ピル)を用いて偽装妊娠状態にする方法があります。月経痛や過多月経、貧血を緩和させるため使用されます。生殖年齢の女性にとってピルの選択をしながら経過を見て、今後の最適な治療を考える方もいます。将来妊娠を考えている若い方に特に良い方法であると言えますが、子宮内膜症の進行を防ぐ作用は無い為、症状の進行が見られるとホルモン療法へ切り替えされることになります。
    直ぐの妊娠を希望しない方へのホルモン療法では低エストロゲン状態を作り上げる作用のあるGnRH拮抗剤(アゴニスト)や黄体ホルモン剤またはダナゾールという薬を用いて一時的に閉経の状態にする薬があります。強作用の薬である為、手術までの保存療法並びに閉経前の保存療法として使用します。偽閉経状態によりチョコレート嚢胞が経過とともに縮小する他、筋腫の縮小効果により腰痛にも効果がある場合があります。ただ、骨粗鬆症や更年期障害等の副作用が出ることがあり、6か月程度の使用期間を設ける他、次回使用にも休薬が設けられます。

  • 手術療法

    保存か臓器摘出となるか妊娠の希望等を相談した上で、チョコレート嚢胞等の病巣部の確定診断がある場合には手術療法を選択します。
    下腹部に数点穴をあける腹腔鏡手術ができる状態の方は、体への負担や審美性の観点からそちらをお勧めします。また腹腔鏡は体内深部まで拡大して診ることができる為、子宮内膜症の治療には優れています。
    卵巣や子宮摘出が必要な場合には開腹手術を行います。
    手術法も妊娠の希望の有無で変わります。妊娠を希望する場合には卵巣や卵管をできるだけ本来の形・位置関係に戻す必要があります。卵巣チョコレート嚢胞や癒着部分を除去した後、病巣を焼き切ります。一方、妊娠を希望せずに強い疼痛がある場合には、卵管、卵巣、子宮を取る方法を選ぶこともあります。いずれも除去後には疼痛の軽減効果が期待されます。

女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロン等の影響で閉経すると月経が止まる為、閉経後はその症状は軽減されます。良性の疾患ではありますが、月経と長く付き合う女性にとっては症状に悩まされることはQOL(生活の質)を下げる一因にもなり得る為、根気強くの付き合いが必要です。早期発見、早期治療を心がけましょう。

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