治験バイトは高校生や未成年でも受けられる?理由や実施例を解説
治験とは?
治験とは、開発された新薬や医療機器が実際の治療に使われるために必要な厚生労働省からの認可を得るために、有効性や安全性を確認するために行われる臨床試験のことです。
健康な人や治療中の患者がボランティアとして臨床試験に協力するため、参加する被験者の健康面や安全性などが担保されなければなりません。
そのため、実施方法に関する厳格な基準や治験の妥当性、人権を守るための国際的な倫理規範則って治験が実施されるのかを第三者機関が厳しく審査する必要があります。
こうした過程を経て、新薬として初めて多くの人々に供給されることが可能となります。
治験バイトとは?
ボランティア(被験者)が治験に参加することで生じた負担は、多くの場合、治験実施医療機関からサポートを受けることでボランティアに還元されます。
ここでの負担とは、治験実施施設までの交通費や治験期間中の食事、治験に要する時間などを指し、これらを補助する目的で、「負担軽減費」と呼ばれる金銭を受け取ることができます。
一見、仕事の対価として給与が支払われるアルバイトと似ていますが、治験に対価を支払うことを義務付ける法律はなく、治験参加は自由意思によるものであるという明確な違いがあります。
そのため、治験参加はアルバイトではなく「有償ボランティア」として位置づけられており、「謝礼金を受け取れる治験に参加すること」を「治験バイト」と表現することがあります。
治験バイトにはどんな種類があるのか
治験バイトはあらかじめスケジュールが決められており、参加するボランティアはそのスケジュールに合わせて時間を確保する必要があります。
治験バイトのスケジュールはおもに2種類のタイプに分類され、病院や施設に数日から数週間滞在しながら検査を続ける入院タイプと、決められた期間やスケジュールに複数回病院や施設に来院して検査を受ける通院タイプがあり、なかには入通院が混合したタイプの治験バイトもあります。
また、どちらのタイプでも薬やサプリメント、健康食品などの試験品を実際に服用し、服用する前と後では身体にどのような変化が起こるのかを検査します。
高校生は治験バイトに参加できるのか
日本国内で実施される治験のほとんどは、成人(18歳以上)を対象としており、高校生が参加できる治験は基本的にありません。これは、未成年者に対する医学的・倫理的な配慮が必要であり、安全性の確保が最優先されるためです。
特に健常者を対象とした治験では、治験薬投与による身体へのリスクを伴う可能性があるため、未成年者の参加は厳しく制限されています。
一部例外として、保護者や親権者の同意を得ることで参加できる未成年対象の治験も存在します。
高校生が治験バイトに参加できない理由
治験に参加するためには、治験の内容について十分な説明を受けた上で、本人の意思により参加に同意する「インフォームド・コンセント」が必須です。しかし、日本では未成年(18歳未満)の場合、法的に「同意能力」が制限されており、未成年者が単独で「インフォームド・コンセント」を行うことはできません。
また、新薬の治験では成人を対象に安全性が確認されるのが一般的であり、発達段階にある未成年者は副作用のリスクが未知数であるため、未成年の参加は避けられています。
そのため、小児向けの医薬品開発に関する治験などでは、保護者や親権者が未成年者と同伴し、代理で同意することを前提に治験へ参加することが認められています。
未成年(乳幼児、10代)の方が参加できる治験の特徴
未成年の方が参加できる治験の多くは、小児及び10代の方を対象とした治療タイプのお薬や予防接種のワクチンなどの治験になります。
治験の内容として、治療タイプの治験は小児喘息、小児アトピー、花粉症、ニキビなどのご病気の診断を受けた事がある未成年の方や、ご病気の症状がある未成年の方などが対象となります。参加時の症状の度合いや服薬の有無によっても参加可否は異なりますので、参加の条件は治験ごとに確認する必要がございます。

安全に治験へご参加していただく為に、治験参加時には必ず「事前検診」がございます。
「事前検診」を受けていただき、お子様の健康状態をしっかり専門医に診てもらった上で参加できるかどうかの判断がなされます。

未成年未成年(乳幼児、10代)の方が治験参加する際の注意点
治験へ参加する場合は、参加前に必ずインフォームド・コンセント(治験参加の同意手続き)を行い、治験参加の同意手続きを行う必要がございますが、未成年の方が治験へ参加する場合、必ず保護者の方の同意・署名が必要となります。
基本的に未成年の治験は、保護者の方と一緒に参加となりますので、お子様だけで治験参加の同意手続きを行い参加できる治験はございません。

インフォームド・コンセントとは

治験参加前には必ず、医師などから治験について十分な説明を受け(インフォームド)、説明の内容をよく理解し納得したうえで、自分自身の意思で治験参加に同意(コンセント)するという手続きがございます。
治験参加は皆様の「自由意志」です。
病院や医師などから参加を強要されることは決してありません。
治験における代諾者とは
民法では、未成年者は法律行為における同意能力や判断能力が不十分であるため、原則的には単独で有効な法律行為をなすことができない、と規定しています。そのため、未成年者が法律行為を単独で行った場合は保護者(法定代理人)の同意が必要となりますが、未成年者が治験へ参加する場合も同様に、「代諾者」が必要となります。
治験は、治験の目的や医療行為によって身体に与える影響などについて被験者自身が理解し、同意(インフォームド・コンセント)をしなければ参加することができません。したがって、未成年の被験者が治験に参加するためには、被験者に代わって代諾者の同意を得る必要があります。
上記の保護者(法定代理人)とは関係性が異なり、GCP省令第2条第25項(ガイダンス14)では、「被験者とともに、又は被験者に代わって同意をすることが正当なものと認められる者であり、被験者の親権を行う者、配偶者、後見人その他これらに準じる者で、両者の生活の実質や精神的共同関係から見て、被験者の最善の利益を図りうる者」をすべて代諾者として認められ、具体的には以下の者を挙げています。
・親権者
→父母の婚姻中は父母ともに親権者、離婚したときは一方のみが親権者となる。
・配偶者
→婚姻関係にある被験者の夫または妻。
・後見人
→法定代理人でもあり、財産管理や身上監護の責任にある者。
・その他の者
→例)内縁関係にある被験者の夫または妻、婚姻によりできた親戚、配偶者の血族など
※親族であっても被験者の最善の利益を図りうる者とみなされなければ、代諾者にはなれません。
民法改正における注意点
長きにわたり、日本での成年年齢は20歳と民法で定められていました。しかし民法改正に伴い、2022年4月1日より成年年齢が20歳から18歳へと引き下げられました。
民法にて成年年齢とは、「一人で契約をすることができる年齢」、「父母の親権に服さなくなる年齢」とされているため、2022年4月1日以降に治験へ参加する場合は、被験者が満18歳以上であり、同意の能力が認められていれば代諾者からの同意が不要となります。
なお、既に治験参加中の被験者が2022年4月1日以降も継続して治験に参加し、かつ治験期間中に成年年齢となった場合は、同意能力があると判断した上で再度治験への継続参加意思を本人から得ることを推奨としています。
過去の未成年の方対象の実施治験例
治験例その1【アトピー試験】
治験名称 | 2~11歳 お子様対象【通院】アトピー試験☆通院4回 |
募集対象 | ・2~11歳の日本人男女 ・半年以上前にアトピー性皮膚炎と診断されている方 ・保護者及び被験者本人から同意できる方 ・ご両親のどちらかと一緒にご来院できる方 |
場所 | 東京都内 |
試験実施日程 | 通院4回 |
治験例その2【喘息試験】
治験名称 | 5~17歳 お子様対象【通院】喘息試験☆通院10回 |
募集対象 | ・5~17歳の日本人男女 ・6ヶ月以上前から喘息の診断がある方 ・保護者及び被験者本人から同意できる方 ・ご両親のどちらかと一緒にご来院できる方 |
場所 | 神奈川県内 |
試験実施日程 | 通院10回 |
治験例その3【花粉症試験】
治験名称 | 10~15歳 お子様対象【通院】花粉症試験☆通院6回 |
募集対象 | ・10~15歳の日本人男女 ・過去2年間に渡り、スギ花粉症の方 ・保護者及び被験者本人から同意できる方 ・ご両親のどちらかと一緒にご来院できる方 |
場所 | 東京都内 |
試験実施日程 | 通院6回 |
治験例その4【ワクチン試験】
治験名称 | 7~9歳 小児インフルエンザワクチン【通院】試験☆通院5回 |
募集対象 | ・7~9歳の日本人男女 ・インフルエンザワクチン接種を受けたことがない方 ・保護者及び被験者本人から同意できる方 ・ご両親のどちらかと一緒にご来院できる方 |
場所 | 東京都内 |
試験実施日程 | 通院5回 |
成人後に参加できる治験バイト
新薬や医療の開発は日々進められており、一日でも早く治療を必要とする人々に新しい医療を届けるため、治験は継続的に実施されています。
成人に至った者は、自己の行為の責任を負う能力を持ち、合理的な判断を下せる能力を備えていると認められているので、治験において最も重視される「本人の自由意志による参加」の決定を判断できるものとされています。
治験には健常者を対象とした第Ⅰ相試験や、特定の疾患を持つ人向けの試験など様々な種類があるので、参加できそうな治験がありましたらボランティア活動の一環として、今しかない学生生活のうちに参加を経験されてみてはいかがでしょうか?
まとめ
日本国内で実施されている治験の多くが18歳以上の成人を対象としており、未成年は法的・倫理的な理由から参加が制限されているため、高校生が治験に参加することは難しいのが現状です。
しかし、成人後は一定の理解力と判断力を持ち、自己判断能力が十分であるとみなされるので、条件を満たせば参加できる治験の選択肢が広がります。
治験に興味がある未成年の方は、治験に参加するために必要な知識や情報を事前にたくさん蓄え、参加できるタイミングになりましたら、十分に内容を理解した上で慎重に検討し、自身の意思で参加を判断しましょう。