【掲載日】2022/08/18
クラミジア感染症の症状とは?検査方法や検査可能時期について
クラミジア感染症とはどんな病気?
クラミジア感染症とは、HPV(ヒトパピローマウイルス)を除くと日本国内で最も多い性感染症(STD)で、クラミジア・トラコマチスという病原体が、性行為によって粘膜に感染します。プールや大衆浴場など、性行為以外の場で感染することはありません。クラミジア感染者と性交渉を行うと、50%以上の確率で感染するとされており、男性より女性の方が感染率が高いと言われています。
また、尿道(男性)や子宮頚管(女性)、咽頭(男女)にも感染し炎症を起こします。更にクラミジアに感染していると、HIV(エイズウイルス)への感染率が3~5倍に増加すると言われています。
クラミジア感染症の特徴
若年層の感染者が多く、5人に4人までが自覚症状がないと言われています。特に女性の8割は無症状のため気づかずに放置しやすい傾向にあり、感染したタイミングを確定できない相談も増えているようです。症状が出る場合は男女で感染する部位は異なりますが、比較的初期の場合、男性は尿道炎となり軽いかゆみや排尿時の痛み・不快感などが表れます。女性の場合は子宮入口にある子宮頸管に感染し、おりものの増加や不正出血、排尿痛が表れることがあります。
潜伏期間は1~3週間程度で、気づかずに放置してしまうと後々の不妊につながる原因にもなってしまいます。
クラミジア感染症の感染者数の推移
厚生労働省が発表している性器クラミジア感染症の報告数(調査:国立感染症研究所)をグラフで表示してみると、直近過去5年間の推移としては各年代大幅な増減はなく、横ばいが続いています。しかしながら、20代は男女ともに年々増加傾向にあることがわかります。そして、他の年代に比べると、この20代が突出して感染者数が多く、男性よりも女性の方が上回っています。若年層による性の知識不足や、不特定多数の性行為により拡大していることがわかります。また、40代以降になると女性より男性の比率が高いのが特徴的です。
性器クラミジア感染症は、5類感染症として定点からの報告が 義務付けられているため、公表されている数字は定点指定医療機関からの報告数となりますが、実際の人数でいうと日本国内では100万人を超えると言われています。
厚生労働省/性器クラミジア感染症報告数の年次推移
→感染症発生動向調査事業年報より
クラミジア感染症の症状とは?
女性の主な感染部位と症状
女性のクラミジア性器感染症は、はじめはあまり症状が無いため7~8割の方は自覚症状がなく気が付かないことが多いとされています。放置すると子宮頚部→腹腔内へと進展し子宮付属器炎や骨盤内炎症性疾患を発症することもあります。
症状としては、おりものの増加、不正出血、下腹部痛、性交痛、軽いかゆみなどが一般的ですが、症状が少なく無自覚のことも多いため、知らずにパートナーへ感染させてしまったり、パートナーが自身の体の異変に気付いたりするために、女性本人の感染が発覚するというケースも少なくありません。そのまま放置し、子宮頚管・子宮内膜・卵管などに炎症が出たり、不妊症が判明して初めて原因がクラミジアだったということに気づいたりする場合もあります。また、妊婦が感染すると早産・流産・子宮外妊娠の可能性や、産道感染で新生児にも影響が出ることがあります。男性に比べ、初期症状が軽度である一方、症状が進むと合併症や後遺症など深刻な問題に発展するケースが多いといえます。
女性のクラミジア感染症の主な感染部位
①子宮頸管炎
子宮の入り口である子宮頸管に感染し炎症を起こす。おりものの増加や下腹部痛、不正出血などの症状が出ますが多くは無症状もしくは症状があってもごくわずかのため自覚しにくいです。
②子宮付属器炎
感染が子宮頚管から卵管へと進むと、卵管炎を起こして卵管が閉塞することもあります。初感染であれば治療も可能ですが、慢性的に継続していると重度の卵管機能障害となり結果的に子宮外妊娠や卵管性不妊の原因となります。
③骨盤腹膜炎
何度も感染を繰り返すと炎症が卵管を通じて骨盤内まで進み、骨盤腹膜炎を起こします。強い下腹部痛や性交痛、発熱などの症状が出現し、救急外来を受診しなければならない場合もあります。ここまで炎症が波及すると、様々な合併症を引き起こし卵管にも重度の障害が併発しているため、外科的治療を行わなければならず妊娠も非常に困難となります。
④肝周囲炎
③の状態になると、更に肝臓周囲に炎症を起こすことがあります。ここまでくると下腹部痛とそれに伴う右季肋部痛が生じ、特に激しい上腹部痛を発症することも多いため、内科、外科など他科を受診されることもよくあります。そのため、他科を受診してしまいクラミジア感染に気づかれずに治療が遅れる事態も起こりえます。
⑤咽頭感染
男女共通で、クラミジアに感染した性器からオーラルセックスを介して感染するケースがほとんどです。無症状のケースが大半で、症状が現れる場合だと、難聴、鼻づまり、喉の痛み、喉元のリンパ節の腫れなどがあります。咽頭クラミジアと性器クラミジアは同時に感染している場合も多く見られます。
男性の主な感染部位と症状
男性は尿道に感染します。感染すると尿道のむず痒さや不快感、排尿痛、粘り気の少ない膿・少量の分泌物が出るなどの症状が出ます。更に放置すると精巣上体にクラミジアが侵入し、睾丸全体が膨れて痛みや発熱などが起こる場合もあり、男性不妊に繋がるケースもあります。初期では5割の人が症状に気づかないと言われています。
クラミジア感染症の感染経路と原因
クラミジアに感染している保菌者との性行為で感染します。粘膜や分泌物との接触で感染するため、オーラルセックスでも感染しますが、感染者と同じプールや温泉などに入ったとしても感染する心配はありません。
感染から発症までの潜伏期間は1~3週間と報告されていますが、無症状のまま気づかずに放置してしまうことが多いため、感染時期や感染元など感染経路を特定するのが困難なことも多いとされています。
クラミジア感染症の検査方法は?
男性は尿検査、女性は膣分泌液を採取して検査します。また咽頭クラミジアの検査はうがい液で検査を行います。遺伝子診断法の一種であるPCR法が現在の一般臨床においては普及しており、クラミジア特有の遺伝物質が検出されればクラミジアと診断されます。
市販でも検査キットを入手することができますが、自己採取では正確な検査を行えない可能性もあり、治療を視野に入れるのであれば医療機関にて検査し、クラミジアが発見されたらそのまま治療するのが確実と言えそうです。
また、クラミジアは淋病と同時感染のケースも多いため、多くの医療機関ではクラミジアと淋病を同時に検査することが多いようです。
検査法1:分離培養法
病原微生物を直接検出するため、最も確実な診断方法であるが、クラミジアは偏性細胞内寄生性微生物で、分離・培養には高度な技術、設備、時間が必要であるため、子宮頸管から採取した検体からの分離培養の検出感度は70~80%と低いため、実際の診療には向いていないと言われています。
検査法2:抗原検出法
現在の一般臨床においては、遺伝子診断法の1種であるDNA プローブ法(PCR法)が簡便にクラミジア抗原の検出ができるため、広く普及しています。
検査法3:抗体検出法
血液を採取して行い、クラミジアに対する抗体があるかどうかを検査します。
抗体とは体内に細菌が侵入すると、その細菌に反応して身体が作り出すタンパク質のことで、クラミジアに対する抗体があれば、クラミジアに感染していた可能性があるということになります。
抗体検査は採血のみのため、妊娠中に検査を行う場合は、膣分泌液を採取する抗原検査より安全面でメリットとなりますが、過去の感染でも抗体があると結果が陽性と出てしまうため、現在感染しているかどうかの判別や、感染部位(性器なのか咽頭なのか)が特定できない為、抗体検査を行う医療機関は少ないようです。
検査はいつから可能?
多くの専門クリニックでは抗原検査(尿、膣分泌物、うがい液、肛門分泌物)と抗体検査(血液)の2種類を実施しており、検査結果は2~3日後に出ることが多いようです。
なお、女性は生理の期間中は検査ができませんので、生理が終わってから受診して下さい。
クラミジア感染症の治療について
クラミジアは飲み薬(抗生物質)で治療することが一般的です。治療薬には何種類かあり、1日だけ服用するタイプと7日間服用するタイプがあります。完治したかどうかを調べるには投薬開始から2週間以上たってから、改めて遺伝子検出を行って治療の効果を確かめ、問題がなければ完了となります。
パートナーに感染させる可能性が大きいため、治療が終了するまでは性交を控え、パートナーも同時に検査・治療を受けることが重要です。
クラミジア感染症は、放置しても自然治癒することはほとんどありません。
クラミジア感染症の予防方法
ワクチンなどの予防接種はありません。また、感染して完治しても、免疫を獲得しないので再度感染します。
予防には性行為だけでなく性交類似行為も含む性的接触時にはコンドームを必ず使用することで感染リスクの軽減が可能です。また、母子感染を予防するために、妊婦の感染を早期に発見し治療を行うことが大切です。
クラミジア感染症と不妊症の関係は?
男性のクラミジア感染症による不妊症
男性は尿道よりクラミジアに感染し、そのまま治療をせずにいると、精巣で造られた精子を精管に送り出す役割をする精巣上体にまで感染が広がってしまう場合があります。そうすると、精管が塞がり、射精された精液の中に精子がいないという無精子症になってしまう可能性があります。
女性のクラミジア感染症による不妊症
女性がクラミジアに感染すると、無症状のケースが多く感染に気付かずに放置されてしまうことが多くあります。しかし、感染が子宮内膜や卵管へ広がると、着床障害や卵管障害、子宮外妊娠などの不妊原因となる可能性があります。
子宮内膜に炎症があると、受精卵がうまく着床できない着床障害がおこることがあります。また、卵管まで炎症が広がると、卵管が狭くなったり塞がることで卵子が通過できなくなり、不妊症のリスクを高めます。実際に不妊原因の約30%が卵管因子であるといわれており、そのうちの60%以上がクラミジア感染によるものであるという報告もあります。
また、妊娠中のクラミジア感染においては、流産や早産の原因となることや、母子感染により赤ちゃんが肺炎や結膜炎を起こすこともあります。
まとめ
クラミジア感染症は、国内でもHPVに次いで感染者数の多い性感染症となりますが、初期症状は自覚症状も少なく、症状があっても命に関わる重篤な症状はあまり見られません。ただし、それを放置しておくと、生殖機能に障害が出て将来の不妊に繋がったり、他の臓器に影響を与えたりすることもあり、自然治癒もほとんどないため軽視はできません。若年者でクラミジア感染症が増加してきている可能性を深刻に捉え、性感染症全体に共通する対策として、コンドームの適切な使用を含む若年者への性教育の推進が世の中全体として必要と考えられます。個人としてもきちんとした知識をもって感染症の予防に努め、パートナーがいる場合はお互いの安心のためにも健診を受けるということが大切です。
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