【掲載日】2023/07/27
過敏性腸症候群のセルフチェック-症状・原因・治療方法について解説
「最近、どうもお腹の調子が良くない・・・」と感じたり、下痢や便秘が慢性的に起こって生活に支障をきたしたりなど感じることはありませんか?
もしかしたらその症状、過敏性腸症候群かもしれません。
ここでは、過敏性腸症候群のセルフチェックと治療法などについて、詳しく記載していきます。
敏性腸症候群(IBS)のセルフチェックリスト
この2~3か月ほどの間で、下記の項目に該当する箇所があるかチェックしてみましょう。
1. お腹の調子が長期間(数週間)不調、もしくは痛みがある
2. 便通異常(下痢や便秘)が続いている
3. 便の形が悪い時期が続いている
4. 排便をすると痛みが一時的に和らぐ
5. 排便の回数が不規則
6. 排便しても残便感がある
7. 便秘が続き、便が出たとしてもコロコロとした便しか出ない
8. 便に血が混ざる
9. 体重が減少
10. 夜中におなかが痛くなり目が覚める
自己診断テストの点数の見方
上記の項目で1~7つの該当項目症状がある方は、過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)が疑われますが、8~10までの症状もある方は、より重篤な病気の可能性があります。
また、便に血が混ざる、体重が減少している、夜中にお腹が痛くなり目が覚める、といった症状がある場合は、別の重篤な病気である可能性もあります。該当するようであれば、早めにクリニックを受診してください。
過敏性腸症候群(IBS)とは
過敏性腸症候群はIBS(Irritable Bowel Syndrome)とも呼ばれ、便秘・下痢・腹痛・下腹部の違和感など、様々な症状が慢性的に起こり、排便をすると痛みが軽くなるのが特徴です。これらの症状は、基本的には大腸に何らかの異常が発生しているときに引き起こされますが、大腸カメラ検査を行っても、腸管に他の病気による炎症や腫瘍、細胞破壊などの器質的な異常が見られなかった場合には、過敏性腸症候群である可能性が高くなります。
この疾患は、現代社会で急増している疾患のひとつで、消化器外来を受診する患者の約3割がこれにあたると言われています。また、文献によりばらつきはあるものの、2023年4月に発表された論文(https://doi.org/10.5056/jnm22037)では、過敏性腸症候群の日本人の有病率は15%であったという調査結果が発表されています。
参考URL
https://www.waseda.jp/top/news/89403
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/796/
過敏性腸症候群は、生死に直接かかわる病気ではないものの、下痢の症状が続き、通勤通学時間帯に強い症状が頻発した場合など、日常生活の中でも心身ともに大きな支障をきたしてしまうため、QOL =Quality of life(生活の質)の低下につながると考えられています。
過敏性腸症候群(IBS)の症状とは?
下記の症状がある場合、もしかしたら過敏性腸症候群(IBS)かもしれません。
- 頻繁に腹痛が生じる
- 便通異常(便秘や下痢)が数ヶ月間続いている
- 便の形が悪い時期が長期間続いている
- 排便回数が不規則である
- よくおならが出る
- 排便をすると痛みが一時的に緩和される
また、過敏性腸症候群は下記の4つのタイプに分類されます。
➀便秘型
排便回数が週3回以下になり、ストレスを感じると便秘がひどくなります。排便時には腹痛があり、強く息まないと便が出にくく、コロコロとしたウサギのような便となり、残便感が残るのが特徴です。女性に多い傾向があるようです。
②下痢型
緊張やストレスを感じると急にお腹が痛くなったり、1日3回以上水のような便が排出されるのが特徴です。若い男性に多い傾向があるようです。
③混合型
ストレスや緊張により、便秘と下痢を繰り返すタイプです。
④分類不能型
上記①~③のどれにも該当しないタイプ
過敏性腸症候群(IBS)の原因
過敏性腸症候群(IBS)の原因は、明確にはわかっていないというのが現状ですが、その中でも主な原因とみられているのが、ストレスからくる自律神経の乱れです。
強いプレッシャーや極度の緊張によりストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れ、腸管の蠕動運動に異常が現れます。腸管の運動が過活動になれば下痢を引き起こし、逆に活動が低下すると便秘状態になるほか、腸管にガスが溜まって起こる腹部膨満感や腸が過敏になることで痛みを感じやすくなり腹痛が起きるなどの、過敏性腸症候群(IBS)の症状が出てきます。また、このような心理的ストレス以外にも過労や睡眠不足のような身体的ストレスによっても腸の蠕動運動に影響を及ぼします。
その他の原因として、ウイルスや細菌による感染症腸炎に罹り、回復した後に過敏性腸症候群(IBS)になりやすいことも報告されています。これは、感染によって弱った腸の腸内細菌が変化し、運動と知覚機能が過敏になるためと言われています。
画像:日本消化器病学会ガイドラインより
過敏性腸症候群(IBS)診断基準は
繰り返す便秘や下痢などの排便異常や腹痛があった場合に、まず他の病気がないことを確認するための検査を行います。検査内容は、一般的な血液検査や、感染症と区別するための便培養検査、器質的疾患(感染や炎症・血管障害などで細胞や組織が破壊されていたりして目に見える変化や症状として現れる疾患。例えば癌や感染性腸炎など)と区別するための大腸内視鏡検査などです。
上記検査の結果、特に異常がなく、かつ下記の診断基準に該当する場合に過敏性腸症候群(IBS)と診断されます。
過敏性腸症候群(IBS)の診断基準(ローマⅢ基準)※
腹痛または腹部不快感が、最近3か月のうち少なくとも1か月に3日以上存在し、加えて下記の症状が2つ以上伴うことが診断基準となっています。
- 症状が排便により和らぐ
- 症状とともに排便の回数が変わる(増えたり減ったりする)
- 症状とともに便の形状が変わる(柔らかくなったり硬くなったりする)
※6か月以上前から症状があり、かつ最近3か月のあいだに上記の基準を満たすこと
過敏性腸症候群(IBS)の治療方法
IBSの治療は、下痢型・便秘型・混合型などの状態に合わせて処方されますが、大前提としてまずは生活習慣の改善が必要となります。規則正しい生活とバランスの取れた食生活を送った上で、服薬による治療ではどのような薬があるのか下記に詳しく記載していきます。
1. 生活習慣の改善
暴飲暴食や夜間の大食をせず、1日3食を規則的に摂ることが大切です。刺激物や高脂肪の食べ物、アルコール類は避け、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。また、ストレスをなるべく溜めないようにし、睡眠・休養をしっかり取るようにしましょう。
2. 服薬による治療
上記1を継続してもIBSの症状があまり良くならない場合、薬を使った治療を行います。
(1)下痢型・便秘型・混合型などすべて
・消化管機能調節薬…腸の運動を整える薬
・プロバイオティクス…ビフィズス菌や乳酸菌などの菌の製剤
・高分子重合体…便の水分バランスを調整する薬
(2)下痢型
・5-HT3拮抗薬(セロトニン3受容体拮抗薬)…腸の運動異常を改善する
・止痢薬…下痢止め
(3)便秘型
・粘膜上皮機能変容薬…便を柔らかくする
また、全般的にお腹の痛みには抗コリン薬、便秘に対しては下剤の頓服使用なども用いられます。このようにIBSの治療薬は、型に合わせて処方され、更に便の形や腹痛の有無についても考慮され処方薬の選定がなされます。
3. 心理療法
IBSはストレスなども原因のひとつと考えられているため、上記①②で改善されない場合、抗不安薬などの心理的要因の改善が期待される薬の処方も考慮されます。
過敏性腸症候群(IBS)の予防方法
日本消化器病学会によると、IBSの明確な予防方法は確立されていないとのことですが、IBSになりやすい要因はある程度わかっているため、その中の危険因子を減らしていくことがIBSの発症確率を下げることにも繋がると考えられています。
例えば、ストレスやうつの傾向、喫煙などに対しては、IBSに限らず睡眠を十分にとり、適度な運動を取り入れた規則正しい生活を心がけて飲酒や喫煙に頼らない自分に合ったリラクゼーション法を取り入れることで、危険因子を少なくすることが可能です。また、IBSの症状が誘発されやすい食品として脂質、カフェイン、香辛料を多く含む食品やミルクなどの乳製品が挙げられており、これらの食品を摂り過ぎないことが症状の軽減や予防にも繋がると言われています。
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まとめ
過敏性腸症候群(IBS)は、命に関わる重大な病気ではないものの、実際に患っている当事者の方からすると、外出先で急に腹痛に見舞われ下痢になったり、その不安から日常的に繰り返してしまう状態になると、普段の生活においてもかなりの精神的・身体的負担となりQOLが著しく下がってしまいます。また別の病気が潜んでいる可能性もあるため、気になる症状が続いたら、まずはクリニックで検査を行いましょう。また、どんな病気にも言えることですが、まずは自身の生活習慣を見直し、特にこのIBSは原因としてストレスや不安などの精神的な部分が大きいと考えられているため、ストレスをできるだけ溜めない健康的な生活を送るよう心がけましょう。
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