【掲載日】2021/03/19 【最終更新日】2022/10/07
こっそり忍び寄る怖~い病気、肝硬変とは?

	「沈黙の臓器」と言われる肝臓ですが、肝臓疾患は自覚症状がない方が多く気づかないうちに進行していることがあります。肝炎が長期化と共に、肝細胞の破壊と再生を繰り返すことにより段々と進行し肝臓に線維組織が蓄積します。これを肝臓の線維化といい、線維化が進行した状態が肝硬変です。本来は柔らかな肝臓の表面がゴツゴツと硬く小さくなります。
	肝臓細胞の数が減少と共に肝臓の機能(アルブミンを含めた胆汁の生成・分泌、アンモニアの解毒、栄養の分解や再合成等)が働かなくなると様々な合併症が起こりえます。
	日本では肝臓がんを除いて約47万人の肝疾患を抱える人がおり肝硬変になると肝臓がん、肝性脳症、食道静脈瘤等のリスクが高くなります。固くなった肝臓は元には戻りにくく、肝硬変そのものを治すことが難しい為、早期から原因を検査し定期的にチェックすることが重要です。
	
肝硬変の症状
	
	代償性と言われる初期段階の状態では全く症状がみられません。
	非代償性と言われる肝臓の機能が果たされていない状態まで進むと、下記の症状が出ることがあります。
	
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自覚
倦怠感、疲労感、食欲不振、微熱、下肢のこむらがえり、痒み
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浮腫・腹水
肝臓で血管を濾せず、下腿や腹腔内に血液の成分が溜まってむくみを起こします
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肝性脳症

アンモニアが肝臓から出されず脳や精神に影響が及ぶ合併症です。興奮状態や鬱状態から始まり、中期には羽ばたき振戦という筋肉の震えや意識障害・異常行動を起こすことがあります。重症化すると昏睡状態となります
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黄疸
赤血球中のビリルビンという黄色い色素が肝臓で処理できず過多となり、皮膚や白目部分が黄色くなります
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食道胃静脈瘤
肝臓で血管を濾せずに食道を通ることで圧がかかり、静脈瘤が形成されます。食道・胃静静脈瘤の破裂による死亡は肝不全、肝がんに続き、肝硬変の三大死亡原因と言われております
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特発性細菌性腹膜炎

腹水から菌血症となり、腹腔中で細菌が増殖する
 
肝硬変の原因
肝炎が慢性化の原因は様々ですが主に5つに分けられます。いきなり症状が出るわけではなく肝炎の進行から肝硬変になり得る為、無症状のまま進行に気が付かない場合もあります。
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B型肝炎
(HBV)B型肝炎ウイルスの感染により肝炎となり慢性化した場合
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C型肝炎
(HCV)C型肝炎ウイルスの感染により肝炎となり慢性化した場合
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アルコール、非アルコール性脂肪性肝炎
飲酒による脂肪肝、内臓肥満やストレス等による脂肪肝が原因で肝炎となり慢性化した場合
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自己免疫性肝炎
女性に多く自己免疫機能が低下することで肝細胞を攻撃し、肝炎が慢性化した場合
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代謝性肝炎
細胞に成分が付着することで肝臓にダメージを受け肝炎を引き起こし慢性化した場合 (ヘモクロマト−シス(遺伝性の鉄過剰症)やウイルソン病(遺伝性の銅代謝異常症)などが挙げられます。
 
肝硬変の検査
	
主に血液検査を行いますが断定するには複数の検査にて判断されます。
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問診
肝炎や肥満、糖尿病、飲酒習慣などからリスクが無いか確認します。
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理化学的所見
肝炎ウイルスの抗原・抗体の検出する血清学的検査です。
主な検査項目
- AST(GOT)/ALT(GPT)
 - 肝細胞が破壊されていないか確認する指標。基準値はAST 7~38 IU/L、ALT 4~44 IU/Lです。
 - γ‐GTP
 - 男性:80 IU/L以下 女性:30 IU/L以下
 - アルブミン(Alb)
 - 蛋白質が肝臓で生成されているか確認する指標。 血中濃度3.5 g/dL以下になる方は注意です。
 - ビリルビン(Bil)
 - 胆汁に排泄が出来ているか、肝臓に運ばれる前後の数値を確認する指標。0.3~1.2mg/dLが基準値です。
 
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凝固検査
プロトロンビンの減少はアルブミンの異常よりも早期段階にみられる為、血液が固まる時間を測定します
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腹部超音波検査/ CT/MRI
肝臓の形に萎縮や変形が見られないか、腹水が無いか確認します
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内視鏡検査
食道胃静脈瘤が無いか確認します
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フィブロスキャン
肝臓の硬さを傷つけずに測定します
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肝生検
肝臓組織を採取し金属含有量から代謝性肝炎の影響が無いか、繊維化していないかを確認します
 
肝硬変の治療法
	

	肝硬変を元に戻すことは非常に難しい為、現状の繊維化を抑制する治療が必要です。
	一般的には肝炎の原因となった薬物治療が主体となります。
	また長期的に向きあう疾患の為、食生活や体調の管理も肝硬変の進行を防ぐ重要な手段となります。
	
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薬物治療
ウイルス性肝炎薬やステロイド薬、利尿薬等
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支持療法
ビタミンなどの栄養療法や運動療法
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食事療法
アルコールの量を減らす、ビタミンやタンパク質を含めバランスの良い食事をとる
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運動療法
適度な運動を心がけ、筋肉をつけることで肥満にならない様にする。※進んだ肝硬変の状態の方は安静が必要です
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肝移植
肝臓の硬さを傷つけずに測定します
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肝生検
肝硬変となった肝臓を摘出し、健康な状態の肝臓を移植します。
 
参考元一覧
著者情報

JCVN編集部
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