【掲載日】2021/12/22   【最終更新日】2021/12/24

百日咳の症状は?大人もかかる?原因や予防法を解説

百日咳とは?大人もかかるの?

百日咳は、断続した咳と呼吸の際にかすれたような音が生じる急性気道感染症で、咳が治まるまで約100日間(3ヵ月程度)続くことから、百日咳と呼ばれています。
乳幼児をはじめとする子供に見られる代表的な病気の一つですが、2000年以降から成人への罹患率が増加傾向にあります。国立感染症研究所感染症情報センターの調べでは、百日咳の患者に占める20歳以上の割合が、2001年では2.8%だったのに対し、2010年では56%まで達しました。また、この調査は全国約3000カ所の小児科での報告に基づくデータのため、一般診療や内科などの診断数を含めると、さらに対象は増えるものと推測されています。
成人の場合は症状が重症化する例はほとんど無く、長引く咳程度の症状と軽視されますが、百日咳は感染力がとても強く、職場や学校での集団感染を引き起こす場合もあります。特に、成人から乳幼児や子供に感染する感染経路には気をつけなければなりません。生後6ヵ月未満の新生児や乳児が感染すると咳の症状が重症化し、肺炎や脳症といった合併症や、場合によっては死に至るケースもあります。

百日咳の症状は?

百日咳の特徴は?

百日咳の主な症状は、長期間に渡る継続的な咳症状です。
短い間隔で乾いた咳が続き、期間が経つと激しい咳に変わります。また、喘息発作では息を吐く時にヒューという呼吸音が聞こえますが、百日咳では、息を吸い込む際にヒューという呼吸音が聞こえます。風邪と違って熱や鼻水のような症状はあまりあらわれず、咳と呼吸時の音の症状が3ヶ月前後続くため、上記のような咳が1週間以上続く場合には、百日咳の可能性があります。
また、咳だけの症状でも1週間以上続いてしまうと体力も低下してしまい、睡眠不足や免疫力低下により他の病気にもかかりやすい状態になってしまいます。
なお、6ヶ月未満の乳幼児が感染した場合は上記のような咳症状はあまり見られず、突然無呼吸状態になったり、呼吸困難や痙攣、重篤な合併症を併発したりすることもあります。

百日咳の臨床経過

百日咳は子供と大人では症状の表れ方が異なります。子供の場合では感染から症状が収まるまでに段階的に症状が遷移していく特徴があります。

  • 潜伏期・・・百日咳菌に感染後、5~10日程度症状のない期間があります。
  • カタル期・・・、軽い咳や鼻水、くしゃみ、微熱などの風邪のような症状が1~2週間ほど見られます。
  • 痙咳期・・・咳の回数や頻度が増え、短く何度も咳込んだり、息を吸う際に笛の音のようなヒューという特徴的な音が出る期間が約2~6週間継続します。
  • 回復期・・・痙咳期よりも咳の頻度は少なくなり、その他の症状もだんだんと治まっていきます。また、学校保健法により百日咳と診断された児童は、症状が治まるまで登園および登校はできませんので、必ず医師に診てもらい、治癒証明書を発行してもらいましょう。

百日咳の合併症の危険はある?

百日咳は終生免疫(一度感染したら次はかからない)の感染症ではないため、風邪のように障害に渡り何度でも百日咳にかかる可能性があります。そのため、百日咳の抗体は母体から産まれた子供に十分に移行しないため、生後間もない赤ちゃんでも百日咳に罹ります。特に生後6ヶ月未満の乳幼児は、百日咳により咳症状だけでなく肺炎や脳症といた合併症を引き起こし、危篤状態や死に至る場合もあります。

百日咳の原因とは?

百日咳は、百日咳菌という細菌に感染することが原因で発症します。感染経路は百日咳に罹った人の咳やくしゃみによる飛沫感染や、触れた物から菌が付着する接触感染ですが、感染後にどのような影響を体内にもたらし症状を引き起こしているかのメカニズムについて、詳しいことはわかっていません。
百日咳菌の感染力は非常に強く、百日咳罹患後に免疫を獲得していても数年後には抗体が低下してしまい、再感染します。また、百日咳に罹った人と同じ空間にいる人への集団感染や、予防注射をまだ受けていない新生児・乳幼児にも感染するため、大人の感染が増えている現状では百日咳菌を他の人に移さないように気をつけましょう。

百日咳の検査・診断方法と治療

これまでの百日咳の診断は、症状が発症し始めの感染初期と、症状が落ち着いた回復期でそれぞれ抗体検査をするペア血清と呼ばれる方法や、抗FHA、抗PT検査などが採用されていましたが、2016年より精度の高い遺伝子検査(LAMP法)が検査方法の主流となりました。
LAMP法は鼻咽頭から粘膜や粘液を採取し、百日咳菌の培養検査により増幅させた病原体DNAの確認、血液中の抗体有無の測定、周囲の感染状況などから判断します。なお、発症後期や抗菌薬使用後に検査をした場合は検出が難しくなります。
また、咳発作がひどい場合には、肺炎の合併や気胸、肋骨骨折の有無などを評価するため胸部エックス線検査などを行う場合もあります。
LAMP法は診療所でも数日で結果が判明するため、今後の診断率向上に貢献することが期待されます。

百日咳の治療方法は、アジスロマイシンやエリスロマイシンといったマクロライド系の抗菌薬で治療します。特に初期症状が見られるカタル期に抗菌薬を使用することで、菌の排出が減り感染性を減らすなどの高い効力が見込まれます。投与後1〜2週間のうちに症状が収まりますが、全治するまでは約4週間程度治療を行う必要があります。
また、痙咳期になってからでも周囲への菌の拡散防止には有効とされていますが、咳の症状がひどい場合は、気管支拡張剤や鎮咳去痰薬を使用することもあります。

百日咳の予防方法は?

生後3ヵ月から任意接種可能な四種混合ワクチンには、百日咳の予防効果が含まれています。
ワクチン接種による免疫効果は5〜10年ほど持続するといわれ、十分な抗体を作るために生後3ヶ月〜7歳6ヶ月未満のうち4回受ける必要があります。
百日咳に罹る可能性は成人以降もあるため、感染を防ぐために風邪と同様の予防策をとります。
百日咳菌は主に咳やくしゃみなどによる飛沫感染によって周囲に拡大します。咳やくしゃみに百日咳菌がもっとも多く含まれる時期は、咳が出始めてから2~3週間程度(カタル期)と言われていますので、咳が出始めましたら直ちにマスクを装着して周囲への感染を防止しましょう。また、咳を手で抑えたりするなどで菌が手に付着し、触れたものを経由して周りに接触感染する場合もありますので、手洗いをきちんとすることも必要です。

まとめ

百日咳は成人の場合は咳が長く続くだけの症状と思われていますが、乳幼児や小児に感染すると肺炎や脳症といった合併症を招いたり、ときには死に至ったりする危険な病気です。
感染力も強く、生涯に渡って繰り返し感染する可能性のある病気ですが、効果的なワクチンを接種できる体制が日本では整えられており、感染後もマスク着用や手洗いうがいといった基本的な感染予防策で拡大を防ぐことが可能です。
大人から子供へ感染させないよう、予防を徹底しましょう。

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