【掲載日】2018/06/28   【最終更新日】2022/10/07

高血圧とは?原因や対策方法、合併症のリスクなどを解説

成田亜希子医師

監修者

内科医・公衆衛生医師

成田亜希子医師

血圧が上がるメカニズムや要因となる生活習慣について

血圧が上がるメカニズムや原因となる生活習慣について

高血圧は、自分では気づきにくく、知らないうちに進行してしまうこともある病気です。血圧が高い状態が続くと血管にダメージが加わるため動脈硬化を引き起こして、将来的に脳卒中や心臓病などを引き起こす可能性があります。血圧が上がりやすい人や、すでに高血圧と診断されている人は、できるだけ早い段階で、対策を行いましょう。
とはいえ、どのような対策が効果的なのかは、人によって異なります。まずは、高血圧になってしまう仕組みを理解し、自分に合った対処法を見つけてみましょう。

高血圧とは

高血圧とは

まず、高血圧とはどういうものなのか、その定義や基準値について理解するところから始めましょう。

高血圧の定義

中高年世代10人中3~4人は高血圧と言われ、高血圧の総患者数は993万7,000人( 平成29年)にのぼります。
私たちの身体は、運動や環境の変化によって、常に血圧が上下しており、一時的な血圧上昇は誰でも起こりえることです。しかし、安静な状態であっても、慢性的に血圧が高い状態が続いた場合には「高血圧」と診断されます。
血圧とは血管の内側にかかる圧力を測定したもので、高血圧の状態が続くと、血管に負担をかけ、動脈硬化のリスクが高まります。さらには、脳卒中や心臓病、腎臓病などのリスクが高くなるため、早い段階で血圧コントロールを行うことが大切です。

「高血圧」についてもっと詳しく

収縮期血圧と拡張期血圧

心臓が収縮して血液が送り出されているときの最も高い血圧を「収縮期血圧」(上の血圧)、心臓に血液が戻ってきているときの最も低い血圧を「拡張期血圧」(下の血圧)と呼びます。

高血圧の基準値

では、実際に「血圧が高い」とは、どの程度の数値を指すのでしょうか。
高血圧と診断する基準は日本高血圧学会によって定められたもので、病院で測定した収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上の場合、もしくは家庭で測定した収縮期血圧が135mmHg以上、拡張期血圧が85mmHg以上をいい、収縮期・拡張期どちらか一方でもこの値を超え、安静時でも慢性的に血圧が高い状態が続いていることを高血圧症と呼びます。
ただし、高血圧にも3つの段階があり、段階ごとにリスクの違いが指摘されています。正常範囲も含めて、以下の表で確認してみましょう。

 

正常

正常高値

Ⅰ度高血圧

Ⅱ度高血圧

Ⅲ度高血圧

最高血圧

130mmHg


130140mmHg

140160mmHg


160180mmHg


180mmHg

最低血圧

85mmHg


8590mmHg

90100mmHg


100110mmHg

110mmHg

Ⅰ度高血圧より、高血圧と診断されるものの、最初は生活習慣の見直しなどで改善を図ることになります。さらに悪化してⅡ度高血圧になると、薬の使用も含めた治療が必要です。
高血圧は、自覚症状が少なく、知らないうちに進行してしまいます。健康状態を確認するためにも、血圧チェックを定期的に行いましょう。

高血圧の診断基準と検査方法について

血圧測定値の注意点

血圧測定値の注意点

血圧を測定する際、自宅で自ら測ると正常でも、病院で医師に測定してもらうと高い血圧が測定される、という場合があります。
白衣の医療スタッフの前では緊張してしまい、普段より血圧が高く測定されることを『白衣高血圧』と呼びます。この場合には治療は原則として必要ありません。
このような方は、病院以外での血圧がどのような状況なのか知る必要がありますので、家庭での血圧測定が勧められます。

高血圧の症状

高血圧はほとんど自覚症状がないことが多く、目立った症状がないうちに発症し進行してくこともあります。症状として肩凝りや頭重感、めまいなどがありますが、実際に自覚する方は少ないです。
また、高血圧症の状態を放置していると、血管の壁に常に圧力がかかっている状態になるため血管が硬くなる動脈硬化が起こり、脳梗塞や脳出血、狭心症や心筋梗塞、腎不全などの重大な病気につながることもあります。
突然命に関わる病気を発症することもありますので、普段から血圧を測る習慣をつけることが大事です。

高血圧の原因(血圧が上がるメカニズム)

健康な人であっても、一時的に血圧が上がることはあるものの、ホメオタシス(生体恒常性)によって、できるだけ一定に保とうとする体内コントロールが行われています。高血圧はそのコントロールが上手くできず、血圧が常に高くなってしまう病気です。その理由は人によって異なるものの、大きく以下の3つに分けられます。

全身の血液量が増える

まず1つ目が、身体を循環する血液量の影響を受けているケースです。私たちの身体は、栄養や酸素を運ぶために全身の血管の中を血液が循環しています。通常、血液量は一定に保たれていますが、塩分の摂り過ぎや腎臓機能の悪化などによって血液中の水分が増えてしまうと、血管の内側にかかる圧が高くなってしまいます。

血液が流れるときの抵抗

2つ目は、末梢血管抵抗が高くなっているケースです。毛細血管に血液を流そうとしているのに、先の血管が狭くなっていたり、収縮して流れにくくなっていたりすると、先端まで血液を流そうとして圧を高めてしまいます。

血液の粘り気が強い

最後に考えられるのが、血液の粘性が高くなるケースです。いわゆるドロドロ血液になっていると、血管内でスムーズに流れることができず、血液を送り出すのにかかる圧が高くなります。

日常生活が原因となる高血圧

上述したような血圧上昇を招く仕組みはわかっているものの、実は高血圧を起こしてしまう根本的な原因は明確になっていません。しかし、影響していると考えられる要因として、以下のような点が挙げられています。

塩分の摂りすぎ

濃い味が好きな人は、塩分を摂りすぎる傾向にあり、血中のナトリウム量が増えることになります。ナトリウムが増えれば、血液中のバランスが崩れてしまうため、身体は調整しようと水分を多く取り込んでしまうのです。全体の血液量が増えることで、血管に負担をかけ、血圧を上げる結果につながります。

カリウム・カルシウム不足

多少の塩分をとったとしても、健康な状態であれば、塩分は排出されて安定した血圧を維持しています。血中に含まれる塩分のバランスを調整するために必要なのが、カリウムです。野菜や果物などに多く含まれるため、普段の食生活でそういった食材を食べる機会が少ない人は、高血圧になりやすい傾向があります。加えて、カルシウム不足も血管の伸縮性を低下させるため、血圧上昇を招きます。魚や乳製品などを取る機会が少ない人は、高血圧になるリスクが高くなるでしょう。

肥満

肥満の人は血管収縮を促すカテコールアミンと呼ばれる物質の分泌量が多い傾向にあります。血管が細くなることで、圧がかかり、高血圧を招きます。

喫煙とアルコール摂取

アルコールは一時的には血流をよくし、血圧を下げる効果もみられますが、飲みすぎると反対に血圧を上げます。また、飲みすぎの状態が続くと、心疾患や脳血管疾患のリスクが高くなります。
喫煙をすることでも一時的に血圧が上昇します。また、動脈硬化を促進し、心疾患や脳血管疾患の原因となることがわかっています。さらに、メタボリックシンドロームの重要な危険因子でもあります。高血圧の方は適切な飲酒量を理解し、禁煙をすることで改善につながります。

ストレスが多い生活

ストレスも、血圧上昇のきっかけとなります。精神的なストレスは、血圧コントロールをつかさどる自律神経に悪影響を与えてしまいます。また、睡眠不足や過労などの肉体的なストレスも、同様です。

運動不足

運動不足が続いてしまうと、血行不良になりがちです。血流が悪くなってしまうと、全身に血液を運ぶために、より高い圧がかかるため高血圧を引き起こします。また、高血圧の原因とされている肥満の原因にもあるため、肥満によってさらに血圧が高くなると言う悪循環に陥ることもあります。

老化

老化も、高血糖を起こす要因の1つです。年齢とともに、血管は硬く細くなります。すると、血流が悪くなり、血液を末端まで届かせるためには、より高い圧がかかってしまうのです。

病気が原因の高血圧

何らかの病気によって血圧が高くなる高血圧を「二次性高血圧」と呼び、特に若年層に多いとされています。「二次性高血圧」は高血圧全体の10%未満にすぎず、腎臓への動脈が狭くなって起こる腎血管性高血圧や、腫瘍によって血圧を上げるホルモンの過剰分泌によって起こるものなどがあり、これらは原因を改善したり切除したりすることで血圧は安定します。
関連する代表的な病気を2つご紹介しましょう。

腎血管性高血圧

若年層や、中高年の急激な血圧上昇が起こったときに考えられるのが「腎血管性高血圧」です。腎臓につながっている血管が狭くなってしまい、急激な高血圧を引き起こします。比較的、高い数値が出やすく、若年層では大動脈炎症候群といった自己免疫疾患などが根底にあるケースが多いとされています。治療法として血管の拡張手術が行われることも多く、手術が成功すれば、血圧も落ち着きます。

睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群)

2018年5月、京都大学が発表した「ながはまコホート」では、睡眠呼吸障害によって高血圧のリスクが高まることが報告されています。睡眠呼吸障害があると、睡眠の質が低下し、十分な疲労回復ができないため、精神的、肉体的なストレスを抱えることになります。同時に、本来は安定すべき夜間の血圧が上昇しやすくなるため、一日を通して血圧のコントロールがうまくいかなくなります。睡眠時の呼吸障害があると、高血圧だけでなく、心臓にも負担をかけてしまうため、心疾患のリスクも上昇するとされています。

高血圧がもたらす病気のリスク

どんな原因であっても、血圧が高い状態が続けば、身体には大きな負担をかけることになります。高血圧そのものは、自覚症状が少なく、別の病気が判明した時に、高血圧との関連に気付くケースも少なくありません。高血圧が引き起こす疾患には、以下のようなものがあります。

動脈硬化

高血圧の状態が続くと動脈硬化が引き起こされます。圧がかかり続けた血管は傷がつきやすく、そこには血液中のコレステロールなどがどんどん付着していきます。このようにコレステロールなどが付着した血管は、壁が厚くなり、内腔が細くなります。同時に、血管が本来持っていた柔軟性を失うことになり、血管が固くなってしまうのです。こうした状態を「動脈硬化」と呼びます。
動脈硬化があると、さらに高血圧が悪化するという悪循環が生まれてしまうのです。

脳卒中

高血圧から引きおこる動脈硬化は、発生する部位によって、更なる合併症を招きます。たとえば、脳の血管で動脈硬化が起これば、脳の血流が悪くなったり柔軟性が失われたりするため、「脳卒中」を起こす可能性があります。脳梗塞(のうこうそく)や脳出血、くも膜下出血などは、障害が残ったり、生命に関わったりする大変な病気です。

心筋梗塞などの心疾患

同様に、心臓の筋肉を栄養する冠動脈と呼ばれる血管に動脈硬化が起これば、心疾患のリスクを高めてしまいます。たとえば、心筋梗塞(しんきんこうそく)は、冠動脈に動脈硬化が起こり、狭くなった血管に血液が詰まることで、心臓の筋肉への血流が止まるという命にかかわる病気です。そのほか、狭心症を起こす可能性もあります。
また、血圧が高い状態が続くと心臓に過度な負担がかかり、心機能が低下する心不全を引き起こすことも少なくありません。

高血圧の治療・改善方法

生活習慣などが悪化要因とみられる高血圧症の場合は、血圧上昇につながる生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせて行います。
軽度の高血圧症の場合は生活習慣改善で血圧が正常になる場合もありますが、食事と運動だけで改善が見られない場合は降圧薬を服用します。降圧薬には、血管を広げる働きのあるカルシウム拮抗薬、血圧を上げるホルモンの働きを抑制するACE阻害薬やARB、循環する血液量を減らす利尿薬、交感神経が過剰に働くことを抑えるβ遮断薬などがあり、症状に応じて複数の薬を組み合わせます。
生活習慣の見直しと降圧薬をうまく組み合わせることで効率良く血圧を下げる効果が期待できますので、高血圧の悪化予防に役立つ生活習慣の改善方法として、以下のようなもの見直してみましょう。

カロリーと塩分が控えめな食事

暴飲暴食や塩分が多い食事は、肥満や血液量が増える原因となり、結果的に高血圧を招きます。日本人の食塩摂取量は一日平均約13gと言われ、人類にとっての必要最低限の食塩摂取量はそれよりはるかに少なくてよいのです。食塩制限1gあたり、個人差はありますが血圧は「0.5~1」下がると言われています。
高血圧の人は平均6~8gが良いと言われています。
例えば日本人の食事の材料には、一日約2gの食塩が含まれており、調理や食事中に使う食塩、しょうゆ、みそなどからの塩分を4~6gに抑える必要があります。
また、加工食品のなかにはナトリウムの量を表記し、食塩量は書いてないものがあります。
この場合はナトリウム量を2.5倍すれば、食塩の量に換算できます。

カリウムの摂取

体内の重要なミネラルの一種であるカリウムは、野菜、果物、豆、いも類に多く含まれていて、血圧を下げる働きがあります。また、調理の過程でゆでたり煮たりすると食材から成分が出てしまうため、調理法を工夫しましょう。このほか、腸から吸収されない食物繊維、カルシウム、マグネシウムを多く含む食物も血圧を下げるのに好ましいとされています。

適度な運動

血圧を安定させるためには、血行不良や肥満改善につながるような運動療法が効果的です。負荷の強いハードな運動よりも、ウォーキングやヨガ、軽い水泳などの有酸素運動を無理なく行うのがよいでしょう。

アルコールは適度に

一般的に健康の目安となる摂取量は、男性で日本酒1合、ビールなら中ビン1本、焼酎なら半合弱とされています(女性は半分〜3分の2程度)。

禁煙

タバコを吸うことで、交感神経の活動が活発になり、血管が収縮します。慢性的に続くと、動脈硬化が促進され、その結果高血圧に至ります。それを防ぐために、禁煙が高血圧の予防・改善になります。

ストレスを解消して睡眠の質を高める

血圧を安定させるためには、身体が安静にできる時間が必要であり、そのためには質の高い睡眠をとることが欠かせません。早寝早起きを心がけ、リラックスできる時間を作りながら、寝不足にならないように注意しましょう。いびきなどが顕著で、睡眠呼吸障害の可能性が高い場合には、専門医に相談してみましょう。

高血圧の治療について
高血圧の予防方法(食事・運動)

まとめ:高血圧の改善は生活習慣の見直しから

まとめ:高血圧の改善は生活習慣の見直しから

高血圧は、自覚症状がなく、いつの間にか進行してしまうこともある病気です。定期的な検診を受けるとともに、高血圧の可能性があるのであれば、早期対策が改善のカギを握ります。高血圧予防のためにも、日頃のストレス解消とともに、食事や運動の習慣を見直して、健康な身体を維持したいですね。

監修者

成田亜希子医師

内科医・公衆衛生医師

成田亜希子医師

東京都出身、弘前大学医学部卒。青森県弘前市在住の医師。
国立医療科学院や結核研究所で研修を積み、保健所勤務経験から感染症、医療行政に詳しい。

高血圧の基礎知識ページに戻る

高血圧の基礎知識一覧

人気の記事

治験ボランティア登録はこちら

フリーダイヤル0120-189-408

営業時間(月~金)10:00 - 18:00

治験ボランティア登録

その他の病気の基礎知識を見る

こちらもよく読まれています

治験情報一覧

治験ボランティア・モニター参加者募集

  • フリーダイヤル0120-189-408